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世界警備団より指名手配のお知らせ

次回投稿予定

5月18日(日)20時00頃

「そういえば、団福屋の店長逮捕されたらしいわよ」




 家族5人で食事をしていると、母さんが団福屋の話を始めた。




「良かったじゃん。ずっと捕まえたかったんでしょ?」


「うん。やっと店主が客からお金を騙し取ってた証拠が出たらしくてね。正当な理由で白状薬を飲ませることができたのよ。ただね………」


「どうしたの?」


「調査部が到着した時には、既に犯行の手口が分かってたらしいのよ」


「確か隣に兄貴の同級生のお店あったよね?その人なんじゃないの?」


「ううん。違うみたい」




―俺がやったことを誰も言わなかったみたいだな―




 今までも事件に遭遇したら解決してきたが、感謝されることもなければ、そういう情報が広がることがなかった。それはそれで楽に過ごせるから良いのだけど、人としてどうなのだろう。




「被害者の方にも聞いたらしいんだけど、特徴が曖昧でね。あまり分かってないの」


「ふーん」


「取り敢えず、情報送るから、なんかあったら教えてちょうだい」




 通信機の画面を見ると、団福屋の件の他にもう1通送られてきた。

 もう1通は親父からだ。




「送るの忘れてたわ」


「世界警備団より指名手配のお知らせ……え、ユベルにいんの?」




 メールを流し読みしていると、指名手配犯がユベルに潜んでいるらしく、見つけたら通報と足止めをしてほしい旨、そして犯人の特徴が書いてあった。




―身長140cm程度。銀色の髪で肩ほどの長さ。目が薄紫色で、大きな2本の角が特徴。膨大な魔力を保持しており、平均的な魔力より大きい、または闇属性の粒子を感じ取った場合でも通報願います。…え、かなりヤバい奴じゃねか―




「え?これかなりヤバい奴じゃ……」


「よく来る指名手配書とは警戒度違うし、ちょっとした事でも呼べって……」


「……今日、世界警備団の団長さんが来てたのってまさか?」


「あぁ。それは世間向けに送信された奴でな。そいつの正体は0世代の王、大魔王の娘だ」


「「っ!!!」」




 0世代。神々が無作為に世界を創造し、放置していた期間を刺す。最も過酷で、最も血が流れた期間。殺し合いが当たり前の時代で、0世代の生物が現世に現れた場合、世界が滅んでもおかしくないと言われるほどのヤバい奴ら。そんな生物の頂点に立っていたのが0世代の王で、各世界に1人ずついたらしい。




「世界警備団の奴が今日来てな。あいつらがわざわざ足を運ぶってことは相当ヤバい奴なんだろうなと思って聞いてたら、まさかの大魔王の娘が最近になって見つかったらしい」


「魔王の娘って、何千年経ってると思ってんだよ」


「俺もそう思ったんだが、何か分かる装置があるらしい」


「マジか……」




 大魔王という異名がある0世代の王「ヴァイル・アントレン」。魔族達が住んでいた世界から移動し、俺達が今住んでいる世界を侵略した存在。多くの魔族を従え、恐怖により人間を支配していたが、七聖により討伐された。

 知性が高く、文明が進んでいた彼らは、交配により同族を増やしていたらしく、大魔王の娘が居たことも一部の人間は知っている。




―大魔王の娘か。戦うことになったらどれぐらいの被害が出るのだろうか―




――――――――――――――――――――




 翌日、家の前にはいつもの金髪1人と、珍しい男女が立っていた。




「百龍にエンシルか。珍しいな」




「メールを見た。大魔王の娘が現れたそうだな」


「私達に勝てる相手なのでしょうか……」




 百龍の細長い体に隠れるようにしてエンシルが体を傾けながら顔を出す。

 エンシルはよく百龍の後ろに隠れていて、いつもは全員を隠している。昔、森で迷子になった時に誘拐されかけた時に人間恐怖症になったらしく、当時助けてくれた百龍にだけは心を許しているそうだ。両親や昔から仲の良かった俺達は、近くに百龍がいれば隠れなくてもギリギリ大丈夫らしい。




「卒業試合が間近に迫ったタイミングで出てくるなんて。私達七聖を狙っている可能性もあるわね。ラインはどう思う?」




 3人とも俺の方に視線を向ける。昔はこの視線が嬉しかったが、今となっては心なしか鬱陶しさを感じている。




「そいつが何かしたか?」


「え?」


「相手が何考えていてもいいが、何か問題を起こしていない以上、俺らがどうこうする話じゃない」


「じゃ、じゃあ!何もしないって言うのか!!」


「そうだ。俺らが優先すべきは一般人に被害を出さないことだ。下手に動いて刺激しない方が良い」


「暴れたりしたらどうすんだよ!!」


「――時間を稼ぐ。0世代の王レベルだとしたら、俺らはそこら辺に飛び回っている虫でしかない。だから、勝てそうな味方が現れるまで、そして一般人が避難するための時間を稼ぐこと。それが俺らにできる事だ」




 3人は納得のいかなそうな顔を浮かべつつも頷く。

 全員分かっているのだ。『俺達で倒す』という答えが理想だが、現実は勝率が1%も無いことに。




「……アカデミーに向かうか。お前らも今日はアカデミーに行くのか?」


「あぁ。アカデミー生活もあと少しだからな。そろそろ顔を出さないと」




 3か月前、百龍とエンシルは自主鍛錬を行うといってから、必要最低限しかアカデミーに来なくなった。エンシルは百龍の付き添いだろうが、百龍はホリーにボコボコにされて、相当悔しかったらしい。

 具体的なトレーニングの内容は聞いていないが、最近の模擬戦ではホリーと接戦を繰り広げていて、後一歩のところまで追い込んだそうだ。




「あ、そこの人待つでござる!!」




 中央区の表通りを歩いていると、どこかで聞いたことがあるような声が聞こえた。

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