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道を踏み外す少女

この小説はオリジナルであり、フィクションです。


✳注意

○残酷描写多めです

○文に不自然な言葉遣いがあります


大丈夫な方はどうぞ


●誤字がある場合報告があると助かります

私は、ただただ守りたかった。


愛する家族を


小さいこの私の手で。


その時の私はまだ幼かった。生まれて5年もたっていなかったか


今でも悲しくなってくる。


足元に転がる息をしていない"それ"に目もくれず

愛する家族へと駆け寄った。


大丈夫? なんて平然と言う。


無知というのは恐ろしい。


殺人なんて知らなかった。自分はそんなものと程遠い存在だったからだ。


私はママという単語を喋れる様になった頃から森の中に住んでいた。

木の香りがする家にとても安心していた。


毎日パパは動物を狩りに出掛けていた。大事にしている猟銃を持って。

狩りに連れていってくれた事もあった。


耳に響く銃声がとても痛くて心地良かった。

仕留めた動物の足を掴んでパパはこう言う「今日のご飯だよ」と


かっこよかった。

真似したかったけど危ないからってパパは銃を貸してくれなかった。

だから、木に的のようなものを掘って一生懸命石を投げた


日に日に真ん中にあたるようになっていった。

ママにもパパにも自慢した。


私もパパみたいな猟師になるって言ったらとっても喜んでくれた。

嬉しいって、なれるよって、言ってくれた


私達は幸せだった。


森を抜けたところにある栄えた街の普通な家族の何倍も幸せだって思っていた。


ただ、その普通な家族と違う点があったのだ。

それは知能。

私の知能というものだった。


私は森の中に住んでいる。つまりは幼い子を教育する場が無かったのだ。

しかし、全てに無知という訳でもなかった。


ママには裁縫や料理などを

パパには文字や狩りについてなどを

動物から身を守ることだってできる。森の中で生きるのには十分だった。


でも違った、一つ、犯罪というものを教えてもらわなかった。


そして、その日が来た。


その日私は花を摘みに行っていた。手から溢れる緑の花、私達の髪の色。

喜んでくれるかな?

なんて、軽い足取りで帰宅した。


家の前に着くと静かだった。

扉には大きな傷跡があった。

今思うと、オノだったかもしれない。


幼い私は熊が出たんだと思った。

助けなきゃ。その一心で扉を開いた。


その先には、鉄の匂いに飛び散る赤、そして転がる猟銃

パパが愛用していたものだ

その猟銃は誰かによって握られていた。誰か?いや、そんな人物は一人しかいない。


ーパパだ…。


知らず知らずのうちに声を出していた。足元には花が散らばる。


熊はこっちを向いた。その時少し見えた震えるママの姿に私は無我夢中でパパの手から猟銃を取ろうとした。


だけどパパは離さない。死後硬直だ。


「っ…なんで!?なんでパパ離してくれないの!!?」


私に分かるはずもなかった。

だんだん熊は私に近付いてくる。


私は何度も向きを変えて引っ張った。


ーガッ…


やった…!手から離れた!!


私は熊を正面から撃った。

それと同時に小さな右手が飛び散った。

銃を撃つ衝撃に耐えれなかったのだ。


痛いっ!


「ああ"ぁ!!!」


子供とは思えない野太い声が出る。


痛いっ痛い痛い痛い。


右手を押さえて床に転がっていると


ドスッ…と振動がきた。


私は目を見開いた。そして理解する。熊が死んだんだ。


やった!倒したんだって痛みを忘れるほど喜んだ。


ママを守れたんだっ!熊野郎ざまあみろっ!ははっ…


自然に口元が緩んだ。


私はママに駆け寄った。


大丈夫?って…心配される私が心配してるという事実に喜び悶えた。


ママは依然として震えたままだった。

「ぁっ…ぁあ…」


「ママ?ちゃんと喋ってくれないと分からないよ?」


ママは指を指した。熊だ。


…そうだ!


「そういえば今日はスープの匂いがしないし、お腹すいたでしょ」


私は熊に近寄ると


左手で足を掴むと笑顔で言った。


「ママ…今日のご飯だよ」


窓から光が差し込んだ。照らされるのは喉に穴のあいた男の顔に満面な笑みを浮かべる愛らしい子供だった。







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