表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想影法師  作者: 望月笑子
10/51

影9

このメールを送信すると、執筆中小説にこの内容が追加されます。

…人よりおいしいものを食べたからって、それがなんだって言うんだ。人より1、2年長生きしたからってそれがなんだって言うんだ。…ワタシは極貧生活に憧れるのだ。…人から惜しまれて死ねば、それだけ人を苦しめてしまうのだ。だから、ワタシは人から憎まれて死にたいのだ…

これが、瞳に力を失った幻一郎の口癖だった。見るからに幻一郎は、生きる気力を無くしていた。


幻一郎の祖先は、平家の落人おちゅうどだった。

幻一郎はその因縁を引き摺っていた。律子が持ってきた携帯電話のワンセグで、大河ドラマを見ながら、源氏一族を怨む言葉も度々口にした。

律子の祖先は、あの鬼退治をした渡辺綱だ、と生前祖母から聞かされていた。なぜその祖先が、北の『みちのく』の地に住んでいるのかは分からない。

渡辺綱とは、平安時代中期の武将であり、源頼光に仕え、四天王の筆頭として活躍した。大江山での酒呑童子退治や、京都の一条戻り橋での鬼退治は有名で、それはそれは屈強で剛勇だったという。祖母の本家は安庭あにわにあり、200年近く経った屋敷に住んでいた。6本の立派な太い柱には、菊の御紋が付いていたのだという。屋敷のいたる所は、劣化や損傷が激しく、雨漏りもひどかったと聞く。今はその家も取り壊され、残されていた刀や掛け軸は、戊辰戦争の際に、南部潘に没収されてしまった。だからそのことを、律子は祖母の話でしか知らない。屋号があり、「ちょころど」と呼ばれていたという。ちょころどの「ど」とは、殿様の「殿」という意味であるらしい。当時、そういった呼び名は、その地域でも4、5件くらいしかなかったという。律子はこの話を、幻一郎に話す勇気がなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ