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ヤタノカラス  作者: えるらんでぃす
2/8

山中にて紹介

 

令和2年 夏 岐阜県付知峡近郊 昼



 「………さん。…さん、榊さん!起きてください。そろそろ目的地に到着します」

 「ん?あ、あぁ」


 助手席でうたた寝をしていると、突然、運転席から肩を何度も叩かれ起こされる。なにやら、とても大事な夢を見ていたような、違うような、不思議な感覚の中、急に現実へと引き戻される。


 俺の名は『榊 茂雄』内閣特務調査管理局。通称『ヤタガラス』の一員だ、

『ヤタガラス』闇から国家国民を守る為の国家機関。一応国の公務員ではある。

 

 戦国時代、闇に堕ちた織田信長のせいで、闇の力による暗黒の時代が始まろうとしていた。それを阻止する為、陰でバラバラに戦っていた光の能力者である鴉達も抵抗しきれなくなる。

 その信長を、鴉の一人である雑賀孫一が、織田家重臣であるはずの明智光秀の力を借り本能寺で追い詰めた。世に言う本能寺の変の正体だ。しかし、肝心の信長は討てず、雑賀孫一と共に忽然と姿を消してしまったと言う。

 その後、史実通り光秀は逆賊として討たれ。秀吉が天下を取り闇の脅威は終息するかに見えた。だが、脅威は収まることはなく、各地で瘴気は湧き出て、至るところで魑魅魍魎が跋扈し時代は豊臣から徳川へと変遷していく。

 そこへ、二人の人物が現れる。1人は、徳川家康公陰の宰相であった天海大僧正。帝と幕府の架け橋になり神社仏閣の力を合わせ。もう1人は家康の側室の1人で阿茶の局。彼女は各地に点在した鴉達を一つに纏め、能力や武具を体系化する。

 二人は共に協力し、帝と幕府の庇護の元、堅固で強大な組織を作っていく。この二人はヤタガラス中興の祖と呼ばれた。天海僧正に力はなかったらしいが、阿茶の局は強力な能力者だったらしい。


 江戸時代、明治維新、産業革命を経て、組織は更に頑強となり、能力も進化していった。それに伴い施設や装備も近代化し、進化を続け今に至る。

 

 一応、一般人には周知されてはいるが秘匿部分も多く、ちょいと怪しい政府の機関ってな訳だ。

 それでも、人員は決して少なくはなく、ヤタガラスの能力に強さや種類等違いはあるものの、特別な例外を除き、ほぼ先天的であり、生まれた瞬間に適正が有るか無いかは決まっている。

 

 その適正は保健所で行われる産後6ヶ月検診の時に全員が調べられる。

 その適正とは何か?

 

 闇の浸食に対しての抵抗力の有無。それがなければ、そばに近づく事すら出来ない。

 適正有りと判断された者は、4歳から12歳までを特定の保育機関と小学校に通い、一般と同じ基礎教育を受ける。

 

 小学校を卒業すると、一定の潜在値を越えなかった者は、一般の公立進学校に進み政府関係の国家公務員又は地方公務員への道が決まる。一定の数値を越えた者は、全寮制中高一貫のヤタガラス特殊養成学校に通う事になる。

 そこで、各々適正に合ったクラスに分かれカリキュラムを受ける。資質と努力による所も有るが、全てが戦闘員になる訳ではなく、高等課程を修了するまでに適正に合った、局の職員へと行く者も多い。

 少なくはないとは言ったが、実際に現地へ赴き、調査をしたり戦闘や浄化を行える者は少ない。

 

 そういった一部の力ある者はランカーとなるための様々な特殊訓練を受ける事になる。

 在学中は研修生としてランカーチームに混ざり実地ての訓練も受ける。大抵は高等科3年目で研修生になるのだが、ずば抜けて能力の高い者は高等科に入ってすぐ研修生となる者もいる。まぁ、そういうパターンは現役ランカーチームからのスカウトを受けれるかどうかによる。優秀な雛は早くから目をつけられると言う訳だ。

 命懸けだからこその実力主義な組織であると言える。

 卒業後4年以内でBランクに合格出来なければ研修期間自動的に終了し、普通の公務員への就職になる。この時点で警察や消防、自衛官になる者も多い。在学中既に必要な訓練を受けているので、改めて警察学校や防衛大学に入る必要もなく、幹部への道も十分開けている。


 何故、この期間しか鴉としての試験が受けられないのか?

それは、一般的に鴉の能力がほぼ二十代中頃で固まり、その後徐々に低下していく者が多いからだ。もちろん、例外はいつの世にもあるのだが、死と隣り合わせが常であればこその難しさと言える。だが、一旦研修生としての資格は無くなっても追試験を受ける事はできる。


 ランクはCからSまであり。Cは研修生、Bランクから晴れて鴉と呼ばれる。ランクによって受けられるクエストには制限がある。まぁ命大事にだが、クエスト難易度が上がれば上がる程、報酬も上がる訳だ。このシステムがよくあるゲームやファンタジーなお話しの元になったのは、また別の話しだな。


 そして、このチームは色々と問題を抱えた者の集まりであり。俺はその教導管理官だ。管理官なんて大層な肩書きがついちゃいるが。所謂、現役を引退したロートルが先生になるっていう典型的なパターンだ。

 

そして、後ろの座席でギャアギャア叫んでる3人娘達の教官である。


 しかし…

 どんな悪路を走っているのか、体が小刻みに時に大きく揺れる。右に左、上に下に、壊れかけの絶叫マシンに乗せられている。

 どれだけ田舎道を走っているのか、さすがの俺も声が出そうになる。なぜ、絶叫マシンなのか?揺れと共に3つの悲鳴やら、うめき声が、後ろの方からから聞こえてくるからだ。



「ごめんなさい!ごめんなさい!お尻が痛くて、もう限界です!!」


 後部席の右側で、あまりの揺れに泣きながら大声で訴えているのが、『霧島(きりしま) (れい)』21歳

 父親はかの外務省大臣。そして、南の名門霧島本家の一人娘。名門の名に恥じぬ能力はあるのだが、真面目な性格で引っ込み思案、能力は高いが、性格が災いして実力が発揮できずにいる、典型的なタイプ。髪はベリーショートで身長は4人の中でもずば抜けて高くスレンダー。モデルのお誘いが多々あったらしく、一度父親が性格を治させる為に無理やりやらせたらしいが、緊張で撮影中に吐いたってのは業界でも有名な話しらしい。研修生としても最後の年になる。クラスはガード。



「きゃ~!きゃー!いゃ~っ♪」


 後部席の左側で、この揺れを絶叫マシーンに乗っているかのように、笑笑と叫んでいるのが、『神原(かんばら) 柚葉(ゆずは)』17歳。

 富士総本山浅間大社の分家。浅間の分家は多く各地に散らばってはいるが、家各は本家に準ずるもので、霊峰富士の管理を古くから担う名門中の名門だ。本人は名門の自覚を全く持っていないらしい。何故か、父方の富士姓ではなく、母方の神原姓を名乗っている。髪は顎の長さのショートボブ。いつも明るく天真爛漫を絵に描いた向日葵の様なな性格で、このチームのムードメーカー。それでいて、しっかり者だ。さすがは8人姉弟の一番上の長女って訳だ。クラスはメカニック。



「…吐ぐぅ…うぅぅぅ…う」


 後部席の真ん中、真っ青な顔でエチケット袋に顔半分を埋め、辛うじて吐かずに頑張っているのが、『一之瀬(いちのせ) 美甘(みかん)』17歳。

 12歳の時、両親を共に事故で亡くした。その事件以来、心を閉ざしてしていたのを副局長が養女として引き取った。高等科に入りすぐ研修生としてチームにスカウトされた。親の七光りではなく、実力で研修生となった天才ってやつだ。しかし、コミュ障が災いし、短期間でチームを転々として今に至る。副局長が言うには『うちの娘はお年頃でツンデレなだけよ…』らしい。ただの親バカだな。クラスはウィザード



「あっはははは♪後少しの辛抱だ。みんな頑張りな!」




 運転席で三人の反応を楽しみながら、この悪路を悠々と運転しているのが、『立花(たちばな) 響子(きょうこ)』26歳。

肩下まであるストレートの髪を後ろで一つに結び、お洒落を全く感じさせる事がなく、性格はなかなか豪胆だ。ご先祖さまが戦国時代、無双の猛将『立花宗茂』って言うのも頷ける。しかも、かなりの酒豪ときてる。オフの日は1日酒浸りらしい。何度も誘われてはいるが、俺の方が早々に潰れちまうだろう。この中で唯一元Bランクなんだか、暴力事件を起こして降格と言う経歴の持ち主である。クラスはドライバー。


家柄だけなら間違いなくAランク以上のチームだ。

そうこうしてるうちに、目的地に近づいているのだが………


「お前ら!喋ってると舌噛むぞ!」


(おっと)


 車両が左側に大きく揺れる。突然カーブの向こうから軽トラックが現れ正面衝突寸前になる。しかし、さすがはうちのドライバー、間一髪で大惨事にはならなかった。

だが、すれ違い様で異臭が鼻をつく。軽トラックからのようだ。そのトラックを目と体で後ろに追う。すると、先ほどの一撃で後部座席の2人が俯いて顔を真っ青にしている姿が邪魔をする。

 かなり気になるのが、2人の情けない姿に気が散っていく。


(はぁ………。先が思いやられる)            


「さて、この辺りだな」


気を取り直し、助手席の前部に備付けられたGPSを確認しながら弥生に適当な場所で止まるよう指示をする。するど、車5.6台程は止められる、開けた所にでる。立花は広場の中心に車両を停める。


「よしっ!全員降車!」

「霧島は音浄結界の準備。神原は測定器の設置。一ノ瀬は測定器と衛星をリンクさせつつデータ収集。立花は俺といっしに周辺の調査」


 霧島のクラス『ガード』はあらゆる結界や浄化能力を駆使して、瘴気の浸食を防いだり浄化を行う結界師だ。


 神原のクラス『メカニック』は各種機器の作成や修理の専門だが、戦闘班が使用する、疑似神器のメンテナンスもこなす。


 一ノ瀬のクラス『ウィザード』は各種機器のソフトウェアでの管理、疑似神器の出力制御等のサポートをする。


 立花のクラス『ドライバー』は各種移動車両の運転や整備、ドローンの操作等たが、戦闘のサポートも行う。


 そして、俺のクラスは『レンジャー』だ。偵察がメインなんだが、一応戦闘班でもある。


と、まぁ。詳しい事は学園編で紹介されるかもしれんな…。

ん?俺は何を言ってるんだ?……


………さて。

 我々が何故こんな山奥まで来たのかと言うと。3日程前、衛星からの情報で安全域のはずのこの場所で、微弱ではあるがが、瘴気濃度の急激な上昇を検知した。その確認として直接調査に来た訳だ。

 あくまでも、俺たちの仕事は調査。調査した結果を本部と東海支局に伝える。結果次第ののだか、そのデータを元に処理班が来て浄化作業が行われる。この娘らにとっては、今回のクエストはBランクに上がる為の試験も兼ねてるんだが、先ほどの変な夢のせいなのか、何故か胸騒ぎがする。

 

「神原!疑似神器をいつでも使用可能にしておいてくれ」

「解りました!そのぉ……『雪椿』もですか?」


 その『雪椿』の一言で、一瞬みんなの顔に緊張感が走る。

『雪椿』俺が所有する神器。脇差し程の長さの太刀形神器だ。Aランク以上と一部のBランクのみが所持を許されるヤタガラス最強の武具。名持ちの神器は疑似神器とは違い意志があり、所有者を選ぶ。そう、神器に選ばれた者のみがSランク以上になる事ができる。これでも一応Sランクに手を掛けたんだが……。


例え神器に選れても、その力を解放する事が出来なければSに上がる事はない。俺は、『雪椿』と出会ったのが遅すぎた。俺達ヤタガラスは30代前半をピークに力は衰えていき、40歳を過ぎると急激に力を失っていく。


「あぁ…、頼む。それから鴉羽織もだ」


 俺は少しいいよどむ。名持ちの神器はとてつもなく強力だ。神器は誇り高く、力の無い者には従わない。それなのに、こんな50も過ぎたポンコツに愛想もつかさず、いまだに主と認めてくれている。一度も、今まで一度も力を解放してやる事もできない。


「榊さん、準備完了です」


 準備を終えた立花が俺の顔の前で手を振る。

しかし、今日はよく物思いにふける日だな。


「あぁ…すまん」


「最近お疲れ過ぎですか?それとも、娘さんの機嫌ご悪いとか?あはははは」


「ばぁーか!んな事あるか」


 半分はお前らが原因なんだよ。生意気な事を言う、立花の頭に軽く拳骨を入れる。立花が舌を出し笑う。全く、酒癖さえ悪くなければ、いい女だと思うんだが。


「用心に越したことはないと思い色々と考えていたんだ」


「そういえば、最近はクエスト難易度のランクオーバーの発生率がはね上がってるみたいですね」


ランクオーバー。

ランクに合った簡単なクエストのはずが、突然状況が急変する。CからBへ、1段階。CからAへ。2段階も上がる事もあるダブルオーバー。

生還率は3割。ダブルオーバーに至っては1割を切る。

クエスト制にして危険度を管理しているとはいえ、こういう事は起きる。しかも、最近は頻発に起きている。実際、鴉の死者の大半はこのランクオーバーに拠るところが多い。


「そうだな。姫、いや副局長も頭を抱えていたしな」

「あ、あの鬼の副室長が!」

「立花!美甘の母親だぞ。耳に入ったらどうする?」


副局長も、くしゃみしてるんじゃないか。

けたけたと笑っている神原の向こうで、霧島の顔が青くなっている。


「一ノ瀬!俺達の位置を常にトレースしておいてくれ。会話も映像も常にオンにしておく」

 

 返事はなく、ただ頷くだけだ。聞いていたのかいないのか、鬼の室長の話しには興味無さそうだ。相変わらず無愛想な娘だが、さっきの車酔いもすぐに治る訳もないか。


「行ってらっしゃーい」

 

 神原は元気に手を振っている。その横で、青い顔をした霧島がバタバタと装置を設置している。

 四人とも能力は申し分ないんだが。性格というか、なんというか。


「行ってくる」



 車がギリギリ通れる程の少し踏み均された道を歩く


「榊さん、この辺りなにかおかしくないですか?」

「立花も感じたか?虫や動物等生き物の気配が全くしない」

「あ!それです。なんか森が死んでる様な」


 流石は元Cランクだな、この娘はレンジャーにも向いてるかもしれんな。俺たちは、辺りを更に警戒しつつ先を行く。すると少しづつ異様な匂いが空気に混ざってくる。それは徐々に強さ強さを増し鼻につくようになる。先ほど軽トラックとすれ違った時に感じた匂いだ。


「榊さん、この匂いヤバいね」

「ああ」


 俺達はポーチからフェイスマスクをだして装着する。立花は瘴気ゲージを取り出しスイッチをいれる。不安が胸を締め付けるのを感じながら。歩みを進めるとそれは現実となる、先ほどの車から降りた場所ほどではないが、少し開けた所にでる。


「うげっ!」

「………くっ」

 

 2人して思わず口に手をやってしまう。

目の前には、おびただしい数の犬や猫の腐敗した死体が山積みになっている、まるで、ゴミ袋を捨てる様に。


「悪臭の原因はこれか。成る程、生き物の気配がしないはずだな」

「榊さん…、この付近の瘴気濃度がヤバい」

「そりゃ、高くもなるな」


 こんな、苛立ちを覚えたのは久しぶりだ。人の死体が混ざっていないか確認したいが、この惨状ではとても難しい。

だが、このままにしておけば、魍魎が発生するのは時間の問題だ。俺達の会話を聞いていた神原が心配そうに声をかけてきた。


「お二人さん!大丈夫ですか?」

「体力ゲージを半分程持っていかれた気分だ」

「えーっ!」

「霧島!すまんが疑似神器を装備してこちらに来てくれ!」

「は!はいっ!わかりました。浄化ですね」

「そうだ。それと神原!小型焼夷弾も霧島に持たせてくれ」


 霧島は10分と経たずに到着した。その間、2人で手分けして異臭と戦いながら、周囲に他に無いか、人の死体は無いか、調べた。人の死体が有ると、もっと厄介な事になる。


「浄音発動」


チリィーン。チリィーン。チリィーン。


 霧島の浄化作業が始まる。それと同時に小型焼夷弾を死体の山の上へ投げる。すると、激しい炎が包み込む。


 浄化作業が進む中、俺は手を合わせ祈る

(すまんな、お前達。一部の人間の腐った欲望でこんな事に。願わくば次生まれ変わる時は、善き主に出会えるように)


 異様な黒煙を鈴の音が白い煙に変えながら巻き上がっていく。そして死体は荼毘に付し灰となっていく。今の俺達にはこんな事しかしてやれん。後で、改めて浄化作業部隊が供養しに来るまでは我慢してほしい。

 

 車に戻ると、涙を流して帰ってきた霧島に神原が声をかけ抱きあっている。霧島には悪い事をしたな。


 「榊さん。さっきの軽トラですね」

 

 立花の顔は静かで冷静だが、かなり怒ってい事が声の微妙な震えで伝わってくる。


 「そうだな。間違いないだろう」

 「ドライブレコーダーに映像が残ってるので、状況と映像を支局に送っておきます」

 「ああ、そうしてくれ」


 ま、俺もかなり怒っちゃいるがな。支局が徹底的に洗いだして、きっちり落とし前をつけてくれる事だろう。


 「榊さん。さっき、一瞬急激な瘴気濃度上昇を検知したんですが…すぐに収まりました。今は若干高い数値ですが、安定しています」


 神原が報告している隣で、一ノ瀬が頷いている。神原が代弁しているんだろう。一瞬数値が上がったのは、浄化作業中の時だろう。時間が微妙にずれているのが少々気になるが。

 しかし…


 「簡易結界も測定器の設置も完了しましたっ!」


 神原が、やけにニヤニヤしているな。誉めてほしいのか?


 「うん。ご苦労様、さてこの後だが…」


 まだ、ニヤニヤしてこちらを伺っている?

 はぁ…。何かあるな。


 「で、何かあるんだな?」

 「はい!この後は、一旦南の町まで戻って観測を継続するんですよね?」

 「ああ、そうだ」

 「では!そ・の・前に!この荒んだ心を癒しましょ~!」



 満面の笑顔で、後ろに隠し持っていたタブレットを前にだすと俺に周辺の地図を見せる。


「実はこの先、少し行ったところにですねぇ~。エヘヘ~」

「わかったからもったいぶるな」

「隠れた秘湯があるんです!たった一軒の温泉宿なんですが、ランプの宿とも呼ばれて、とっても素敵な温泉宿らしいんです。日帰りでも温泉に入れるそうです!これは是非とも行きたいと思いませんか!?」

 

 神原は事癒しに関しはかなりうるさい。しかも、大の温泉好きときてる。はぁ―、このクエストは一応昇級試験なんだが…。


 「しかしだな…」

 「行きましょーっ!!」


 間髪入れず、被せてきたな。霧島と立花からの視線も痛い。一ノ瀬は―。我関せずか。まぁ、先ほどの惨状を見た後だ、癒しも必要か。


 「わかった。許可する。但しあまり長居はせんぞ」

 「はぁーい♪」


本当に解っているんだか…。ふと車両に目を向けると一ノ瀬以外は嬉しそうな顔で、既に全員乗車していた。

こういうのは早いな。

 

 「榊さん!私のうちなら10分とかからないさ!」


立花の一言で、約2人が顔を一瞬ひきつらせているる。分かりやすいと言うかなんと言うか。神原に急かされて、俺も助手席に乗る。

 

 「温泉にしゅっぱーつ!」


神原が元気に両手を、立花は片手を上げる。霧島と一ノ瀬はは、両手で手すりをしっかり掴んで、顔と体が強張っている。

そして、車両は無情にも急発進する。


 「いゃっほーっ!」

 「きぃいーゃやあぁーっーっーつーあーー!!!」


 「うるさい!耳が痛いわっ!!」

次回、『ランプの宿』

・・・温泉でのマル秘映像が無いのが残念でなりません・・・




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