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その5
白い光だ。
真っ白な空間に、暖かく柔らかな光が満ちていた。その真ん中に、真之介は一人で立っていた。
「ここは、どこだ」
それまで何もなかった空間が、一瞬にして緑を湛えた水田に姿を変えた。田んぼの中の畦道を、白いワンピースを着た夜子が歩いていく。
その横に、いづながいた。白い小さないたちの姿で、時折、夜子を見上げながら、小さな手足をせわしなく動かして、夜子についていく。
夜子が歌を歌っていた。いづなが長い尾を振った。
歌は風となり、青々とした水田を渡り、そして空へと同化した。
真之介の視界が歪んで、夜子たちの後ろ姿が、白く霞んだ。
(第九章「エピローグ」その1へ続く)