ヒステリックババア
いつからだったろうか。僕が人を信用できなくなったのは。
小学5年生の秋。秋にしてはひどく寒く、冷たい風が吹いていた。
一カランカラン
玄関で音がした。母さんが帰って来たんだ。僕は玄関まで少し走った。
「母さん、お帰りなさい。」
「あんた洗濯物は?やったの?」
「あ、、、やってないです、、。」
今日はお酒臭い。というか、すっかり忘れていた。怒られる。
僕は恐る恐る母さんの顔を見た。
パチンッ
玄関に大きな音が響く。ほっぺが痛い。
「あんたはなんでいつもお母さんのことを困らせるの?私だけに負担をかけたいの?過労死しろってこと?わかった。もう私なんて出てけばいいんだ。死ねばいいんだ。」
「ちが、、言ってない!思ってない!ちが、ちがう」
こんな弁明無駄だった。今日の母さんは機嫌が悪いから。
パァンッ
「噓つかないで!本当は思ってるんでしょ!!死ね!死ね!死ね!あんたなんて生まなきゃよかった。こんな子要らなかった。」
母さんはわんわん泣き出した。どう考えても泣きたいのはこっちだ。
気持ちの切り替えが早すぎる。母さんなら怒るから泣くまでのギネスとれそうだ。
「そうすけさん、、そうすけさん、、」
母さんは悲しい時、嬉しい時、気持ちが昂ると父さんの名を呼ぶ。
呼んでも何も起こらないし、誰も出てこない。父さんは死んだから。
僕は黙って家を出た。
良く考えれば母さんがおかしくなったのは父さんが死んでからだった。
あれはいつだっけ。僕が知ってるのは父さんは子供が嫌いで母さんが僕を妊娠した時に蒸発した。その父の名前はそうすけで、父は凄く顔が良く、僕は一夜でできたらしい。だからよく、お前がいなかったらそうすけさんはずっとそばにいてくれたんだ。と怒鳴られる。
でも僕は思うんだ。腹違いの兄弟がいるはずだと、、、
ぎゅるるる
さすがに腹が減った。土曜は給食でないから、今日はあんまり食べてない。
今日は何くったけ?えっと、、昨日の残りの給食。あ、それだけだ。
ぎゅるるる
やばい、、さすがに腹が減った。死んでしまう。ここで死んでしまう。
あれ、、今死んだ方が楽なのではないか。そうした方が母さんも幸せなんじゃないだろうか。
明日ご飯が食べれるかもわからない、急に殴られるかもしれない。そんな中で誰が生きていたいと思えるのだ。
バタン、、、視界が暗くなっていく。ああ、やっと死ぬんだ。
この話はフィクションです。