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迷宮のナダ  作者: 乙黒
第四章 神に最も近い石
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第八十四話 底Ⅺ

バレンタインデーなので頑張って更新しました!

 振り下ろされたダーゴンの槍は早かった。水を蹴っての移動では間に合わないと悟ったナダは、その槍へ抵抗するように大剣と大槍を同じ方向に振るう。

 激突。

 ナダの身体へは刃こそ届いていない。腕の力は抵抗できた。

 だが、後ろへ飛ばされている勢いも相まってか、ナダはより一層勢いがつけられるように飛ばされた。ナダはもう体が支えられないほど回転しながら飛ばされる。勢いを殺そうとシィナが作った何枚もの水の壁を破っていく。そして、大きな海草をいくつも体に絡まりながらけれども勢いは死なず、海藻を引きちぎりながら地面の砂へと激突した。

 爆発したかのように砂ぼこりが水中に舞う。

 ナダは地面に頭から腰まで刺さっていた。体が軋むように痛い。胸から打ったせいか肋骨が折れたような気がするが、ナダは気にもせず両手を使って砂から脱出する。

 地面から片膝をつきながら呼吸を整える。

 頭上にいるダーゴンはこちらを見下ろすように佇んでいるが、黄金の槍には変わらず水の槍が纏わっており、その形は青龍偃月刀となっている。


 ダーゴンはナダに休む暇を与えてくれなかった。

 黄金の水槍を横に構えて、ナダを真っ二つにするかのように振り下ろした。ナダは大剣と大槍を黄金の水槍が来る左側に固めるように地面へと突き刺す。刃先はナダの足元だ。

 

 だが、ダーゴンの槍はナダの抵抗空しく遠くへ飛ばした。武器を嚙ませているので体は斬れていないものの、衝撃はなくならない。全身に鉄の塊がぶつかる。激痛がはいるが、なんとか頭には打たないように気を付けていた。


 ナダは勢いそのままに今度は岩壁へぶつかった。肺から息が全て出る。そのまま砂の地面に落ちるが、不屈の精神で立ち上がった。


 ダーゴンはさらにこちらに近づいてくる。

 ナダもダーゴンに向けて駆け出した。水の地面を蹴り続ける。リーチが長いダーゴンの黄金の水槍が先に振るわれる。ナダはもう一歩踏み込んで威力を潰しながら左手で外に払うかのように大剣を振るった。当然のように力負けするが、一瞬だけ時間が稼げた。間に下へ。大剣を起点に黄金の水槍を潜り抜けるように下からダーゴンへと迫る。

 ナダも大槍を振るった。今度は元に戻った黄金の槍がナダを迎え撃つ。二つの槍がぶつかる。両者はその勢いを利用して次の攻撃へ。ナダの大剣とダーゴンの黄金の槍がぶつかる。

 ナダの回転が上がる。大槍を振るい、大剣を振り落とす。ナダの手数が多いのか、ダーゴンは防戦一方になっていた。それを見越したダーゴンは武器を数回重ねた後はもう一度距離を取るように大きく尾びれを動かした。


 その動きはもう何度も見ているとばかりに、ナダが大槍をぶつけてダーゴンの勢いを殺す。その瞬間に黄金の槍が飛んでくるが、腹を掠りながらもなんとか逃れる。ナダも大剣を跳ね上げるように振る。ダーゴンは防御が間に合わず腰を斬りつけた。


 お互いの動きの読み合いが始まる。

 攻撃か、逃げか。

 ナダはダーゴンがどちらを選ぶか分からなかったが攻めるしか頭になかった。続けざまに大槍を振るい続ける。

 ダーゴンは一瞬逃げようとしたが、ナダが攻撃するのを見て攻めに転じた。左手に水で青龍偃月刀を作り、水の大槍でナダの大槍とぶつけ合う。

 ここだ、と思った。

 ナダは体の“熱”をこれまでと同じように、だが、より強くなるように回す。

 鉄の大槍と水の大槍、黄金の槍と黒の大剣、両者を何度も足を止めてぶつけあう。だが、口から絶叫し、先ほどよりも“熱”が回ったナダの武器は、徐々に、徐々に、ダーゴンの武器をはじき出す。力関係が逆転したのだ。


 筋力だけの問題ではない。黄金の槍はまだしも、ダーゴンは青龍偃月刀の重心、振り方を知らない。それはナダだけが知っている各々の武器の最適な振り方。本来なら両手で振るうためのそれを片手で再現する。

 ダーゴンは強い。だからこそ、水の槍に慣れていない。

 ――今しかなかった。


 左足で踏み込んで大剣で袈裟斬り。右足を踏み込んで外からの大槍。両足を目柄へと動かして入れ替えながらナダは左右の武器で猛追していく。大剣で切り下げ。大槍で突き。大剣で外からの薙ぎ払い。大槍で突き。大槍で突き。ダーゴンはその全てを防ごうとする。いや、最後の突きはダーゴンも最小限の動きで躱しながらこちらに向かって黄金の槍を突き刺そうとした。ナダはそれを上体を横に曲げて躱した。

 初めてまともにダーゴンの懐に入る。

 左手の陸黒龍之顎、右手の青龍偃月刀、両方を上へと持ち上げた。

 ダーゴンは片手で持っている水の青龍偃月刀を頭上にかかげる。ナダの攻撃を防ぐように。


 ――知らねえよ


 そんな風に嗤ってナダは喉から絶叫しながら“二つの武器”を振り下ろした。

 ダーゴンの片手の槍ではその攻撃を支えきれず、両肩をそれぞれの武器で深く斬り裂いた。

 大量の血が水中に広がる。ダーゴンは槍を握ったまま、動かせなくなった。最後の抵抗としてナダへと水の衝撃波を口から出す。ナダの体にかなりのダメージが入り、鼻が折れ曲がるが関係ないとばかりに青龍偃月刀で胸を突き刺して相手の動きを止めて、陸黒龍之顎でダーゴンの首を跳ね飛ばした。

感想やいいねなどいつもありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
やった!!倒した!!シィナも一緒に!! めっちゃ嬉しいんですけど、すみません。 陸黒龍之顎と青龍偃月刀ってどっちも槍じゃなかった?ですよね? 陸黒龍之顎って最初の頃に大剣とかグレートソードとか書かれて…
良くやった!ナダ!!熱くて渋い展開でした。 作者さんもお疲れさまです。
遂にやってくれましたね!!!
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