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「俺はあの人に感謝してる。この世の全てを捨てても守ろうとした、あの人の『想い』に。そう、君の命を奪う事さえも(いと)わない強い意志に……。そして結果的に、君はこうして生きているのだから……」

「強い意志……ね。自分は助かりたいっていう?」

 俺の言葉に一瞬目を見開いてから、ヒョイと片眉を上げる。

「……違う事ぐらい、俺が言わなくても解ってるんだろうな」

 短く息を吐いた上宮が、何か言おうと口を開きかけた。

 その時。

「キャーッ!」

 耳をつんざくような悲鳴が、辺りに響いた。

 バッと振り返ると、さっきまでは人っ子一人いなかった道路に、たくさんの人があふれている。割れたショーウィンドウと、ガードレールに突っ込んだままのトラックを見て、パニックになっていた。

「しまった! 結界が解けた! ……やっぱり、彼がいないとダメか」

 んー、と唸りながらポリポリと頭をかくと、上宮は俺の右腕を掴んで走り出した。

「おい、ちょっ…。あのままでいいのかよ?」

 つんのめりながらついて行く俺に、上宮はグイッと俺の腕を引っ張って、耳元に口を寄せた。

「きっともうすぐ、アスファルトが(くだ)けてるのにも気付くぞ。あの状況でなんて言うんだ? 鬼がやりましたとでも? 信用されるか!」

孝亮(ユーレイ)がやったって言や、いいんじゃねーか?」

 アハハッと笑う俺に、上宮も呆れた笑みを洩らしたが、それでも足は緩めてくれなかった。

 空を見上げると、あの夜のように月が俺達を照らしている。


 なあ、孝亮。いつか時間(とき)の歯車は廻り始め、俺達はまた、必ず出逢うんだ……。

 そして、再びみちは現れる。あの誓いを果たす為に。

『二人なら、どこでだってきっと楽しめる。バイク乗って、タバコ吸って……。そうして……。そうして……ずっと…』


   ずっと一緒に過ごすんだ……



残る苦しみを

あいつは知らない


(あか)い月に誓い合う


果たされはしない

最後の約束


星の瞬きほどの

価値もない


あいつのいない

この人生(せかい)など

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