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1st Mission 美しき魂  作者: 時幸空
第六章 届かぬ夜の中で
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その4

 旭の閉じた瞼が小さく動いた。

 涙がふるりと流れた。焔はシャツの袖で、小さな水滴を拭う。拭っても、また零れていく。

「旭」

 呼んでみる。

 今朝一番の鳥が、ちちっと鳴いて、羽音を響かせた。早朝の金色の光が、カーテンの隙間から零れてくる。

「真之介を止めてくれ。以前のおれのようになる前に、おまえが止めてくれ。最後の復讐を果たす前なら、間に合うかもしれない。真之介をおまえの手で、引き戻せ。おれはおまえのすぐそばにいる。なにがあっても守るから」

 ここにいる。旭、おれはここにいるから。

 焔が旭の頭をそっと撫でる。柔らかい髪が、焔の指に絡みつく。その小さな引力で、旭が薄く覚醒する。

 誰かがそばにいる。

 お母さん?

 違う。

 このにおい、どこかで。

 深い森で葉が朽ちていく、そんなにおいだ。地に落ちた葉が朽ちて、そこから新しく芽吹く、深い森に満ちる力そのもの。いつかどこかで出会ったにおい。いつもそばに感じた気配。

 誰?

 温かい手が、額に触れる。髪を撫でる。

 気持ちがいい。

 いいにおいだ。

 その心地よさに、旭の感覚はまた、眠りの中へと落ちていった。



(第七章「笑顔の向こう」その1へ続く)

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