野辺愛葉
結局、あの日は死ねなかった。
あまりよく聞いてないが母は警察に捕まり。僕は施設行きだ。
10才の僕は大人しくて、家事全般できる。そして父親譲りの顔立ち。
なので、僕の里親はすぐ決まった。でも、あまりうれしくなかった。怖くてしょうがなかった。
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新しい母さんをお母さんと言うのはとても時間がかかった。僕には母さんがいたから。父さんはそうでもなかった。そうすけさんは僕のお父さんじゃないから、僕にお父さんはいないも同然だった。
新しい家で僕は野辺と言う苗字をもらった。下の名前は愛葉と書いてユーカリと読む。
バカみたいだ。あまりにもキラキラネームすぎる。フルネームは野辺 愛葉。大人になったら絶対変えてやる。こんなバカみたいな名前、絶対変えてやる!
転校したての時、やはり僕はいじめられた。変な名前だからだ。
ひょろひょろの薄汚い、とても弱そうで言い返してこない変な名前の奴なんて。そりゃあだれでもいじめるさ。僕はもうどうでも良くなっていた。
靴がない。教科書がない。そんなのは日常茶飯事日だった。一番許せなかったのは小6になってからだった。あの日は曇りですごくじめじめしていた。だらだら汗を流していたら僕にタオルを差し出してくれた子がいた。
「ゆかり、暑いでしょ。汗めっちゃ出てるよ。これ使いなよ。」
僕は初めて話しかけられた気がする。差し出された無地のタオルは一部も褪せてなかった。
「あ、ありがとう。気持ち悪くないの?僕の事。」
「え?気持ち悪いわけないじゃん。いつも陰で花の水換えたり、メダカのお世話してるの知ってるよ。それに何よりさ、ゆかりイケメンだし!」
僕は嬉しかった。視界が涙でぼやけてた。
「な、ないてごめん。嬉しくて、嬉しくてさあ、、。」
「泣くなよー!」
背中をポンポン叩かれる。静かになった教室に僕の泣き声と背中を叩かれる音が響く。
「ところでさ。」
僕が口を開く。
「君は何て名前なの?」
「ええ!知らなかったのかよ!!」
大きく笑った。
「名前はねーポポラス!白河歩ヶ夢だよ。」
僕に負けず劣らずのキラキラネームが飛んできて正直びっくりした。
「うーん、ポポラスって呼んでもいいけど漢字をとってあゆむって呼んで!」
「わ、わかった。これからよろしくね。あゆむ。」
「おう!よろしくねー」
あゆむに出会って僕の人生はやっと変わり始めた。あゆむは僕のスーパーヒーローだ。
その次日からあゆむはいじめられるようになった。僕のせいで僕はこのクラスの人たちがどうしても憎かった。