中等部はチュートリアルから
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職員応接室
一真と三条がお互い向かい合って座っている。
三条から生徒の写真付き個別資料を見ながら先ほどの模擬戦で感じたことにを答える。
「そうですねぇ。とりあえず中衛と後衛はみんな粒ぞろいですが頭一つ抜けてるのが神原くんですね。動きをよく見ています。小柄だけど、まとまった体つきもしてて、多分彼はもっと伸びます。次にこの二人ですかね」
そういいながら三人の資料を三条に渡す
「ふむ。で、前衛はどう感じた?」
「うーん。自分は今日ここにきて初めて見ただけなんで、他の要素とかなんとも言えないですが。正直に言うと…ちょっと厳しいかもです。それと、中後衛に比べて人数が圧倒的に少なすぎかな?って」
「だろうな。実はこのクラスだけではなく、全体的に年々前衛の適正が減っている。元々人数が少ないのだが。非常に危惧された問題になっていてな。私がここへ来た一つの理由でもある。これからの短期間で君にも学んでもらうことでもあるのだが、我々ヤタガラスの究極な仕事は闇の浸食から人々を守ること。その為には瘴気に満ちた空間に深く潜る必要があり、しかも魍魎を殲滅しながら、又は回避をしながら奥まで行き根幹の浄化をしなくてはならん。前衛はその危険な場所へ行く可能性が非常に高い」
「なかなか大変ですね」
「そうなんだ、大変なんだが君の希望はどこだったかな?先に聞いておかないとな」
「もちろん、中衛か後衛が希…」
パン!
一真が全て言い終わる前に、三条は間髪入れずに手を叩く
「素晴らしい!前衛希望とはな!」
「あっ!いや…自分は…」
「そうか!そうか!いや、なかなか殊勝な心掛けだ!」
「さ、三条さん?聞いてます?」
「いやぁ、よかったよかった!」
「・・・」
(これ、完全に罠にはめられた感じかな…)
「今後は前衛を主体に訓練を進めたカリキュラムを中心に受けるように」
「はい・・・」
一真は完全に諦めることにした。
「ところで。さっき、三条さんがこの学園に来た理由の一つって言ってましたけど。他にもあるんですか?」
「もちろん君の監視だ」
「え!?」
「先日、咲宮耶と一緒に話したとも思うが、自分は都ても対外的には覚醒者と言う事になっている。この年齢での覚醒は極めて稀で、とてもイレギュラーだ。しかも能力値もかなり詐称しているので、自分がやりすぎないよう監視と言うわけだ」
「その辺りは大丈夫です!手を抜くのは得意ですから」
「ほう?では先ほどの模擬戦は手抜きと言う事か?」
「いやいやいや!あれはもう必死でしたよ!」
「まぁ、いい。今後は本講義の後、この時間を使って座学と様々なシステムや構造等を覚えてもらう」
「わかりました・・・」
「なんだ?こんな美人講師と時間外特別講習は不服か?」
「自分で言いますか?はは…」
「冗談だ。早速だがこれが何かわかるか?」
三条は自分のカバンから黒い羽織を取り出す
「羽織?ですか」
「そうだ。しかし普通の羽織ではない。アメリカ軍で言うダークプロテクトスーツと言ったところだ。自分にはその方が分かりやすいだろう?」
「はい」
「灰羽織、黒羽織、白羽織と三種類ある。これは特殊繊維とその表面に特殊コーティングが施されており、闇の浸食から身を守る事ができる。Bランクが灰羽織、Aランクが黒羽織、Sランクが白羽織とそれぞれランクに合わせて装備することが許されている。もちろん、ランクに合わせて対浸食能力も高くなるのだが、必要なマナの量も総じて増えていく。強さの象徴的側面もある。闇の浸食を受けたエリアや洞窟内では瘴気濃度が非常に濃くとても危険だ。装備やマナのない人間は一分と持たずに腐敗していく。あまりにも危険な領域であるので、羽織を装備できるランクの者たちしか、基本的にはその領域に入る事は許されない。この他に簡易羽織と言う使い捨ての緊急用の物が低ランクの者たちに必ず支給される。あくまでも緊急脱出用で有り、極めて短時間しか効果はない。脱出中にマナ切れで倒れては本末転倒だからな。ちなみにこの黒羽織は私のだ。私はこれでもAランクだからな。そして、ランクの話だが、ランクにはチームランクと個人ランクの2種類があり、個人ランクは学園を卒業した時点で、普通でDクラス、優秀でもCからのスタートになるので、もちろんすぐには羽織を使うことができない。様々なクエストを受けて数々の経験を積まなければBクラスに上がれない。生徒は高等科を卒業と同時に既存のチームに参加又は新たにチーム結成する必要があり、常にチーム単位での行動となる。任務を受けるにはチームに所属していなければクエスト自体受ける事ができない。任務はクエストと呼ばれ、クエストには難易度が有り、ランクによって受けられるクエストに制限がかかる。難しいクエストほど高いランクが必要になる。これは人的被害を極力減らし、将来の優秀な鴉の確保のためだ。殆どの場合は既存のチーム参加する場合が多い、人の多いチームもあれば、少ないチームもある。各クエストにはそれぞれポイントがあり、チームポイントはそのままチームに加算されるが、個人ポイントについては、貢献度順で人数割される。つまり、人数が少ないチームは個人ポイントもそれぞれ大量に分配される。その分危険度や仕事の量も増えるが、人の多いチームはその逆だな。もちろん報酬も同じ仕組みだ、また、Bランク以上のチームはランカーと呼ばれ、ポイントでランキングされる。このあたりは実際にやってみればすぐに覚えるだろう」
「なんかゲームみたいですね」
「確かに。だが、このシステムなかなか上手く出来ている。嘘か誠か、基礎は江戸時代初期と言われてるらしいがな。そして、難易度が上がれば危険度も上がるが、報酬も高額になり名誉と生活が良くなっていくという訳だ。あまり推奨はされていないのだが、強いチームが優秀な学生を予め勧誘する事が往々にして行われている。いわゆる、スカウトだな。もちろん学生の方も強いチームからスカウトを受けられるのは名誉なことであり、励みになっているのも事実ではある」
「その辺はプロスポーツみたいですね」
「まぁ、報酬を受けるわけだから、鴉はある意味プロであるとも言える。そのかわりスポーツと違い命が担保だがな。だが、あまりにも多くの鴉が一つのところに固まりすぎるのも弊害がある。なので、1チームは最大8名、メイン1チーム、サブ2チームまでの24名が最大となっている。ま、この規模のチームはかなり限られてはいるがな、大体の新人は新しくチームを組むか、各政府組織へ就職となる。とは言っても、この中等部は2クラスしかなく、無事に高等部を卒業してランク認定を受けれたとしても、実際に鴉となれるの一握りだ。新しく新規チームを組む為の条件がとても厳しいからな。それに、卒業後研修期間となり、研修期間の3年以内でCランク、猶予期間6年以内にBランクへ昇格出来なければ研修期間と猶予期間は自動的に終了し、政府組織、特に警察、消防、自衛隊へ転職することになる。中には政府高官や政治家の秘書となりそのまま議員を目指す者もいる。Bランク以上としてその後も活躍していける人材は卒業生一割にも満たない。全体でみればそのまま鴉を続けられる者の方が圧倒的に少ないという訳だ。それらも、おいおい学べばいい」
(ま、こんなもの君には関係のない話だがな…)
「さて、今日のところはここまでにしよう。何か質問は?」
「えと、一つ。この前助けた人たちは、たしかCランクでしたよね?なぜあんな危険な事になったんですか?」
「ランクオーバー…。普段Cランクは調査が基本任務であり、綿密な事前調査や裏付け、因果関係を調べるのが主な任務だ。だが、あのような状況はAランク以上が対象のクエストとなる。稀に発見が遅れたり、瘴気濃度が急激に増大すること危険度が跳ね上がりCランクの調査クエストがランク以上の危険なクエストに変わる。それが、ランクオーバー。しかも危険度が二段階引きあがる事はもっと稀な事である。さらに、その時点で彼らは後方退避し、ランカーチームの到着を待つ。あれは榊さんの完全な判断ミスと言える。だが、我々は結果が全て。結果、全員が一命をとりとめ、君という人材が見つかった。しかし、残念ながら最近はこのランクオーバーが増加傾向にあり、鴉の損耗率の大半がこのランクオーバーに起因していることも間違いなく、前衛不足もそこが一因となっている」
「そうなんですね…」
「元Aランクでもある榊さんだからこその判断でもあるがな。だが、皆もあの危険度から生還したのが大きい。経験こそが人を強くしていく一因であるから、大なり小なり成長にも大きな影響はある。が、今後あのチームは厳しいな。榊さんが居るからこそCランクでいられたんだが、その榊さんの榊さんの現役復帰は困難だろう、そうするとDランクに間違いなく落ちる。Dランクで受けられるクエストは少ない、しかも研修期間は残り少なかったはずだし、拾ってもらえるチームもほとんどないだろう。あの娘らは元々他のチームから外された問題児で、咲宮耶から依頼された榊さんが現役復帰してまで集めた曰くつきだからな。たとえ、今年度の卒業生から前衛が入ったとしても、かなり難しいだろう。残念だがな。さて、質問に対する答えはこんなものかな、返ってよし」
俺は、少しわだかまりが残りつつ自室に戻った、その後少しして迎えにきた優弥と共に食堂へ向かう。食事をしながら、姉の近況を訪ねてみたが最近は殆ど会話をしていないようだった、親御さんは最悪実家を継がせたいので丁度良いと思っているらしい。神原神社は結構人気で表の業務もなかなか人手不足みたいだ。兄弟は沢山いるようで、誰が後を継ぐかでよく話し合ってるらしい。その晩はなかなか寝付けづ、昔爺さんと色々なところを巡りながら、放したり、鍛えられたことを振り返って一夜を明かした。
翌日は寝不足だったが、疲れは残ってなかった、それこそ爺さんと共に過ごした日々に比べれば天国のようなもんだ。
相も変わらず、律儀に迎えにきてくれる優弥とともに講堂へ行く。
今日も俺に声をかけてくるもの好きは居ない。さすがに、二日目になると、優弥の弾丸トークも慣れてきたが、相変わらずなにを言っているかは理解するのは難しいので、その辺りは早々に諦めることにした。
・・・次回『中等部はチュートリアルから・続/装備編』




