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閲覧いただき、ありがとうございます。最後までお付き合いくだされば、幸いです。

あれから一年が過ぎ、季節は再び春を迎えた。私は美術大学への進学が決まり、新しい生活に胸を弾ませている。初めての一人暮らしは少し不安だったけれど、自分のペースで生活を送れることが何よりも嬉しかった。


ある日の午後、久しぶりに心桜と会うことになった。心桜は美容系の専門学校での勉強に励んでいるらしく、会うたびにその華やかさが増しているように感じる。


「華恋、久しぶり!」


カフェで待ち合わせた心桜は、相変わらず明るい笑顔を見せてくれた。私は席に座り、心桜の顔をじっと見つめた。


「心桜、なんだか大人っぽくなったね。」


私がそう言うと、心桜は照れくさそうに笑った。


「そうかな?でも、自分でも少し成長できた気がするよ。あの頃は、他人の評価ばかり気にしていたけど、今は自分のやりたいことに集中できるようになったの。」


心桜の言葉には、以前とは違う自信が感じられた。

私は心から嬉しくなった。


「そうだね、私たち、少しずつ変わってきたよね。」


心桜は頷き、コーヒーを一口飲んだ。


「これからは、自分がどう生きたいかをもっと大切にしていくつもりだよ。華恋も、頑張ってね。」


その言葉に、私は深く頷いた。私たちはお互いに成長し、それぞれの道を歩んでいる。それがとても誇らしかった。


次に会ったのは胡桃だった。彼女は料理の専門学校での勉強に夢中になっているようだ。


「華恋さん、見て!この前作った料理なんだ。」


胡桃はスマートフォンを取り出し、写真を見せてくれた。

そこには、異世界の料理を思わせるカラフルなプレートが映っていた。


「すごく美味しそう!これはどんな料理なの?」


私が尋ねると、胡桃は楽しそうに説明を始めた。


「これは、手毬寿司っていう料理なの。私の故郷の味を再現したものなんだ。華恋さんのお母さんが教えてくれたレシピを少しアレンジしてみたの。私も、少しでも故郷の味を忘れないようにしたくて」


その言葉に、私は胸が温かくなった。

胡桃もまた、彼女の選んだ道をしっかりと歩んでいる。


「胡桃さん、本当に頑張ってるね。きっと、あなたの料理はたくさんの人に愛されると思う。」


胡桃は少し照れたように笑いながら、頷いた。


「そうだといいな。でも、私はまだまだ勉強中だから。これからもっと頑張るよ。」


彼女の決意に満ちた表情を見て、私は安心した。

胡桃もまた、自分の道をしっかりと見つけている。


その日の夕方、私は一人で桜の並木道を歩いていた。満開の桜が風に揺れ、花びらが舞い散っている。

その光景は、まるで新しい季節の始まりを祝福しているかのようだった。


「私たち、それぞれの道を見つけたんだね……」


小さく呟いたその言葉は、誰にも届かないけれど、胸の中で確かな響きを持っていた。


私は、母のノートを思い出した。

異世界から来た母が、この世界で成功を収めた理由。それは、母が自分の信念を貫き、ありのままの自分を大切にしたからだと思う。


「私も、母さんみたいに強くなれるかな。」


もちろん、私は私で母は母だ。

でも、昔のような畏怖や言いようのない不快感はなくなり、一人の人として純粋に母のことを尊敬できるようになっていた。

私は空を見上げ、深呼吸をした。

これからの道は決して平坦ではないかもしれない。

でも、私は自分の選んだ道を信じて歩いていこうと思った。


その夜、私は胡桃と心桜にメッセージを送った。


「今日はありがとう。これからも、お互いに頑張ろうね。」


すぐに二人から返信が返ってきた。


「もちろん!私たちはずっと一緒だよ」「これからも応援してるよ、華恋!」


私は微笑みながら、スマートフォンを置いた。

新しい季節、新しい未来が私たちを待っている。


次の日の朝、私は駅へと向かう道を歩いていた。

桜の花びらが舞い散る中、私は前を向いて一歩一歩進んでいく。


「私の人生は、私が選ぶんだ。」


その言葉を胸に、私はこれからも自分の道を歩んでいくつもりだ。誰かの期待ではなく、私自身のために。


春の風が、私の背中を優しく押してくれた。それは、私が新たな一歩を踏み出すための合図だった。


よろしければ、ご評価、ご感想いただけますと幸いです。最後までお付き合いくださり、ありがとうございます。

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