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皮肉屋侍女の生活  作者: りつなん
第1章 物語の始まり
7/17

 私の申し出に若干の戸惑いを示しつつも、あくまで噂なので確証などないのですけれども、と前置きをしてから、ラディは婚約者殿についての噂を話してくれた。

 

「将来、ルシアル様を支えて国政を担う中心の一人となられるであろうお方ですからね。皆さんのご期待も高くて、だから王都の若い女の子達の間では、今や王子様についての話題は尽きないんです。主に容貌についでなんですけれど……ルシアル様やゼクト様にも劣らぬ美丈夫でいらっしゃって、黒髪に夜明けの空のように綺麗な蒼い瞳だとお聞きしました。背丈はルシアル様と同じくらいだとか。早く拝見してみたくて、みんなリゼッタ様との婚儀の日を楽しみに待っているんですよ」


 流石、年頃の女の子にとって男性の話題で一番に気になる点は、やっぱり外見のようだ。つまりイケメンであるか、否か。今回の婚約者殿の場合、答えは是であったらしい。

 ラディの言う、ルシアル様というのはこの国の第一王子であらせられて、第一王位継承者である方だ。帝王学に天才的な才能をお持ちらしく、ルシアル様の次期王即位は確実だろうと言われている。

 そしてゼクト様とは第二王子であらせられる方だ。学に加えて性格も華やかなルシアル様に比べて、落ち着いていらっしゃるので若干空気感が薄いが、ルシアル様はゼクト様の冷静さをとても頼りにしている。

 兄弟の場合、次男の方が長男よりも身長が高くなるのは世の常で、ルシアル様よりもゼクト様の方が背が高い。お二人とも男性としては背の高い部類に入るので、つまり婚約者殿も大分背丈が高いということになるのだろう。


 私は顔の美醜にあまりこだわらない方なので――というよりは、仕える人のレベルが高すぎて、平均値がもうよく分からなくなってしまっただけなのだが――、容貌については正直どうだって良かったが、これも今は重要な情報だ。

 何せ、主も仕える私も相手方の名前と公とされている経歴とプラスして神の落とし子とかいう派手な形容詞以外、全く知らないのだから。

 それにしても、黒髪の王族とは凄く違和感がある。この国の王族の方々の頭髪の色は、少しの違いはあれど、金であるからだ。王族イコール金髪というイメージが植え付けられていても仕方がないと言えよう。


 話の続きを促すと、アイドルについて語るかのように半ば上気した顔で、ラディは再び口を開いた。


「あとあと、王子様は好きな色に対してかなりこだわりがあるらしくて、いつも身にまとっていらっしゃるんですって。ええと、何色だったかな……」


 肝心な所を忘れてしまっては意味もない気がするが、まあそれはいいだろう。どうせ噂話だ。好きな色を知った所で、有用性はあまりないように感じられる。

 もう少し踏み入った話を聞きたいが、そんな話が女の子の井戸端会議で出るわけもない。仕方がない、ここら辺で引き上げよう。王族の皆様が食卓を囲んでいる間に、私も食事を取らなければならない。

 結局思い出せなくて申し訳なさそうにするラディに大丈夫だと告げる。


「なるほどね。ありがとうラディ、参考になったわ。こちらから引き止めておいて悪いんだけれど、私そろそろ失礼しなきゃいけないの。また新しい情報が入ったら是非私にも教えてちょうだいね」


「あ、そうなんですか。お力になれたようなら幸いです。私が知ることが出来るのなんて噂話の枠を出ませんが、それでもよろしければ。……リゼッタ様が王子様と仲良くなれるといいですね」


「……そうね、それが一番だと思うわ。リゼッタ様にとっても、国にとってもね」


 そこで会話を打ち切り、別れの挨拶を交わして厨房を後にする。

 王子の風貌について、ね……。肖像画を交わしていない間柄としては、願ってもない重要な情報だ。結局は本人を直接拝見するまで真実は分からないが、少なくとも想像に色を付けることは出来る。リゼッタ様に見合うというと相当レベルの高い容貌でなければいけないが、美丈夫という婚約者殿の本当の所はどうだろうか。噂話は尾ひれが付くものなのでその噂もあまり信用しない方がいいだろう。


 まかないご飯を頂きに、城内で働く人用の食堂へ向かいながら、私は王女にどう伝えようか考えていた。




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