第三十九話 新メンバーⅢ
ブラミアが新しく加わったアーザ第一部隊の冒険は、快調に進んで行く。
ナダとブラミアが二人並んだツートップの隊列であり、その後ろにガスパロが控え、マルチーザが続き、コルヴォが殿で常に後ろを気にしていた。
火人を超えた冒険者達は中層へとたどり着き、蛇人達と戦えることになった。
「ブラミア、火人は『ソール』では実入りが少ないモンスターだから、蛇人からが本番だ。こいつを倒せなければ、ここではやっていけないと思った方がいい――」
順調に進んできたブラミアへ、気を引き締めるようにコルヴォが忠告する。
「オレが負けるとでも? そんな甘い冒険はこれまでしていないぜ!」
ブラミアはそんなコルヴォのプレッシャーに押しつぶされるようなことはなく、自信満々に嗤っている。どうやら蛇人程度に怖気づいてしまうブラミアではないようだ。
そんなブラミア達の前へ、やはり蛇人達が二体も同時に現れた。どちらも大鉈と盾を持っており、素直に戦えば苦戦するような相手だろう。
だが、ブラミアは冒険者だった。それも熟練の冒険者だ。
だからブラミアは、ナダへと視線をやる。
「花は持たせてやるよ――」
ナダはブラミアを立てるように言った。
「それなら、とどめは任せた――」
「分かった――」
「じゃあ、行くぜ!」
ナダから望む返事が聞けたブラミアは、果敢にも蛇人に挑んでいく。
と言っても、ブラミアの攻撃は非常にシンプルなものだった。
一体の蛇人に目がけて、身の丈に合わない大剣を振り上げた。『重力からの開放』によって、光る羽がついた大剣は頭上で光り輝く。
大声をあげているブラミアに当然ながら気づいている蛇人は、頭上へと盾を構える。
その仕草を見たブラミアは嗤った。
頭上に掲げた大剣から、多くの羽が飛び散って霧散するように消えていく。大剣が重さを増して、さらにブラミアの力も加えた一撃が、蛇人の盾を簡単に弾いた。
「いい一撃だ――」
ナダは盾が無くなった蛇人の首を簡単に跳ね飛ばした。
「まだまだ行くぜ!」
次に迫り来る蛇人へ向けて、ブラミアは羽毛がついた大剣で真正面から盾へと当てた。すると耐えるように体を固めていた蛇人の盾が、浮いた。光る羽がつき、盾が軽くなったことにより、重さによってブラミアの攻撃を受けきれなくなったのだ。
「なるほど。そんな使い方があるのか――」
無防備になった蛇人の首を、やはりナダは一撃で刈り取った。
「やるじゃねえか――」
「ナダこそ、腕は落ちていないみたいだな!」
他の誰の力も借りず、たったの二人でナダとブラミアは二体の蛇人を楽に倒した。絶命したモンスターを確認した二人は互いの戦果を褒め合うように、お互いの拳をぶつけ合う。
それからすぐにカルヴァオンをはぎ取っていく。
「……そんなに簡単ではない筈なんだがな――」
出番のなかったガスパロはぼそっと呟いた。
今回の二人は、蛇人を簡単に倒した。
ナダはもう何回も『ソール』に潜っているが、ブラミアはまだ一回目だ。本来ならどのような工夫をして、人よりも力も耐久力もあるはずの蛇人へ、ただの冒険者はアビリティやギフトだけでどう戦うか、それが試されるのが蛇人なのである。
他の迷宮で人形のモンスターに慣れていたとしても、蛇人は“鱗”が固い。並みのアビリティなら弾き飛ばす。また力もあって、強固な盾が邪魔だ。
本来なら、苦戦するはずのモンスターなのだ。
ガスパロも思い出す。
自身の『魔弾』が全く通じなかった現実を。威力を引き絞らなければ、蛇人の鱗に弾かれた過去を。
それから必死に努力して、この場に立っているのだ。
才能のない冒険者のよくある姿だった。
「どんどん行くぞ!」
ブラミアの声と共に、アーザ第一部隊はより奥へと潜って行く。
蛇人のエリアを抜けると次に現れるのはラプトルだ。
「攻撃の手助けは任せてください!」
そこに着くと、マルチーザの仕事が増える。より強固になったモンスターの“龍麟”を断ち切るために、光のギフトの武器への付与を行う。
ナダ達の武器が淡く輝いた。
「先制攻撃と誘導は任せろ!」
ガスパロはナダとブラミアの後ろから光のギフトによって『魔弾』によって、ラプトルの視線と聴覚を奪う。『魔弾』を無駄撃ちのように壁へと何発も打ち込む。弾丸は壁に当たると弾けて、光と音が辺りに広がったのだ。
ラプトルはそれだけで、小さな頭が弾丸へと向いてしまう。
ブラミアとナダはその間に影のように迫った。
ブラミアの羽がついている大剣で撫で斬り。大きな横振りだ。ラプトルの胴体に光る羽が付くと体が宙に浮いた。
ぐぎゃぎゃぎゃぎゃ!
ラプトルは驚きながら叫ぶが、体は一回転した。無重力状態となった身体は踏ん張りが効かず、ナダの前へ体が露わになった。
「その攻撃、消耗が少なそうで動きを封じれるみたいだな――」
頭の上半分をナダは簡単に斬り裂いた。
「思ったよりブラミアが成長しているのは予想外だったな」
コルヴォはブラミアの強さに驚いていた。
学園を卒業してからのブラミアの動向は話でしか知らず、強さに関しても人から伝わるのは曖昧なものだ。過去に一緒に冒険した機会と言えば、ブラミアの当時所属するパーティーへの同行が一回と龍の体内での即席パーティーが一回の、計二回だけだ。
その時のブラミアは自身の重装備の軽減にしかアビリティをほぼ使っておらず、それだけでも十分な強さだった。
だが、アビリティの使い方に“変化”が生まれた事で、また一段とブラミアは強くなっている。
「まだまだいけるだろう?」
「当然だな――」
ブラミアの声に続くように、ナダは頷いた。
それからアーザ第一部隊はラプトルを何体も倒していく。ガスパロが思考を奪い、ブラミアがラプトルを浮かせ、ナダがとどめをさす。少数のラプトルならば、この戦法は非常に有効的にラプトルに突き刺さった。さらに個々人の消耗も少なかったため、アスやナザレがいた時と同じほどのカルヴァオンを得られることとなる。
いつも感想ありがとうございます!
どれも嬉しく読んでいます!
※第二巻発売中です。




