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ヤタノカラス  作者: えるらんでぃす
5/8

神器


「諦めるな!目を瞑れーーーっ!!」



突然の声に戸惑う事もなく咄嗟に目を閉じる。


辺り一面は一瞬にして目映い光に包まれた。薄く目を開けると身体を蝕もうとしていた闇も消え、魍魎達の動きをが止まる。その閃光の中を一台のバイクが孟スピードで駆け込んでくる。バイクから人が飛び降りヘルメットを取りながらこちらに悠然と近寄る




「しっかし、流石は米軍御用達の閃光弾。すげぇな~。大丈夫か?どういう状況なんだ?って、酷いな…?でも、諦めんなよ。その痛みは生きてる証拠だ。歯を噛みしめるんだ。そして、絶対全員生きて帰るんだ。」




特におっさんがヤバいな。今のうちに逃げるなんて無理…か…」




自分たちの惨状を彼はすぐに理解した。


光に動きを止められていた魍魎達がまた動き出そうとしていた。


(このままでは彼まで巻き込んでしまう。なのに、何故か先ほどまで絶望や不安が感じない。彼なら何かしてくれそうな気がそう感じさせていた)




「さすがに、この状況はまずいな…。おじさんのそれ?神器だよな。悪い、そいつを貸しちゃくれないか?」




「うぁ…ぁ…。た…たの…む…」




血塗れの顔で、声にならない呻きを振り絞り、その男が何者かも疑うことなく自分の神器を託す。


見ず知らずの者に、大事な神器を渡すなどあり得ない。なのなに、榊さんは…どうして?




彼は神器に触れる。




「名はなんて言うんだい?」




「ゆ……き…つば、ゲホッ。ゲホッ」




声に出す事が出来ない、そんな榊を包む様に神器が輝き出す




「『雪椿』か…、良い名だ!優しいなお前。この人の事が大好きなんだな…。なら、お前の大好きな人を助ける為に力を貸してくれ」




彼は俺の手から神器を受け取ると、俺達を背にし、両の手で『雪椿』を目の前に突きだし力強く握る。




「雪椿!お前の唄を俺に教えてくれ」




先ほどまで怯んでいた魍魎たちまちが動き出そうとする。




次の瞬間『雪椿』が光輝き魍魎達がまた怯む




《神器『雪椿』からの一時使用者変更申請を確認》




車両の中から神器サポート機器のアナウンスが聞こえる




「ふるべふるべゆらゆらと、いざやひらかん」




《『雪椿』ファーストシークエンス確認》




雪椿の柄が開き、紅色に光輝く石、コアが現れる




《リィーン!》


どこからともなく鈴を打ち鳴らしたような音が鳴り響く




《『雪椿』第二形態へ移行》




刀身が光出し、ガラスが割れるように拡散する。拡散した光の破片が彼の体を中心にグルグルと回り始める


それと同時に彼の体から光る靄が現れる




《『雪椿』セカンドシークエンス移行確認》


《『雪椿』第三形態移行》




「彼を知り、彼と時は過ぎ、安らぎに、凪は揺れ、蕾は咲かず黄昏に、刹那の雫は、赤きかな、白きかな、葦原の嘉祥は今を詠う」




あ、あれは、天極詠唱??




《『雪椿』第三形態への移行を中断》


《神器『雪椿』からファイナルシークエンス移行への申請。認証》


《『雪椿』への光粒子充填を開始》




彼から発する膨大な無数の靄が雪椿のコアに吸い込まれていく




「ふるべふるべ雪椿、ゆらゆらゆらと葦原に」




《『雪椿』光粒子充填を完了》




薄っすらとしか見えないが、雪椿から発せられる光が、薄紅色をした人の姿になる。




《『雪椿』最終形態移行完了》




「凍える伊吹で、咲き誇れ!」


《神器解放》




「絶花っ!!」




キキィーーーーーーーンッ!!




空気が張り裂け、鼓膜をつんざく激しい音が響き渡る


次の瞬間、音は止まり静寂に包まれた


目の前には薄紅色の氷界、一瞬にして全ての魍魎が、禍津鬼までも赤く凍てつき活動を停止する。空気中の水分が雪となり車のヘッドライトにあたりキラキラと輝く。




榊の前で冷気とゆきの契約が榊の前で集まり人の形となる




  ・・・ありがとう・・さかき・・・




それは、耳にではなく直接頭に響く


それは、雪椿の想いの形


それは、榊を優しく抱きしめる




パキン




雪椿の核にヒビが入り、冷気は霧散する。


核の破損は神器の最後を意味する、榊は霧散していく冷気に手を伸ばす、男はその手に核の破損した雪椿を握らせる。




「おじさん、済まない。雪椿は…もう」




男が榊の前で頭を下げると、榊は男の襟を掴む


男は怒鳴られるのを覚悟したのか、両目を強く瞑る。




「ありがとう…ありがとう…ありがとう」




意識が薄れていく榊の目から涙が溢れ出す。






◆◇◆






俺は薄れいく意識を捩じ伏せ、手を伸ばす。


彼は俺の手を握り




「君は?」


「俺は通りすがりのライダーさ!」


「おっちゃん、大丈夫か?」




どこかで聞いたセリフな気もするが、意識をギリギリ保った俺には小さく頷く事が精一杯だ。だが・・・。俺はもう片方の手で彼の襟を掴む




「ありがとう・・・」




彼は何も言わず頷く。


そこへ、激しい豪音が頭上へ急速に近づいてくる。




「げっ!このローター音は・・・、オスプレイだ!」




彼は慌てて空を見上げると、かなりの、悪態をつく。


オスプレイ?小牧基地にオスプレイは配備されていないはず。




「ヤバい!おっちゃん。俺は行くから。じゃあ!」




彼はそう言うとバイクに股がり山中に消えていく。


轟音は真上で止まり、光が舞い降りてくる。


天使か?いや、人か?いや、救援のようだ。


助かった・・・


安堵と共に、とうとう意識が遠のいていく




◆◇◆




ある建物の一室。霧島、立花、神原の三人は副局長の前に立ち、一連の事情を説明していた。




そこへ、秘書の1人が扉をあける。榊が目を覚ましたとの報告だ。




副局長は返事をすると、三人に共に行くかと訪ねる。


三人は迷わず同行すると返事をする。

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