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勇者、女装をする

湿気に満ちた防具屋の店内で、空気がひんやりと肌を撫でる。店内には鎧や盾が壁一面に飾られ、鉄と皮の混ざり合った匂いが充満していた。木製の棚には様々な防具が陳列されており、その金属の光沢が店内のわずかな光を反射している。

その中には個性的なデザインのものもあった。勇者は防具屋の店内を見渡しながら、興味津々の表情を浮かべていた。勇者は特に一つの鎧に目を奪われた。

胸部に不思議な穴が空いているという特異なデザインの鎧を指差し、疑念に満ちた声で問いかけた。

「おじさん、この鎧はなんで胸に穴が空いてるんだ?」

防具屋は、顔に刻まれた深い皺を動かし笑みを浮かべながら、古い椅子に腰掛け、一息つきながら答えた。

「これは女性用だよ」

勇者は一瞬、言葉の意味を理解するのに時間を要したが、やがて納得の表情を浮かべた。

「ああ、おっぱいか」

防具屋は、勇者の言葉にやや含義のある笑みを浮かべながら、この鎧の説明をする。

「ああ、みんなすぐ大きくなるからな。女性用の鎧は胸の成長を考慮して作られているんだ。男の鎧と同じ平坦じゃ困る」

勇者は、鎧の穴をじっと見つめながら、まだ納得がいかない様子で疑問を投げかけた。

「でも、こんな穴からおっぱい出してたら変態じゃないのか?」

防具屋は、若干驚いた様子で、目を丸くして少し困ったような表情を浮かべながら、反論した。

「は?何いってんだ。後から胸当てを付けるに決まってるだろ。だから、胸に空いた穴からおっぱいが出ているわけじゃないんだよ」

彼は、胸当ての存在を説明すると同時に、そのカスタマイズの重要性についても言及した。

「本当は胸当ては胸の大きさにあったものをつけるべきなんだけど、みんな大きいものを選んていくんだ」

勇者は、その事実について軽く笑いながら、人々の虚栄心について言及した。

「みんな見栄っ張りなんだな」

防具屋は、軽い口調で、それが現実であることを肯定し、さらにその柔軟性についても触れた。

「まあ、胸が小さくても大きな胸当てをつけるのは可能だからな」

勇者は、もう一つの鎧を指さし、それが目に見えて一般的な女性のサイズよりも大きいことに疑問を投げかけた。

「こっちの胸穴鎧は女性にはちょっと大きいんじゃないか?」

防具屋は、にやりと笑いながら、その鎧の特別な用途を明かした。

「ああ、それは女装用だよ」

勇者は、ふとした好奇心から、その鎧を指差し、少し気恥ずかしそうに尋ねた。

「なあ、これくれないか」

防具屋は、大きな声で笑いながら、勇者の意外な要求に応えた。

「おう!お前さんも女装に興味あるのか」

勇者は、防具屋の豪快な笑い声に少し照れくさい笑みを浮かべながら、頭をかいた。店の片隅に積まれた鎧の山を眺めると、その中から一つの特別な存在感を放つ女装用の鎧が彼の目を引いた。

「いや、ただの興味じゃないんだ。この旅で潜入したり、変装する機会が多いからさ。それに、女装用の鎧がこんなにしっかり作られているとは思わなかったんだ。」

防具屋は、勇者の言葉を聞くと、さらに興味を持った様子で頷き、古い木枠のカウンターから立ち上がり、その鎧を手に取った。

「確かに、この鎧はただの女装用というわけではない。特殊な魔法を施してあってな、身につけると女性の体形にぴったり合うように小さくなるんだ。と言ってもお前さんの体が女になるわけじゃない。鎧の中は異次元空間で、どんな巨漢でも着られるんだ」

勇者は目を丸くし、その魔法の鎧に興味津々となった。

「本当か?それは便利そうだな。」

防具屋は、鎧を勇者に手渡し、詳細を説明し始めた。

「この鎧はね、女性の体形に合わせて細部まで調整が可能で、見た目だけではなく、動きやすさも考慮してあるんだ。だから、女性の姿をして戦う時にも、全く遜色ない性能を発揮する。」

勇者は、鎧を受け取りながら、その技術の高さに感嘆した。

「素晴らしい。こんなものがあれば、任務の幅が広がるな。」

防具屋は、勇者の期待に応えるように、さらに付け加えた。

「それに、この鎧は特殊な素材でできており、軽量でありながら非常に頑丈だ。火にも強く、魔法の攻撃にもある程度は耐えられる。まさに、女装をする勇者にはうってつけの逸品だよ。」

勇者は、鎧を手にして試着することにした。防具屋は、試着室へと勇者を案内し、そっとプライバシーを守るためにカーテンを閉じた。

「ありがとう、おじさん。これでまた一つ、装備が充実した。」

防具屋は、カーテンの向こうから聞こえる勇者の声に、満足げに微笑んだ。

「いいってことよ。お前さんの冒険が、この鎧で少しでも楽になればそれでいい。それに、女装の姿で敵を欺くのも、勇者の知恵ってもんさ。」

勇者は、試着室から出てくると、見違えるほど女性らしい姿に変わっていた。ゴリラのような勇者の体を包んでいた3メートルほどあった鎧は、150センチほどに縮んでいた。防具屋は、その変貌ぶりに思わず拍手を送った。

「おお、見事な変身じゃないか!これなら誰もお前さんが男だとは思わんよ。」

勇者は、新たな鎧の感触を楽しみながら、防具屋に感謝の言葉を述べた。

勇者は防具屋の粗野ながらも温かみのある店内を見回し、その深い感謝の情を込めた言葉を述べた。

「本当にありがとう、おじさん。この鎧、大切にするわ。」

彼の声は、普段の荒々しい響きとは異なり、まるで春の訪れを告げるやわらかな風のように、優しく、そして女性らしい調子で響き渡った。防具屋は、分厚い眉を顰めながら勇者を見つめ返した。

「お前さん、どうしたんだ?声まで女っぽくなってるじゃないか」

彼は半ば心配そうに、半ば驚きを隠せずに尋ねた。勇者は微笑みながら、光り輝く指輪を高く掲げた。その指輪は、細工された金の輪に小さな宝石がちりばめられており、それはまるで星々の夜空のように輝いていた。

「それは、この指輪のおかげなの。これは空気の振動に作用して、これを高くしてくれるのよ」

彼は指輪の不思議な力を説明した。指輪からは微かな音もなく、しかし確かに周囲の空気が揺らめいているのが感じられた。防具屋は、その説明を聞いてもなお半信半疑の表情を隠せなかったが、やがて肩をすくめて、豪快な笑い声を店内に響かせながら言った。

「ほぉ、そんな不思議なもんがあるのかい。幸運を祈るよ、勇者。いや、今日は美しい女性剣士だな。」

防具屋は、店の扉を開け、勇者を送り出すとき、心からの祝福を込めて言った。勇者は、新しい鎧を身にまとい、再び冒険の旅に出る準備を整えた。防具屋の店から一歩外に踏み出すと、新たな可能性を胸に、未来への期待を膨らませていた。

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