その3
誰かと友だちになることは、そう難しいものじゃない。焔はそういった。けれど、旭には納得できない。少なくとも真之介は、仕事上のターゲットだ。純粋に友だちになりたいと願って近づくのではない。はなから嘘だ。嘘つきだ。それでも近づかなければ、仕事にならない。この矛盾がいやだ。
旭が今日、何度目かのため息をつく。このまま、斜め後ろから真之介を眺めているだけでは、ミッションは進まない。期限はたった一ヶ月しかない。
自然に暗記できてしまうほど眺め続けた事件の関係者、七人のリストが、また頭を過ぎる。
リストの最初の名は、二条夜子。真之介の妹だ。妹を失い、友人を失い、父母を失った。身近な者を亡くしたことのない旭には、それがどれほどの痛みなのか、実感できない。
なぜ、笑っていられるのだろう。時間が経てば、笑えるようになるのだろうか。級友と笑い合う真之介になるまでに、どれほどの努力を必要としたのだろう。
それだけで、旭の胸はぎゅっと圧迫されたように痛みを発する。けれど、真之介の痛みには遠く及ばないだろう。これはただの同情だ。想像の産物だ。こんなものでは、到底計れない。わからない。
だから知りたい。
なにを想い、なにを願い、なにに笑うのか。
真之介の内にある真実を知りたいと思った。
これは嘘じゃない。
『大丈夫だ』
焔の紫の瞳が笑む。
終礼を告げる号令がかかる。がたんがたんと椅子が鳴る。全員で一礼すると、騒がしい放課後がスタートした。
「あの」
周りの雑音に消え入りそうな旭の声に、帰り支度をしていた真之介が顔をあげた。




