プロローグ
七聖。かつてユーベリア大陸を拠点とし、数多の大陸を支配していた大魔王「ヴァイル・アントレン」を倒した勇者とその仲間達の事である。
長い年月が経ち、七聖の子孫たちはそれぞれの祖先の得意分野を継承し、優秀な成果を挙げていた。勇者の子孫を除いては……
──勇者ならば剣の扱いに長けていて当然
そう言われ。剣の修行を続けてきた。だが、どう頑張っても一般人以上にしかなれない。
大魔王も居ない世の中で、強くなってどうする。そんな事を口にしても心の中では「壁を超えきれない俺の言い訳だ」と分かっていた。
他の子孫たちはそれぞれの形で優秀な成績を挙げている。だからか、未だ何も成し遂げれず、剣のレベルもイマイチな俺は周囲から「落ちこぼれ」、「失敗作」などと影口を言われるようになっていた。
──だから俺は……
人生最悪で最高の日。俺が望んでいた『勇者の子孫という肩書きを捨てたい』という願いを叶え、本当の自分として生きていけるようになった日だ。
──大丈夫でござるか?
──はい。……ただ、思い出がない訳ではないので。少し引きずってるだけです
──今日は色々あったからな。ゆっくり休んでろ
──はい……
今日は夢見が悪いだろうな。