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その1
やっぱり無理かも。
放課後を目の前に、ざわつく教室の中で、旭は自分の机に突っ伏した。
ずっと握りしめていた手のひらは、緊張でじっとりと汗ばんでいる。終礼のため、日直と担任が入ってきた。教室が一瞬で静かになる。旭は斜め前の背中を見入った。
二条真之介。
ターゲットだ。
となりの席のやつと、なにか言葉を交わした。笑っている。
七人の名前。
四つの死。
乗り越えたのか。
隠しているのか。
こんなのに近くにいるのに、わからない。
旭は、真之介のきりっとした横顔を眺めながら、昨夜から何度も練習した言葉を、ため息と一緒に飲み込んだ。