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神職の悩み

作者: 桂野耀里

#ヘキライ第三回企画提出

神楽は木に打ち付けられたそれを見つけて溜息を吐いた。

藁で人の形を模したものを釘で木に打ち付ける。

所謂、丑の刻参り。

大体は午前1時辺りから3時辺りに行われる相手を呪う儀式。

色んな事情がある事は分かるが、だからと言って相手を呪うのは如何なものかと考える。

それも神社の敷地内で。

神楽はそれを清めて木から取り外し、お焚き上げを行う。

終わるとまた溜息を吐いて気を緩める。

「朝から大変だね」

外国人の男が前触れも無く目の前に現れ、神楽は再び気を引き締める。

男は友人を修羅の世界に引き込もうと企む人ならざる者、本来なら不浄の者は入れない筈のこの場所にするりと入り込む鬼、吸血鬼である。

「そんなに警戒しないで。良い案があるけど、聞く?」

胡散臭い笑顔を見せる男を神楽は睨んだ。


午前3時。

普通の人ならすっかり寝入っている時間帯。

人影がふらりと境内に現れる。

白い着物に頭の両サイドに蝋燭を括り、手には人型と釘と木槌。

明らかに参拝者とは異なる。

吸い寄せられるように手近の木の前に立ち、人型を木に当て釘を真ん中に配する。

木槌を振りかぶって思いっきり釘に叩きつけようとして手を掴まれる。

その人物は驚いて振り返り、掴んできた人物に更に驚愕した。

暗闇にあっても紅く輝く瞳が侵入者を捉える。

掴まれた手は真冬でもないのに異様に冷たい。

何より、ただならぬ雰囲気を纏う男に釘を打つ気が削がれた。

弧を描いている口が開き、普通より長い犬歯が覗く。


数週間後、神楽は溜息を吐いていた。

参拝者客が少なくなり、収入が減っているのだ。

それもこれも、

「清浄な空気が戻ってよかったね」

元凶の男が腕を伸ばして深呼吸している。

神楽は無言で呪符を取り出し男に貼り付けようとする。

それをするりと躱し、手をひらひらと振って姿を消した。

あれから神楽の神社は『出る』と話題になり、ネット社会ということもあって瞬く間に拡散した。

今では丑の刻参りをする人はいなくなったが、怖いもの見たさにやってくる人が訪れるようになってしまった。

「お祓いしよ」

力なく呟いて支度にかかった。

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