wonder(2)
ブホッ! ゲホ! ゲホゲホ! 噎せ返るほどの炭酸のガスが徐々に薄れ、視界が鮮明になってくると、缶の口から、確かに缶の飲み口から男が出現している。ハハハ、まだ甲類の悪酔いがヌけて無いようだ……、頭も打ったし、……しゃーねぇ、寝よ寝よ! もう、眠るしか無いね。こんな時は。
と、蛍光灯を消そうと、倦怠感剝き出しで億劫に立ち上がる。と、金髪のオッサンがフワフワと漂うように蛍光灯の逆光を受けながら傲岸不遜な態度で俺を見下ろしていた。そして、萌えフィギュアと18禁ガチャのフィギュア、アニメのポスターと、あとエロDVDがひしめき合う俺の部屋をぐるり見渡し、あからさまな、不快感の主たる憐憫の表情を浮かべつつ、言葉を発した。
「ったくよぉ、お前、どんだけ間ぁワルいんだよ? 夏に買ったコーラ半年放置って、有り得ねーだるぉお! おぁ? ……しかも、こんな夜中に呼び出しやがって……」
なんかいきなりすっげぇ態度悪いんですけど? つーか、このオッサン、どっかで見た事あるような、無いような……。あんまり見ると因縁つけられそうなので、マジマジとは見れない。顔面は畳とほぼ平行のままに上目遣いでオッサンの動向を探る。
……夢だなこりゃ。悪夢だ。俺の妖精さんがこんなダボシャツに腹巻きでガラの悪いキンパツオヤジなわけないもの! 俺は無理矢理自分に言い聞かせる。
再びコタツに潜り込み、仕事に備え睡眠を執ろうとする俺の胸ぐらを掴み引き戻す金髪のオッサンはこう告げた。
「あぁ、もう、メンドクセーんで、要点だけ伝えっから。よぉおっく聞けよ、質問は許さんからな! 俺は、もう分かってるとは思うが、コーラの魔神。運よく俺入りのコーラを引き当てたお前は、俺がカウントダウンを始めてから5分以内に3つだけ願い事を言っても良いが、願い事を増やせだの、不老不死だの、地球を破壊だの謂うような身の程を知らぬ願い事は却下。した時点で俺は消えてしまうんで、まぁ気をつけろや。要は、人間目線のレヴェルでの分相応な幸せを願えってこと、例えば、おめぇのその枯れ木みてぇなカラダを黒光りするマッチョなボディにするとか、そのしみったれた辛気くせぇツラを草刈正雄みてぇに精悍なマンの面構えにするとか……」
傲岸不遜で、唯我独尊なオーラに気圧され、暫し唖然のままに聴いていたが、ヴィジュアルの事柄に言及した時点で俺は、オッサンの発言を遮った。
「容姿には不満は無いんで!」
そこんところを毅然と否定した俺を改めて一瞥した金髪のオッサンは暫し口を開けたまま黙っていたが、すぐさま我に返り、
「じゃぁ、今から5分以内だ。ハイッ!」
「えっ? そっちのタイミングで⁉」
「あたりめぇじゃねーか。何様だよおめぇ」
「だって……フツーは、魔神を呼んだ側がご主人様でしょ?」
オッサンはアゴをシャクリながら視線を上下に激しく動かし「あ? コラ! なんだコラ!」と、俺の鼻先で猛烈にメンチを切ってくる。スンゲー怖いんですけど。……圧が尋常じゃない。願い事などどーでもいいから帰って欲しい。ああ……夢なら早く醒めてくれ!




