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迷宮のナダ  作者: 乙黒
第五章 石の王

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第四十二話 新メンバーⅤ

「で、獲物は何を狙うんだ?」


 ブラミアはナダの言葉を当然だとし、特に反対もしなかった。

 新参者で、まだまだ若輩者でもある自分達への目は厳しい。相手が年上で熟練の冒険者なら尚更だ。


「まずは石頭だ――」


 そのモンスターの正式名称を、パキケファロサウルスと言う。

 最近『ソール』に出現した個体は少し大きめであり、目測で五メートル程と言われている。

 頭部が固いことから突進に最も気を付けないといけないモンスターだ。

 また動きも素早く、逃げられることも多いようで、討伐例は他のクランにおいてもあまり多くはなかった。


「確かパキケファロサウルスか――」


「ほう、初めて聞くモンスターでござるなあ――」


 ブラミアとアマレロはナダの提案を否定することはなく、乗り気だった。


「おいおい! 本気かよ! パキケファロサウルスはそんなに単純なモンスターじゃねえぞ!」


 盛り上がっている三人を前に、ガスパロが大きく否定した。

 第一部隊でこれまで主に狩っていたモンスターはラプトルである。人型ではなく、竜状のモンスターを主に狩っていた。それはいずれ深層に挑戦するにあたって、人型のモンスターがあまり出現しなくなるからだ。


 ラプトルは、深層に出現する多くの龍種の、小型とも言えるようなモンスターだった。

 動きも基本的で、体も小さく、あまり特徴が少ない。ラプトルに慣れてから他の龍種への挑戦をと考えて、アスやナザレと共に挑んだパキケファロサウルス戦で、ティラノサウルスに全てを壊されたのである。


 だから、未だにアーザとしてはパキケファロサウルスに勝っていない。それどころか、ラプトル以外の龍種にも、勝った経験はなかった。

 これまでは挑戦すらほとんどしていなかったのである。


「……アマレロはまだラプトルどころか、『ソール』にも慣れていないのは分かっているのか?」


 コルヴォも三人へ釘を刺すように言うが、その口元には薄っすらと笑みを浮かべている。

 ナダの提案も、それにブラミアやコルヴォが乗ることも、分かっていたかのようだった。


「アマレロ、やめとくか?」


「いやいや、ナダ殿。血沸き肉躍るでござるよ――」


「そうこなくっちゃ――」


 アマレロが反対しなかったことにより、リーダー不在のアーザ第一部隊は前回挑戦すら許されなかったパキケファロサウルスに挑むことになる。

 新たなる挑戦に迷宮探索への準備を喜々として進める中で、ガスパロは一人唇が青く震えていた。



 ◆◆◆



 新たなパーティーメンバーを加えたアーザ第一部隊は、隊列を変えてアマレロが先頭に立ちながら迷宮を進む。

 もちろん『ソール』特有の分厚い防具に身を包み、いつもの刀ではなく特性の木刀を用いるのだ。もちろん刃だけは金属が薄く張られており、ソールの為にわざわざ特注した武器だった。


 よくよくアマレロから話を聞けば、アーザ第一部隊に入る打診は数か月前からあったようだ。

 今回のタイミングになったのは、アマレロ専用の武器が出来上がったのと前のパーティーの脱退の時期がちょうど重なったからである。


 アマレロは新しい武器を確かめるように、抜いて何度か片手で振るう。振り心地を確かめるのだ。不満はないようで目の前の虚空を見つめながら嗤った。敵を切るには十分だと判断したようだ。


「アマレローー」


 そんなアマレロの後ろに控えたナダが、闇の中にいる火人を見つける。


「分かっているでござるよ――」


 アマレロは気負うことなく、ゆっくりと歩み始めた。既に刀は腰の鞘にしまっている。

 いつでも――居合切りを放てるように。

 マグマのような赤い筋が闇の中に浮き火人が現れた瞬間に、アマレロは一瞬で火人までかけて通り過ぎた。


 否、あまりにもアマレロの抜刀と納刀が早すぎて見えなかったのだ。

 火人の上半身と下半身がずれて、その場に上体が滑り落ちてから爆発した。事前に聞いていた情報から、アマレロはアビリティすらも使わずに倒せると踏んでいたのだ。


 さらにはブラミアやガスパロなどの助力も必要にしていなかった。


「あいつ、腕が上がってねえか?」


 そんなアマレロに対して、闘志を燃やしたような男がブラミアだ。負けてられない、と体に多くの羽を生やす。


「……どうしてこんな冒険者がごろごろ転がっているんだ?」


 一方で、焦りを抱えているのがガスパロだった。

 持っている銃をじっと握りしめた。


 それからの冒険はあまりにも足が速すぎるアマレロに合わせての冒険が始まる。火人を見つけた途端に、アマレロが駆け寄って居合切りによる一撃で、簡単に火人は倒されていく。

 火人の数が多い場合において、ブラミアの大剣が輝き、それでも足りない時はナダが剛剣による一撃が火人を狩り取る。


「オレの『魔弾バラ・マジカ』は……」


 ガスパロの『魔弾バラ・マジカ』による一撃の出番はなかった。その事実に、ガスパロは歯がゆい思いをしていた。


「どんどん行くぜ!」


 ブラミアは調子が乗ってきたのか、動きがよくなっていく。もちろん羽が増えていくごとに体が軽くなっているのもそうだが、それを抜きにしても、体の無駄が減って行った。


 そんなアーザ第一部隊は蛇人達と遭遇するエリアまで進む。


「さあ、次は蛇人でござるか――」


 蛇人を前にしてもアーザ第一部隊に、苦難は訪れない。

 アマレロは初めて会う蛇人を三体も前にしても、とんとんと地面で足を叩いたアマレロは真っすぐ蛇人へと突っ込んだ。


 だが、蛇人はどの個体も真正面に盾を構えている。それごと切れる剣ではないと悟ったアマレロの行動は、蛇人の正面で高く飛びあがった。頭を下に向けて、足を上に向ける。そして足の先に『自由への疾走コヘール・リベルタージ』を生み出して強く蹴る。鋭角に方向を変えて、蛇人の背後に降り立つ。

 そのまま首を跳ね飛ばすように、煌めく剣の軌跡だけが輝いた。


 首の無くなった蛇人が膝から崩れ落ちるように倒れていく。だが、その両隣にも蛇人がいたため、ナダとブラミアがそれぞれ向かっていた。


 ナダは真正面から蛇人の攻撃を躱して側面に回り込んで斬りかかり、ブラミアは大盾を弾き飛ばしてから蛇人を仕留める。


「出番はない、か――」


 そんな中、手元の銃を蛇人に向けていたガスパロは持っていた銃を下へ下ろした。何度か牽制しようと思っただのだが、三人の動きが速いため撃ったら仲間に当たると思って何もできなかったのである。


 アーザ第一部隊はどんどん進む。

 三人で殆ど事足りていた。

 マルチーザだけが光のギフトによって、三人の威力を底上げするだけで簡単に蛇人達は倒していくのだ。


 蛇人との戦闘にもアマレロが慣れてきた時、アーザ第一部隊はお目当てのモンスターに巡り合った。

 以前に戦う予定だったパキケファロサウルスだ。

いつも感想ありがとうございます!

次回、やっとパキケファロサウルスとまともに戦います。

最近は筆が乗っていますので、

明日も是非読んでいただけたら嬉しいです。


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― 新着の感想 ―
石頭戦はどれだけ余裕をもって戦うのか、ガスパロはいつまでついてこれるのか。 コルヴォはアスやナザレが戻ってきた時にどう対応するんだろうか?
今までの冒険では深層まで行けなかったからなぁ。 ナダの冒険に付いて来れない奴は置いていかれるけど、石にかじりついてでも付いて行けたら冒険者として大きく成長出来る。 ガスパロやマルチーザにとっては大チャ…
人員がある程度固まり攻略状況も上位なクラン。 だからこそ環境に変化がなく、良く言えば安定 悪く言えば停滞でしたからね。 ある意味大手クランに入りある程度のポジションに収まって 内心それ以上を目指してな…
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