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ヤタノカラス  作者: えるらんでぃす
3/8

ランプの宿



 山道を北へ向けて走ること8分程。

 上下の揺れは少なかったものの、左右の揺れはさすがに胃の中が出そうになった。

 後部座席がどうなっていたかは言うまでもない。


 左手に細い脇道か有り、少し行くと開けた場所に出る。

 ちょっとした空き地になっているここが駐車場なのだろう。

 ここに車を停め、徒歩でもう少し行く様だ。

少しフラフラになりながら軽快に歩きだす神原に着いていく。


 ん??気になる言葉が書かれた立て札を気にも止めず、神原はスイスイと歩いていく。足がおぼつかない面子は着いていくのがやっとである。


 「なぁ、神原。そこの立て札には【日帰りのお客様は必ず予約をして下さい】と書いてあったぞ」


 「はい!そこは大丈夫です!こんなこともあろうかと、ちゃんと予約してあります!!」


 はっ?


 俺の顔が3秒ほど固まったのは言うまでもなく、立花に肩をバンバンと叩かれてしまった。もう、どうでも良くなってきた。


 少し歩くと目的の建物が見えてきた。なんと言うか、立派な山小屋というイメージで、とても趣があり。有り体に言ってレトロだ。

 ここだけ、昭和から時間が止まっていると言ってもいい。

なかなかどうして、個人的にこういった建物は好きな方だ。

 娘達もテンションが高く高評価のようだ。

俺も久しぶりにテンションが上がる。


 先ほどまでの荒んだ気持ちが一瞬で晴れていく。すると、突然視界にカメラを持った男性と鉢合わせる。男性はすれ違いざま、こちらに挨拶をしてくるのだが、挨拶を返しながら男性に気づかなかった自分に反省の色を感じた。


 神原がガラガラと引き戸を開ける。

 続いて中に入ると、天井や至るところに数えきれないランプ達が暖かく出迎えてくれる。


 手続き等は神原が一切仕切ってくれている。慣れていると言うか、なんと言うか、用意周到すきるだろう。

 俺は靴を脱ぎ、居間の様な場所で、すでに腰かけている別の客に挨拶をしながら腰を下ろし寛ぐ。


 他の者も、こういった場所は珍しいらしく、霧島に至っては先ほどの酔いも忘れて辺りを見回している。


 一ノ瀬にはこの効果は通じないらしく一切興味なく、靴も脱がず不機嫌な顔で携帯端末を操作しだした。


 神原、立花、霧島の3人はすぐさま温泉へ直行する様だが一ノ瀬は入らないらしい。


 宿のエプロンを着けた青年に俺は風呂を利用しない事を告げると、暖かいお茶を持ってきてくれる。青年の話しだと、3人だと交代で湯船につかれないらしく、3人は交代で入るらしいと教えてくれた。

 青年が出してくれたお茶が、ひっくり返りそうだった

胃に滲みる。なかなか美味い。


「ここはいいとこですね」

「はい。空気も川も緑も全てが澄んでいて、心と体の両方が浄化される感じがします」

「なるほど」

「ただ、ここは地上波が届かないので、衛星に頼らないと通信が出来ません。スマホが使えないのが難点なんです」

「それは、少々不便では?」

「でも、それだからこその良さがあるんだと思います」


 確かに、世俗から隔離されるのではなく、開放されるからこその癒しなのかもしれんな。

 

 一ノ瀬は電波が悪いと一旦車両に戻ると出で行った。多分、GPSレシーバーを取りに行ったのだろう。


 現在ここには、俺が腰掛けたテーブルの向かいに、初等科に上がった位のお嬢さんを夫婦で挟んだ三人家族と外の丸太を切った椅子に腰掛け楽しく会話している三人組の女性達、先ほどすれ違ったカメラを持った男性が滞在しているらしい。

 滞在といっても宿泊できる人数は少ないらしく、本日のお泊まりは外で黄色い会話をしている大学生らしい女性達だそうた。

 女子の会話を聴きながら、2杯目こお茶をすする。

 しかし、こうした素敵な空間に出会えるとは思わなかった。今度は、仕事の合間でなく、休日にゆっくりと来たいものだ。神原には感謝だな。


 「あの…ぅ」


 向かいに居る家族のご主人がチラチラとこちらを気にかけていて少し気味悪かったのだが。

 タイミングを見計らって声を掛けてきた。


 「わたしの顔に何か付いていますか?」

 「い、いえ。失礼ですが、あなたは陸上自衛隊中部方面隊・榊一等陸尉ではありませんか?」


 ほう?懐かしい肩書きだな、鴉はその職務上自衛隊や警察等の各省庁と連携して活動する事が多く、指揮系統に配慮して各階級を兼任している事が多い。


 「それは昔の肩書きで、今はただの予備役です。貴方は?」

 「失礼しました。わたくし、小牧基地救難教育隊所属、特殊救難員・紀村吉嗣一等空曹であります」


 空自救難隊。救助のスペシャリストであり、自衛隊の中でも特に厳しい訓練を乗り越えた一握りの精鋭で構成された特殊部隊。その中でも特に危険な場所へ向かう特殊救難員。瘴気用特殊装備を身に纏い、我々鴉しか行けない場所へ救助に向かう、本当の意味でのスペシャリスト。彼らに救助された鴉も少なくない。


 彼は、座ったたまま佇まいを正し、軽く敬礼をする


 「こんな場所で敬礼は止めましょう」


 俺はその敬礼を軽く手を差し出して止める。


 「はっ!そうでした。失礼しました」

 「で、その紀村さんが何故俺なんかを?」


 実は、記憶力は良い方なんだが、いかんせん覚えがない。  

 

「9年前、あの大震災の日。実は私の部隊も災害出動しました。救難活動中に魍魎に襲われ、蔓延する瘴気の中、魍魎と戦うも我々の火器では全く歯が立たず、全滅の窮地に陥いりました。絶望で諦めかけた時、榊さんのチームに助けられたのです」


「ああ、あの時の」


「あの時、榊一尉の激を我々は一生忘れはしません『眼を開けろ!痛みを噛みしめろ!その激痛は生きてる証だ!生きてるなら最後の最後まであきらめるな!全員生きて還るぞ!』我々は渾身の力で叫びました」


「悪いな。あれは、自分たちに言い聞かせた言葉だったのさ。実は俺達も必死だったからな」


「それでも、我々は救われました」


 なにやら、こっぱずかしいな。

あの大震災の影響で、瘴気があちらこちらで沸き出し、多数の魑魅魍魎化した人達を浄化したり、禍津鬼達との凄まじい戦闘が至るところで起こり、まさに地獄絵図だった。一般人だけでなく、警察、消防、自衛官、我々鴉にも大多数の死傷者をだしてしまった。

 

 本当に必死だったのさ。


「実は、八咫鴉の方達を実際に見たのはその時が初めてでした、その晩、私は病院のベッドの中で悔しくて悔しくて涙を流しました。救わなければならない立場の人間が逆に救われる側にまわる。無力な自分が情けなかったのです。その後、色々と調べました。調べれば調べるほど、自分に鴉の因子が少しでもあれば……と。実は、妻も元自衛官なんです。そして、同じ持たざる者として、同じ悔しい思いを持っていたんです」


 こればかりは、神々の悪戯か、運命なのか、我々にもわからん。それこそ神のみぞ知るべしだな


 そういえば昔。

 

 その神の領域に手を出した研究者達がいたな。持たざる者に因子を強制的に植え付ける。小さな子供達を集めて非人道的な実験をしていたな。

 だが、そう言う実験は大抵が失敗するのか、研究所周辺での魍魎の大量発生と事故が重なり研究者と子供達は全員死亡……。いや、行方不明が1人居た。

 

 もし生きていれば、この紀村一尉と同じ位か少し若いか。

 確か、副局長は今だに探し続けていると言っていたな。


「ところが、中学入学後の定期検査で鴉の因子であるマナが検出されたのです」


 スリーピングファクター(眠れる因子)か。


 とても希だか、少し大きくなってから現れる事がある。

その場合、マナがとても強くなる傾向にある。


「我々が無しえなかった事を、この娘がはたしくれます」


 2人は娘さんを愛おしそうに抱きしめる。幸せなのか、不幸せなのか、持ってしまったがゆえに、この娘は茨の道を進むかもしれない。俺達は常に危険と隣り合わせだ。2人には悪いが、この娘が不憫だと思ってしまう。


「秋から特別中等科に編入する事が決まり、今のうちに三人で思い出を作ろうと考え、どこかないかと調べていたのです、すると、この娘がどうしてもここに来たいと。榊一尉に出会えたのにも何か縁があるのかもしれません」


 思わず、娘の顔をまじまじと見てしまう。予知?まさかな。苦笑いで答えるしかない。実は、俺にも娘が居る。鴉の因子を強く受け継いだのか、これがまた父親に似ず優秀ときてる。

 しかし、優秀であればあるほと、クエストは危険なものになる。昔とは違い、しっかりと安全マージンを確保してはいるが、親はいつも心配する生き物だからな。


「良かったら変わりのお茶をどうぞ」


 俺はため息をつく。幸せそうな三人を見ながら少しゆったりとした時間に身を委ねていると、宿の青年が良いタイミングで3杯目のお茶を入れてくれる。

 なかなか落ち着いた時間が過ぎていく。

すると、ガラガラと音をたて、男性が1人入ってくる。

先ほどすれ違ったカメラマンだ。


 外はだいぶ日が沈んできているな。


 同時にとても不機嫌そうな顔をした、一ノ瀬も戻ってきたた。

カメラマンの男が、宿の青年と難しい顔をしながら話しをし始める。


「榊さん。電波悪いから中継ドローン飛ばしてきた。でも、まだ繋がらない。GPSレシーバーもい持ってきた」


 一ノ瀬はゲームが出来ないのか、とても不機嫌だ。まだこういう自然の癒しや奥深さの良さはまだ解らんのだろう。

 これも、『今時』なんだろうか。

 ゲームオタクに、癒しオタクに、大酒飲みに。このチームは可笑しな集まりだな。

 ん?霧島は・・・、まぁ、なんだ、ビン底の眼鏡が似合う?のか?


 俺は何を言ってるんだ。まったく。


「そういえば。榊一尉は、もしや任務でこちらに?」

「あっ……、はい。そうなります」


 一瞬、返事に困った。任務と言っても、調査等のクエストの場合、秘匿する必要もないのだが、任務中に温泉で夕食とかはさすがに。


「ご心配にはおよびません。皆さんにもそういう時間は必要ですから」


 一ノ瀬を見ながらのフォローがなんとなく身に滲みるな。

話しが終わったのか、カメラマンはお帰りのようだ。

 俺達に気をつけて帰るようにと、一言そえて挨拶していった。

風呂場の方から賑やかな声が聞こえてくる。丁度、三人の学生さん達も外から戻ってきた。

 賑やかになったところだが、俺は宿の青年にカメラマンとの話しが何だったのかを訪ねる。


「何かあったのですか?」

「ああ。先ほどの方は野鳥の観察をするカメラマンさんなんですが、鳥達が全く居ないそうなんです。それどころか、他の動物の気配もしないそうで。今日はもうお帰りになられるみたいです」

「なるほど……」


 確かに妙だな、先ほどまでの穏やかな気持ちが少し不安と重なる。


「榊さ~ん!夕飯の支度が出来たそうです。行きましょ」


 ラムネを片手にはだけた姿で…。解放感漂わせ過ぎだ。俺の緊張感を返せ。


「榊一佐!では、私共はこれにて失礼します」

「あ、ああ。次は……。いや、帰りは気をつけて」


 と、言いかけたが。俺が教導官をしている話しをすると、また長くなりそうな感じがしたので止めておいた。

 いつの間に仲良くなったのか、うちの娘らと紀村一尉の娘さんが手を振りあっている。


 宿の青年の案内でとても細く急な階段を下りると膳が8人分用意されていた。先ほどの風呂に行った三人の学生さん達とここで共に膳を囲むようだ。

 俺達は食事を頂いたら、宿を後にするが、彼女達はこのままこの部屋で泊まるらしい。

 早速頂くことにする。今日はイワナが全くいなかったらしく。宿のご主人が申し訳なさそうに説明をしてくれる。

 そんなに、美味いならまた来なくてはな。

灯りもランプだけで、少し薄暗いがとても情緒があって、色合いがとてもいい。


 そう、浸っていたいのだが……


 先ほどから神原がうるさい。

温泉のなんたるかを語りまくって、ここの宿の温泉を大絶賛している。

 その横で、立花はビールに手をかけているのを見て焦ったが、さすがにノンアルコールで安心した。

 霧島は黙々と食べ、一ノ瀬はひたすらタブレットをいじっている。

 少しすると、学生さん達も、戻ってきて、盛り上がっている、しかし、お前ら、俺を話しのネタにするのだけは止めてくれ。


「やっと衛星にリンク出来た」


 一ノ瀬が口を開くと同時にそれはけたたましく鳴り響いた。

突然の緊急アラーム。全員の顔に緊張感が走る。


 俺達は迅速につぎの行動に移る。


 立花と霧島は車両に向かい。一ノ瀬は端末を使い状況を確認、神原は宿の人達を一ヶ所に集めるよう、宿の人と話しをする為に駆け上がる。

 俺も、先ほどの部屋に戻っていると、自分のスマホが鳴る。緊急通信?副室長?


「榊さん?榊さん?!やっと繋がった。今、そちらに向かっています!何があったんですかっ?!」

「副局長?今日は御前会議で京に居るはずでは?」

「何を言ってるんですかっ!!その周辺で瘴気濃度が急激に上昇。詳細なデータは送られてくるのに、あなた達とは連絡が取れないし!」

「す、すみません……」

「後程、詳しく事情は聞きます。いま、私のチームと、支局からのAクラスチームがヘリで救援に向かっています。到着するまで、安全な場所で動かず待機していて下さい!決っしジジ……う……ごかなジジジ……い……くだ……ジジジ…」


 通信が途切れてしまった。


 スマホには圏外マークがついている。こいつは『ダーククラウド』?濃密な瘴気が雲の様に空を覆う現象。かなり、不味いな。ここにゆったりしているうちに状況は一変したようだ。一ノ瀬がタブレットで衛星から収集した情報を見せてくる。


 瘴気濃度が異常に高い場所は先ほど測定器を設置した近くで、丁度道を塞ぐ形で密集しているのが解る。何かに引き寄せられているのか?これでは町に戻るのは危険。間違いなく、あの瘴気の中は魍魎で溢れているはずだ。ならば、比較的安全なこの場所で、救援を待つ方が得策だな。


 『チェンジオーバー』

 クエスト難易度が突然跳ねあがる。このような時は人命、特に自分たちの生還を優先させる行動を取り、決して英雄的行動はしない。安全マージンを取っている俺達低ランカーにとって、最も死亡率が高いのがこのチェンジオーバー。生きて帰還することだけでクエストクリアになる。

 

 体を震わせ恐怖に顔がひきつっている宿や学生の人達に、俺は自分にも言い聞かせる様に神原と共に現在の状況を説明する。

 全ての戸締まりをし、全員を調理室に集める様に行動して貰う。

 そこへ、細い道をバックで車両が入口の前まで突っ込んでくる。

中から慌てて降りてきた霧島が、もの凄い勢いで宿の中に入ってくる。


「榊さん!不味いです」

「ああ、瘴気濃度が急激に上昇したな」


 俺は皆を不安にさせない様に、平静を装おって返事をする


「それだけでは無いんです!救難信号が出ているんです」

「なんだって?!」


 平静を装おっていた顔がひきつる。


「一ノ瀬!救難信号の発信地はっ?!」

「瘴気発生中心地点です……」


 まさか!救難信号を出せると言うことは……紀村さん家族か?


「も、もしかしたら。さっきの理花ちゃん達じゃあ」

「さ、榊さん?」

「どうすれば……」


焦りが一瞬にして顔色に出る。

間違いなくランクオーバーだ。

俺はどうしていいか解らなくなる。

この宿の人達も危険である事に変わりはない。

それに、俺とこの娘達だけでは危険過ぎる。

英雄的行動は出来ない。


 いや、俺は教導官だ!最善の判断を……判断を……


「榊さん。榊さんっ!」


バン!と肩を叩かれる。立花だ。

我に帰ると立花がニコニコと笑っている。

他の娘達も、顔は強張っているが。

熱い眼差しを送ってくる。


「俺達は鴉だ!闇から助けを求める者を放っておけない」


 皆に視線を1人づつ返す


「彼は自衛官だ!そして、俺達が鴉である事は知っている。救難信号を出したと言う事は、俺達が来ると信じて今を耐え、家族を守る為に戦っているはずだ!」


 皆が、宿の人達も手を止め固唾の飲んで聞いてくれている。

俺も弱い人間だ、俺も言葉が欲しいんだ


「榊さん!きっと支局からの救援は間に合わない。助けられるとしたら、あたしらしか居ないさ」


 立花が男前な事を言ってくれる。本当に頼りになるな


「立花の言う通りだ。低ランカーは英雄的行動をしてはいけない。俺達が闇に喰われれば、それは新たなる脅威になるからだ。しかし、俺達鴉は決して同胞を見捨てない。あそこにいる娘さんは来月、鴉の特殊初等科に入学する事になっている。多分、奴らが狙っているのは鴉因子を持ったあの娘だろう。あの娘が取り込まれたなら、脅威はもっと増す事になる」


いや、同胞とか関係ない。助けられる可能性が少しでもあるならば、誰も見捨てたりしたくない。


「私達、頑張ります」

「助けましょう」

「ん!」

「きっと理花ちゃん待ってます」


 皆が一様に答えてくれる。それを聞いて少しだけ気が落になる。だが、状況が良くなる訳ではない……


「でも、私らじゃあミイラとりがミイラになっちまう。でも・・・」


 そう、まさにその通りなんだ、みんなを少しでも危険に晒さない為にも、何か良い作戦を考えなければ……


「とっとと行って!パッと助けて!!さっさとずらかる!!!」


 立花!お前の頭は単純過ぎだ!


 だか、あながち間違っちゃあいない。町まで行けば、時間稼ぎの為の強力な防護フィールドがある。救援まで時間稼ぎは出来る。それに、グダグタ考えずに済む。今は時間との勝負だ。

宿の人達も承知をしてくれる。

 

 宿の人達には、何が近づいても決して外に出ない様伝える。幸い、ここにはランプが沢山あり、暗闇でもランプの光は優しく外に漏れにくい。因子を持つものも居ないし、じっと息を潜めていれば見つかる可能性は低いだろう。


 長くても一時間ほど我慢できれば救援が来る。

それまでの辛抱だ。念の為、保険代わりにとフィールド発生装置を一つ渡す。使い方を神原が簡単に説してくれる。


 俺は用意してくれた鴉羽織を着て『雪椿』を手にする。

そして、宿の人達に別れを告げ宿を後にする。


「全員簡易装備を着装」


 全員が半透明のポンチョにゴーグル、迷彩柄のフェイスマスクとグローブを装着する。彼女らが着装するのは瘴気から身を守る為の最低限の装備であり、活動時間はとても短い。基本的に低ランカーは高濃度域での活動は主眼になく、あくまで一時的なものだ。

 


「全員乗車!これより要救助者を確保し、速やかに南方の町まで退避!その後、防衛陣を築き支局からの救援を待つ」


「了解!!!」



次回、『禍津と神器』

・・・闇は容赦なく人を蝕む・・・

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