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ヤタノカラス  作者: えるらんでぃす
9/13

一真


◇◆◇◆◇◆



《国立国際医療センター》



俺は、草薙一真。

あの後、咲宮耶さんは重要な会議があるとかで、小日向さんではない他の秘書の人につれられて、ここにいる。そして、この医療センターの検査室ではなく、何故か更に奥にある研究棟の方で検査を受けている。

さすがに薬品や異物を入れられたりしていないので人体実験ではなさそうなんだが、普通の病院で見たことがない色々な機器に入ったり、変な装置つけて飛んだり跳ねたり走らされたりしている。これがなかなか大変なんだ。救いは、この三条って女医?さんや看護師の皆さんが、全員べっぴんさんで。とてもやさしく接してくれる。そのおかげか気分は悪くない。先日のあの針の筵の状態から比べれば天国なんだが、さすがに朝から晩までぶっ通しだとかなり疲れる。


「はい、これで最後になります。こちらにどうぞ」

看護師がそういうと、天井も壁も真っ白な部屋に案内され、看護師は出ていき俺一人になる。部屋の真ん中には、これまた真っ白な柱があり、その柱の中心が両開きに開くと中には、長さ1メートルほどの白く輝く棒が浮いている。


『最後に、その棒を両手で握ってくれたまえ』

女医?さんの声がどこからともなく聞こえる、部屋に反響はせず、頭に響いてくる不思議な感じだ。

俺は言われるままその棒を握る。


「?」

別に何も起きない。俺が握ると虹色に眩く輝き出すとか期待したんだが、ちょっと期待外れだった。

しばらくして、また声が響く


『もう、放していいよ。お疲れ様』


部屋の扉が開き、看護師さんに案内されるまま。検査着のまま途中会話もなく淡々と病室まで案内される。


「明日、検査結果がでますので、本日はこちらでゆっくりとして下さい。お食事は時間になりましたらお運びします。万が一何か特にご入用なものがあれば、そちらのボタンをおしてください。では」


部屋はちょっとしたホテルのスウィートルームな感じで何も不自由はなく食事も普通に美味しかった。食事と一緒に安定剤も飲むように言われたが、何を飲まされるか解らないので飲まなかった。のだが、安定座もひつようなく、この数日の疲れからかすぐに眠りについた。





 《三条の研究室》 


咲宮耶と研究室室長の『三条清音』が膝を突き合わせていた。

三条清音。咲宮耶とは同期の悪友で、学生時代を共に過ごし。当時から色々な意味で衆目を集め、今ではマッドサイエンティストとして多岐に渡り研究をしている。また、他の研究者達が彼女に意見を求めることも珍しくなく、この研究棟の実質の主となっている。が、こと面倒な検査の依頼を気安くできるのは咲宮耶くらいである。


「咲宮耶!なんなのあれは?」

「あれとは?」

「あなたんとこの秘書が急に連れてきた男。いきなり『ヤタガラス総合適正検査』をしてほしいって言うからしたけど…。これを見て!」


三条が一真の検査データが写っているタブレットを見せ叩くように咲宮耶に渡す

咲宮耶は冷静に指でなぞりながら検査結果に目を通していく


「戦闘適正はすべてAクラス以上。マナ量に至ってはSクラス以上。しかも、最後の神器反応検査!拒否反応0よ!0なんて過去に一人も居ないわ!何者なの?こんなのが日本にいたなんて…」

「彼は、この数10年海外にいたわ」

「海外って…、その国が黙ってないわよ!」

「彼は海外でも登録はないわ」

「未登録?ならなおことよ!こんなのが野ざらしだったなんて…。言いなさいよ全て」


三条が咲宮耶にこれほどつめよるのは珍しく、咲宮耶も観念して話す


「神楽耶シンドローム…。彼はその唯一の生き残り」

「神楽耶シンドローム!。まさか本当に見つかったの?」

「ええ…。私は信じてたわ。姉さんが自分の全てを捧げて守った人だから」

「信じられない…」

「でも、当時の記憶はほとんど失っている様。かろうじて私が誰なのかを思い出した程度。能力については先日の岐阜山中ランクオーバー事件で、チームと自衛隊員を助けた張本人。彼は、祖父である龍蔵さんに鍛えられてはいるみたい」

「龍蔵って。あの鬼神?すごいわね。でも、これからどうするの?《奥》が黙ってないわよ」

「隠すわ…。今はまだその時じゃない」

「隠すって、あんた」

「その為に、ここへ連れてきたのだもの…」

「隠ぺいしろと?」

「ええ」

「それで私に検査を?」

「そう。こんなこと、あなたにしか頼めないわ。私は…どうしても…知りたかったの。彼の中に姉さんの力が生きてるのかを。そして、彼を正式にヤタガラスへ入れる為に。だから、隠ぺいではなく改ざんしてほしいの」

「でも、いずれはバレるわよ」

「ええ、でも時間は稼げる。それに、彼にはやってもらわないと」

「やってもらう?」

「ええ、死んでいった子供たちと姉の為にも」

(姉さんはそんなこと望んでないけどね…それでも…)


三条は少し俯いた咲宮耶を見るといぶかしげな顔をわざとらしく見せて言う


「あなた、まだ何か隠してるでしょ?」

「ごめんなさい、その時がきたら必ず話すわ」

「わかった。で、登録ランクは?」

「ぎりぎりAラインでお願い。海外からの逆移住で、最近この国で覚醒」

「Aライン近くの覚醒なんて、そりゃまた、無茶だね?」

「それも全て承知よ」

「彼はランクSでもおかしくないのに、Bランクスタートって…。まさか?彼に?」

「ええ」

「こうなったら一蓮托生ね。地獄まで付き合ってあげるわ」

「ありがとう…。清音あなたのそういうとこが好き」

「今度、おごりなさいよ」

「もちろんよ」


三条は目じりと口の端を挙げてニヤリと笑い、舌なめずりをする。

咲宮耶は視点の合わないめで遠くを見つめていた。

(これで、次の段階に進める。姉さんはきっと望んでなくても、これは導きなのかも知れない。そして、いよいよ時が来たのかも)


咲宮耶は手に持ったタブレットをなぞり、一真のデータを消去した。





俺は、翌日看護師さんに起こされるまで、爆睡してしまっていた。こんなにぐっすりと眠れたのは何日ぶりくらいだろうか。朝食を取ったあと少しして、三条と言う女医さん?って人の部屋で検査結果を聞いた。これといった病気や先天的な疾患等なくとても健康体。ヤタガラスの適正等の結果は後日になるそうだ。まだ、数日はこの病室で過ごさないといけないらしい。この先どうなるのかは、その検査の結果次第と言われた。病室に戻ると俺にどうしても会いたいって言う人がいるとのことで、その人がいる場所は医療センターの病室らしく看護師さんに案内される。その病室には俺が先日助けた人がベットで横になっていた。


「失礼します。草薙一真と言います。初めまして…ではないですね。はは」

一真は病室に入るとバツの悪そうな顔で頭を掻きながら挨拶をする。


「ご足労ありがとうございます。本来なら、こちらの方から挨拶に伺わないといけないのですが、御覧のとおりこの体たらくで申し訳ない。先日はご助力ありがとうございました」

榊がベッドに横になりながら一真に向いて頭を下げる。頭をあげることなく言葉を続ける


「あなたが来て下さらなければ、我々は誰一人として帰還できず全滅していたでしょう。本当に感謝しています」


一真が慌てて「やめてください」と手をブンブンと横に振る

「頭を下げないといけないのは僕のほうです!彼女を…雪椿を壊してしまいました」

「雪椿…。は、女性だったんですね…」

榊はそこで顔を上げ虚空を見つめる。

「あの時、意識を失いかけた時《彼女》を一瞬感じたような気がします。少しひんやりとした、それでいて暖かいような空気が私を包み込んだような…」

「はい。彼女の意思でした。あなたを助けたいと。そう、聞こえました」

「草薙さんは、神器の声が聴けるのですね。うらやましい…。私は声を聴くことも、解き放つ事もできなかった」

「でも、あなたのことを、とても信頼していたと思います」

「ありがとうございます」

榊の目に涙がにじんでいた。


「それにしても、日本ではあんなこと、ちょくちょくあるんですか?」

「とんでもない!あんな事は稀です。ですが、最近増えていることは確かです。本来は我々のような低いレベルのチームが処理できるような事象ではないんです。我々のランクでは調査まで。即退避して結果を報告、その結果を受けて高ランクの力をもったチームが急行して処理をするんです。それなのに、あの家族を救出する為とはいえ無謀な行動をしてしまった。結果、チームのみんなを危険に晒した。完全に私の判断ミスです。」

「でも、結果的にあなた達が急行していなければ、あの家族は助からなかった。と、思います」

「それもこれも、草薙さんがかけつけてくれたお陰です。本当に感謝しています」

榊がまた頭を下げる


「もう、やめてください!それこそ僕じゃなく、雪椿…彼女に感謝して下さい。本当にみんな助かってよかったです。」

「はい…、そうですね。それから、もう一つ。草薙さんに謝ることが。」

「えっ?!まだあるんですか?」

「はい。恩人のあなたに発信機を付けてしまった。」

「あー、あれ…、ですね。完全にやられました。はは」

「ですが、こうして感謝を伝えることができました。無事退院できましたら。なにか奢らせてください」

「はい!是非とも」

二人は固い握手を握り、一真は榊の病室を後にした





数日後、一真は三条のけんきゅうしつに呼ばれた。

そこには、咲宮耶も居て三条の隣に座り、咲宮耶の秘書の小日向も居た。小日向は相変わらず咲宮耶の後ろでタブレットを胸に抱き控えていた。

三条がタブレットを片手にヤタガラスの適正検査を伝えた

「草薙一真さん。おめでとう!あなたはヤタガラスの適正が認められました。ランクもほぼ全てが平均よりも高く非常に優秀な結果でした」

とても胡散臭い顔でタブレット片手に、手をパチパチしている

一真は一瞬背筋が凍る思いをしていると、間髪入れずに咲宮夜が真顔で口を開く


「あなたには学校へ入ってもらいます」


(が・っ・こ・う?)


一真は訳も分からず三条と小日向の顔を見るが、三条はニヤリと笑い。小日向の視線は冷たい


「えっ?!」


一真の額にひとすじの汗が流れた


・・・次回『黒羽学園』

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