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1st Mission 美しき魂  作者: 時幸空
第九章 エピローグ
26/29

その1

「おはよう、おばあちゃん」

 旭が階下に降りていくと、日向が朝食の用意をしていた。すでに出勤の用意ができているようだ。今日はダークグレーのスーツを着ている。あいかわらず格好いい。

「遅いですよ、旭。早く食べなさい。あと二十分で出ますからね」

「はあい」

 用意されていた朝食に手を合わせてから箸をつける。いつもの朝だ。

 日向を迎えにきたイレブンの車に乗り、旭と日向が向かったのは、医療施設だった。東京から西へ車で一時間ほど行った山の中にある。ここも、イレブンの人知れない施設の一つだ。

 病院の入り口につくと、待っていたガードマンが、車のドアを開けてくれた。まるで、高級ホテルのようだ。慣れないことは恥ずかしい。おどおどしながら、近所の花屋さんで作ってもらった小さな花束を抱えて、車を降りた。

「おばあちゃん、運転手さん、送ってくれてありがとう」

「帰りは大丈夫?」

「うん。送迎バスと電車使うから」

「それでは気をつけて。今日は帰りが遅くなります。でも夕方には陽桜たちが戻ってくるから」

「あ、お父さんも戻ってくるんだ」

「夕食は、陽桜たちと食べなさい」

「はい」

「旭」

「なあに?」

 旭がにこりと笑う。曇りのない笑顔に、日向はいうべき言葉を飲み込んだ。

 すべては、旭が自分の目で見て、確かめなければならない。まだ旭のミッションは終わっていないのだ。

「いえ、なんでもないわ。いってらっしゃい」

「はい、おばあちゃんもいってらっしゃい」

 車が走り去るまで見送った。旭は、病院の入り口へと向かう。

 中へ入ると、一階は広いロビーになっていて、景色が見渡せる場所にはレストランがあった。病院というよりは、やはり高級ホテルな感じがする。あらかじめきいておいた階までエレベータであがると、やっと普通の病院っぽくみえた。ナースセンターで、看護士さんから病室を教えて貰った。

 淡いクリーム色の床を見ながら病室へと向かう。そのリズムに合わせるように、どくんどくんと旭の心臓が高鳴っていく。一番奥の部屋の前で立ち止まり、念のため札を見上げた。

 二条真之介。

 またどくんと鳴った。

 深呼吸をして、病室をノックする。

「はい」

 すぐに返事がきた。聞き覚えのある声だ。旭はスライド式の扉をそっとあけ、中に入った。

「うわあ」

 視界を奪われた。目の前に、赤や黄、橙に色づいた山が迫ってきた。引き込まれそうになるほどの迫力だ。

「きみ、誰?」

 真之介の一言が、旭を現実の世界に引き戻した。旭は、ベッドの上に起きあがっている真之介をみた。目の前にいるのは、確かに真之介なのに、真之介ではなかった。


(第九章「エピローグ」その2へ続く)

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