wonder
コタツに潜り込み、痛みに耐えつつ睡魔に魂を委ねてからどれくらい経ったのだろう?
たまらなく喉が渇いて目が覚める。
消し忘れた蛍光灯がジリジリと俺を焦がす。
外はまだ漆黒の闇。コタツの中から、自室に在る俺専用の100Lの冷蔵庫を開ける。
中にはいつ入れたかさえよく覚えていない麦茶のボトル。それ以外は何も無い。
「クッソぉ……めんどくせぇな」とボソリ毒づく。と、野菜室に赤い缶の影が。
ああ、そういえば夏に買い溜めて置いたコーラが一本残っていたのだ。
まるで病人のように、緩慢な動作でコーラの缶を取り出す。のっそりと起き上がり、うまく力の入らない左手の第二指でプルタブを引き起こす。
どうでもいいことだが、俺には、自分で謂うのもナンだが、ヒト様にはちょいとばかり不可解であろう癖が幾つかあり、その中でもかなりヒかれる癖が、炭酸飲料のカンを開けた瞬間に、断熱膨張によって生じるケムリ、あれを『ヒュッ』と吸い込みたい。吸い込まずにはおられないっつー……カナリ奇異な癖がある。
吸ったからといって別段どうということはない。念のため。
しかし、アイスのカップの蓋のウラを舐めずにはいられない人間がいるように、あの、ケムリだけは、なにがどうあれ、吸いたいのだ。俺は。
したがって、そう、のどの渇きを癒すことよりもまずケムリを! と、予め口を近づけつつの、開封作業であったことを、一応前置きしておこう。
左手の第二指の懸命な働きに因ってプルタブは引き起こされ、お待ちかねの〝ケムリ〟を吸い込もうと待ち構える俺の口吻。そしてまたも事件発生!
何と言う奇天烈! 何と言う非常識! 何と言う形而上学的不条理!
えらいイキオイでケムリは、もくもくと部屋中に立ち込め、驚きのあまり俺は冷蔵庫のカドに後頭部を強打。目の前を星が飛ぶ。




