表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/3

後編

「卑怯者には卑怯者のやり方があるんだって」

「卑怯者のやり方、ですか?」

「そう。まず、すぐにジェームズ・キューンハイトについて調べた。ボロが多すぎて逆に何かを仕込んでいるのかと思ったが、本当にただの屑だったから殺そうと思った」

「え……っ?」

「俺よりも屑の癖に、何の努力もなく君の婚約者の座を手に入れた奴が憎かった。婚約が決まってからも問題を起こし続けて、しかも愛人までいるなんて許せる筈がない。ただ奴には既にフリーデン騎士団がお目付け役としてついていて、それが外れるのは奴が変則的に愛人たちと会う時だけだったから厄介だった。ずっと張り付いていれば機会はあっただろうが、俺にも仕事があったからそれは難しかった」

「あ、あの、テオドール……?」

「平時に近寄るのは難しい、でも俺がこの手で殺したい。なら、遠くからでも脳天を撃ち抜ければいいんだと思って、弓と魔法を研究した」

「あの……」

「でも」



 ふいに言葉を切ったテオドールは、また泣きそうな顔をしていた。恐ろしい話を聞いていた気がするのに、その表情にどきりとする私は少しおかしいのかもしれない。



「君に、今度こそ決定的に嫌われるんじゃないかと思うと、どうしても行動に移せなくて……。俺はやっぱり、卑怯者の上に臆病者なんだって自覚したよ」

「……」

「でも、そうやってうじうじと日々を生きていたら、あの竜騒動が起きて……。俺が研究していた弓と魔法が有効かもしれないと思ったから、討伐隊に志願したんだ。死ぬかもしれないとも考えもしたが、それならそれでよかった。君への想いは断ち切れそうになかったから、この想いごと死ねるなら本望だった。まあ、結果がこれだけれど……」



 気まずそうに視線を落とすテオドールはつまり、元はジェームズを殺す為に開発した魔法を竜に応用したということなのだろうか。……もう、何と言ったらいいのか、分からない。ここは怒ったり恐怖したりするところだとも思うのだけれど、でも負の感情が湧かなくてそれも困っている。



「運良く竜を倒せてしまって、陛下に褒美は何でもいいなんて言われて、……サマンサのことしか思いつかなかったんだ。むしろ討伐隊に志願した時から、上手くいったら君のことを頼もうとは思っていたけど、ここまでとんとん拍子に上手くいくとは……。でも、もしかしたら君も喜んでくれるんじゃないかと、思って……」

「テオドール、それは……」

「サマンサ」

「……はい」

「君はさっき『彼には私しかいない』って言ったけどさ、俺にだって、君しかいないんだよ。俺のほうが、ずっと君が必要なんだよ」



 ……そんな気はしている。


 いや、おかしい。やっぱりこの状況はとてもおかしい。でも、どうだろう。危険度でいうならば、ジェームズよりよっぽどテオドールのほうが高い気がする。ジェームズの危険度はいうなれば身内でおさめられそうだが、テオドールのそれはそうではない。それならば、優先すべきはテオドールのほうだろう。


 確かに、私個人としてもジェームズよりはテオドールがいい。この条件であれば、誰に聞いてもほとんどがそう返すだろう。駄目な遠戚か竜を討った英雄か。当たり前だが選ばれるのは後者だ。それに、そもそも私だってテオドールへの憧れを未だ持っている。ここまで言われて悪い気などしない。でも、いや、ううん……。



「……テオドール、貴方は私のことをどう思っているんですか?」

「好きだよ!」

「そ、そうではなく、ええと、質問が悪かったですね。私をどういう人間だと思っていますか?」

「サマンサのことを……?」



 問題は、ここだ。テオドールが、学生時代のあまりものを言わない静かで大人しい女学生であった私のことを好きだと言うのなら、この話は断った方がお互いの為になる。


 学生時代の私はテオドールと嘘でも付き合えたことに浮かれて、何重にも猫を被っていたのだ。静かにしていたのはボロを出さない為と煩わしく思われないようにする為で、本当の私はあそこまで大人しくはない。……そもそも、騎士団を抱えている家の娘が大人しく静かで従順にいられる訳はないのだ。


 騎士団には見習いから手練れまでの多くの人が在籍しており、女性もいるがどうしても男所帯になる。騎士とはいえ団内での荒事もそれなりにあるのだから、小さなことできゃあと可愛らしく悲鳴など上げていられないのだ。おそらく私は、同年代の女性たちよりも気が強い。ついでに馬にも乗るし、上手くはないが剣だって扱う。決して深窓の令嬢ではないのだ。もし、それをテオドールが望んでいるなら、私はそういうおしとやかな女性にはなれない。学生時代の猫被りは結局、終わりがあるからできたことだ。それに、テオドールと一緒に過ごした時間もそこまで長くはなかった。だから――



「そうだな、雰囲気は柔らかいのに意外とずけずけとものを言う人で……」

「……ん?」

「読書や編み物なんかも好きだけど、虫や蛇も鷲掴みするようなワイルドさもあって……」

「……」

「喧嘩を売られないようにする術を持ってはいるけど本当に売られたらきちんとやり返していたし、そうだな、強い人だと思っているよ」

「え……?」

「え、ああ、いや! もちろん、可愛いとは思っていてっ! というか、それが前提なんだけど、いやでも、うん、綺麗になっていて驚いたよ!」



 とって付けたように焦って容姿の話をしているが、そこではない。



「私……」

「う、うん……」

「私、貴方といる時にそんなにたくさん話したことも虫や蛇を掴んだことも、ましてや喧嘩を買ったこともないんですが……?」



 確かに私は自分の意見をよく言う方で、それが外見の雰囲気と違うと言われることがある。男所帯で育ったので虫や蛇も怖くないし、毒の有無や緊急時に食べられるものなんかも知っている。喧嘩は回避するのが一番であるけれど、どうしようもない時には持てる全てで対応はしてきた。これらは事実だけれど、それをテオドールが知っているのはおかしい。



「え……あっ」

「いえ、あ、ではなく」



 テオドールは目線をうろうろさせながら、口元に手をやった。あんまりにもあからさま過ぎて、眉間に皺が寄るのを感じる。もしかして、ジェームズを調べたように私のことも……?



「……正直に言うと、その」

「はい」

「学生時代に、隠れて君のことを見ていて」

「……は?」

「隠れてっていうか、君に見つからないようにっていうか、えっと……。だって、君、あまり一緒にいてくれなかったし、普段何をしているか気になって、それで。君のことを目で追うようになっていったら、クラスメイトとかが居場所を逐一教えてくれるようになって、ついつい隠れて見る癖がついて……」

「……」

「ご、ごめん」



 予想外過ぎて、ちょっと言葉が出てこない。え、つまりこの人、学生の頃に私のことを隠れて見ていて、しかもそれを学友たちも知っていて……。ああ、何だろう。考えたくない。



「……でも、そんな君が好きなんだ」



 困ったように眉を下げるテオドールに、どきりとする。……ああ、もう! 考えないといけないことはたくさんあるのに、頭が全然回らない!



「……事情は、分かりました」

「ほ、本当に? じゃあ、俺と結婚してくれる?」

「それは、まあ、王命ですので……」

「っ、何でもいいよ! 君が俺と結婚してくれるなら!」

「きゃ」



 断りもなく抱きしめられて驚くけれど、嫌ではなくて困る。卒業式の日に抱きしめてもらっておけばよかった、なんて思っていた詰まらない後悔が消えていくような感じがした。でもその感動に似た感情よりも、心臓の音が煩くてまた困った。



「許してくれてありがとう、サマンサ。大事にするよ……!」

「え、ぁ、ええと、私も、お役に立てるよう頑張ります……?」

「それで、相談なんだけれど」

「はい?」

「ジェームズ・キューンハイトは消していいよね」

「駄目ですよ」

「え?」

「え、じゃない」



 心底不思議そうな顔をしないでほしい。



「だって、邪魔だし……」

「わ、私と結婚するのなら、彼は遠戚になるんですよ! 親戚だからと無条件で優しくする必要はありませんが、繋がりは大切にしていただかないと困ります!」

「そういうもの、かな」

「そういうものです」

「じゃあさ、奴の件は追々考えるとして、フリーデン騎士団のデュークって奴はいい?」

「何でそうなりました?」

「だって君に気があるみたいだったから」

「駄目です」

「でも……」

「駄目です」

「じゃあ、ほらあの、君に毎回ケチをつける子爵夫人は……」

「駄目です! 全員、駄目です!」

「ええ……?」

「駄目! です!」



 私は頷いてしまったことを早々に後悔しながら、テオドールを説得し続けた。


───


 そもそも王命だったのだから個人の意見が通る筈もなし、私とテオドールはそのまま結婚し、竜が出没した火山付近の領地を治めることとなった。テオドールは国王から新たに伯爵位を賜り、その上で精鋭からなる小規模騎士団を作ることを命じられ、あの竜が現れた時の二の舞とならないように日々騎士たちを育てている。結果として、フリーデン騎士団の運営を知っている私が彼の妻になったことはとても都合のよいこととなった。


 始めはあまりにも不義理だと困惑していた家族だったが、テオドールの人となりや私に対する想い、そして武功などを知った上で最終的には彼を認めた。まあ、皆口には出さないが、ジェームズよりは百倍マシだとは思っているのだろう。


 ちなみにジェームズにはいろいろな理由があり、一日中監視を付けることで落ち着いた。一人の大人として社会に出してもいいとならない限りは監視は続くし、その過程で愛人や悪い知り合いとも強制的に縁を切らせたそうだ。ジェームズは騎士団の鍛練に悲鳴を上げているらしいが、キューンハイト夫妻はその対応にむしろ恐縮するくらいには感謝してくれているらしい。本来であれば自家でどうにかしなければならなかったことを押し付けて申し訳ないと、家としてだけでなく私にも個人的に謝罪をしてくれた。けれど、フリーデン家とて貴族だ。何の見返りもなしにここまでしている訳ではない。キューンハイト家からは騎士団への資金援助をしてもらっているし、ジェームズが愛人たちと切れたことを知ったあとはその金額も増えた。遠戚だから、だけではない事情で、我々はきちんと繋がっている。


 落ち着くところに落ち着いてはいるようだけれど、問題はある。多分、どの家庭にも多かれ少なかれ問題はあるのだろうけれど、我が家の場合は少し特殊なのかもしれない。



「サマンサは駄目な人が好きですものね」



 久しぶりに王都にやってきたので、学友であるヴァレンティナ・ルーエ公爵夫人と高位貴族御用達のカフェテリアで話していると、いきなりにこう言われたのだ。彼女はルーエ公爵家の跡取り娘だったが今は結婚し、彼女の夫が公爵位を継いでいる。



「どういう意味です、ヴァレンティナ。違いますが?」

「違いませんわ、貴女は駄目な人が好きなのです。正確に言うのならな、駄目な人を世話して正常な状況に近づけることが好きなのよね。自分がいなければこの人は駄目なんだって人がお好きよ。自覚がないなら、ここできちんと自覚をなさって」

「……物語によくある、破滅していく人の人物紹介みたいに言うの止めてくださらない?」

「事実ですわ」



 王家の血を色濃く引くヴァレンティナはその容姿や身に着けている高価な衣装だけではなく、所作の一つ一つがとても美しい。でも、友人に対して駄目な人が好きとかそういう評価をするのはどうかと思う。



「ですが、サマンサ以外にあの英雄様の手綱を握れる人もいないでしょう。相性がよかったようで国としては大変に助かっております」

「人の夫を危険人物みたいに言うのも止めてくれません?」

「事実ですもの」

「……言い返せないのが辛いところです」

「いいではないですの、愛し合っているのでしょう。この上なく上手くいっている結婚だと思いますわ」

「あ、愛し合って……」

「ふふ、好きなのでしょう、彼のこと」

「私ばかりが夫婦の話をしている気がするのですけど?」

「あら、わたくしは学生時代から貴女の話を聞いていましたけど? ちょっとくらい、いいではありませんか」



 それを言われると痛い。確かにヴァレンティナには学生の頃によく相談をした。相談というか愚痴を聞いてもらっていたというか、そんな感じだけれども。



「テオドール・ライデンシャフトの手綱は、これまで通りしっかりと握っていてください。貴女自身も健康で長生きをしてもらわなければ困ります。どうぞ末永く、夫婦円満に、ね?」

「別の意図を感じるのは気のせいでしょうか?」

「……それはほら、言わぬが花ですわ。では、わたくしはそろそろこのへんで。サマンサもお迎えが来たようですしね」

「……そうですね。ごきげんよう、ヴァレンティナ」

「ええ、ごきげんよう」



 ヴァレンティナが席を立ったのと、カフェテリアの出入口から黄色い悲鳴が小さく上がったのはほとんど同時だった。はあ、と、ため息を吐きながら紅茶を一口含む。



「サマンサ、お待たせ。こちらの仕事は終わったよ。俺がいない間、何もなかった?」



 カフェテリア内の視線を独り占めにしながら、テオドールがこちらにやって来た。ヴァレンティナはテオドールが入ってきた出入口とは別の方向に歩いて行ったので、二人はすれ違っていない。学生の頃からヴァレンティナはテオドールのことがあまり好きではないので仕方がないのだが、いくら聞いてもその理由は教えてはもらえなかった。彼女は『仮にも恋人の悪口を聞かせたくはないわ』と、頑なだった。ただ最近になってやっと少し、ヴァレンティナがテオドールを苦手とする理由が分かってきてもいる。……それが、私の今の悩みでもある。



「お仕事お疲れ様でした、テオドール。でも、たったの三時間で何かが起こる筈がないと思いませんか?」

「三時間もあれば何かしらが起こってもおかしくないよ。君は少し危機感が足りないんじゃないかな。それで、どうだった?」

「……ずっとヴァレンティナと一緒にいましたので、何もございませんでした」

「ああ、ルーエ夫人だよね、彼女には本当に助かっているよ。彼女がいれば大抵の虫は逃げ出すから」



 テオドールは私の手を取り立たせ、歩きながら身を屈めて小声でそう呟いた。英雄として確固たる地位を築いた彼だが、相変わらず大勢の人がいる場所が苦手で大人数での会話も得意ではない。けれど私や、本当に親しい友人や家族にはこうやって違う顔を見せてくる。人格者で穏やかに笑う英雄テオドールではない、少し危うい顔を。


 私はぎゅうと口の中の肉を噛んで、いろいろな感情に耐えながらテオドールのエスコートを受けた。このカフェテリアでの飲食代は後日家に請求が来るようになっている。今回の場合は階級が上であるヴァレンティナが払ってくれることになるのだろうから、後日お礼をするのを忘れないようにしないと、と別のことを考えながらカフェテリアの前に止めてある馬車まで歩き乗り込んだ。



「はああ、今日は本っ当に疲れた……。爺さまたちに囲まれて、ああでもないこうでもないって長々と無駄な話が続いてさ。王太子殿下が途中で間に入ってくれて助かったんだけど、すごく疲れたよ」



 馬車の扉が閉まるとテオドールは私の腰を抱いて、肩にもたれかかってきた。全体重を乗せてきている訳ではないのでそこまで重たくはないけれど、首や頬に彼の髪がふわふわと当たってくすぐったい。でもまずは、彼の頑張りを褒める方が先なのだ。



「よく我慢できましたね、素晴らしいです」

「……うん、ありがとう。サマンサに褒めてもらえると思ったら頑張れたよ。でもさ、どうして半年に一度も報告書を俺自身が持って来ないといけないんだと思う?」

「王族方の考えていることは分かりかねますが、王都で正装をしている貴方を見るのは好きですよ」

「そ、そう?」

「ええ」



 現在テオドールは半年に一度、新しく作った騎士団や領地の状態を直接国王に報告するように命じられている。そんなふうに命じられている貴族は他にはない。私の実家であるフリーデン家も騎士団を持っているが、義務付けられた直接の報告は年に一度だけだ。


 おそらく、王族はテオドールの状態を見ておきたいのだ。火山付近にまた竜やその他のモンスターが住みつくことも警戒しているのだろうけれど、現在の王族にとって一番の脅威はテオドールなのだと思う。英雄としての人気、そしてこの危うさにも気が付いているのだ。きっと王族はテオドールとの関係が良好であることをアピールすると共に、彼の危うさにも注視していたいので半年に一度は直接会いたいのだろう。


 ……テオドールだってここまで分かった上で私にこう聞いているのだから、性質が悪い。しかもそれは私に慰めてほしいとか褒められたいとか、そういう子どもっぽい理由であるのも性質は悪い。そう思いつつ、彼の頭を撫でている私も大概なのだが。



「うん、じゃあ、今夜のパーティーも頑張るよ。君のパーティードレス姿も見られるからね」

「はい、ちゃんと私が隣にいますから大丈夫ですからね」

「ありがとう、サマンサ」



 苦手なパーティーも嫌いな人付き合いも、テオドールは私がいるからと頑張るらしい。彼の行動理由のほとんどには、何故か私が関係してくる。ヴァレンティナが言った通り、確かに私は彼の手綱を握っているのだ。


 たまに、というか、結構頻繁にこれでいいのだろうかと考える。結婚とは貴族とはと、考え出すときりがない。でも、



「サマンサと結婚ができて本当によかった。君以上の人はいないよ」

「……またそんなことを言って」

「本当のことだからね、俺は幸せ者だ」



 こうやって嬉しそうに笑っているテオドールの隣にいられることが、こんなにも嬉しい。……結局私も、初恋が実ったことに浮かれているのだ。



「それでさ、サマンサ」

「何です?」

「ジェームズ・キューンハイトはそろそろ消してもいいんじゃないかなって」

「駄目です」

「だって奴、またお義兄さんに迷惑をかけていたぞ?」

「駄目です」

「フリーデン家の資金繰りが厳しいのなら俺の実家に言ってみるし、誰にもバレないように綺麗に片付けるから」

「テオドール、私の実家も別に資金には困っていません。ねえ、私たちにとってどうでもいい人の話はここまでにしましょう。パーティーまでにはまだ少し時間がありますし、久しぶりに王都のブティックに寄りたいのですが一緒に来てくださいますよね?」

「勿論、何が欲しい?」

「それは、テオドールが選んでください。貴方が選んでくれたものが欲しいです」

「ああ、任せてくれ!」



 テオドールはたまに怖いことを言いだす以外は、ただの愛妻家だ。英雄も形無しだとよい意味で笑われている。……まあ、いいか。ヴァレンティナの言葉の通りに私が彼の手綱を放さなければいい話だ。うん、多分そうだ。考えるだけ無駄だということが世界には溢れている。


 ジェームズのことなど忘れて、私にどんなものを選ぼうかと悩みだしたテオドールの頬にキスをしてみる。ぱっと驚いた顔をした彼は、すぐに口元を緩ませて幸せそうに笑った。私もきっと同じ顔をしているのだ。


読んでいただき、ありがとうございます。

よければブックマーク・評価・いいねなどしていただけると、とても嬉しく思います。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ