第三会場16~20
【10-3-16.論文と引きかえに漫画の監修をしたら、胃袋つかまれていました】
丁寧で興味深い書き出しでした。
人物造形がしっかりしていて、コレは期待が持てますね……!
お医者さんにはいつもお世話になってますが、本当に厳しい条件で日夜奔走している方が多くて、頭が上がりません。作中の柚鈴も、限界値を超えてもどうにか患者と向き合おうという姿勢がひしひしと感じられました。作者は医療関係者の方かな……?
痙攣していた灯里ちゃんの気持ちも痛い程伝わってきました。病気になると、子どもは自分を責めるんですよね。確率の問題だとか、偶然だとか、色々言ってなだめたとしても、結局は病気が原因で家族の日常に支障を来すわけですから、辛いんですよ。その辺りも描写から伝わってきました。
黒鷺との対面シーンも、おやと思う程自然で、この珍妙な大学生と今後どう絡んでいくのか気になりました。
上手い……。かなり上手いですし、多分続き、あると思うんですけど、期待して良いのでしょうか。
胃袋つかまれるところまで、見てみたいです。
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【10-3-17.それでも彼女は拍手する】
迷い込むはずのないダンジョンに迷い込んだ少女を探す物語。
ダンジョンもの詳しくないので、その方面の常識はちょっと分かりませんが、リンドウが見つけた時点で、シラギクは死んでいておかしくない状況……人間として生きているにはあり得ない条件だったのですが、気のせいでしたでしょうか。
「肌を引き攣るほどの寒さ」「驚異を増した冷気」「痛みすら感じるこの寒さ」「身の危険を感じざるを得なかった。」にも関わらず、「ノースリーブのワンピース、薄着」で少女が現れた。普通の感覚ならば、夢か幻かを疑いますよね。色々試した上で生きている人間(?)と判断したならば、暖かくしてあげようと手を差し伸べたり、どこか物陰に連れて行って保護したり……と思ったのですが、そのまま話が進んでいます。
あれ? と引っかかりを覚えました。
続いて「裏拍手」の話にそのまま入っていきます。
タイトルにある「彼女は拍手する」ということを示すためのそれでしょうが、ここにも引っかかりを覚えます。
拍手さておき、まずは保護じゃないのか、と。
そもそも、氷点下何度か分かりませんが、その状態では会話するだけで口が冷気で渇いて大変なことになりそうなのですが……。
特に指定されていない場合、読者は登場人物を普通の人間と仮定して読み進めますから、常識から逸脱した時点で立ち止まってしまいます。その上で、既にアンデッド化しているなど、情報が追加されれば上書きし、脳内に作り上げていた像を修正していくのです。
やたらテンションが高かったり、最初から世界観が既に特殊だったりすれば、読者は登場人物を普通の人間と仮定することは少なくなります。テンション高くギャグが多ければ、多少高いところから落ちても死なないだろうと脳内修正しますし、世界観が特殊すぎれば、空も飛ぶかも知れないし、特殊能力が使えるかも知れないと脳内修正します。
こちらの作品は、特にシラギクについて普通の人間と違うことは温度感覚ぐらいだと強調しているようにも見えますけど、前段の情報通りなら、既に死亡している気温ですから、もうちょっとリンドウの反応、どうにかならなかったかな、と思ってしまいました。
多分、シラギクはもうアンデッドで、だんだん思考回路もアンデッド化していき、ダンジョンから脱出する頃にはもう、人間とは言えない状態になってしまうんだろうなと予想します。
リンドウの頭は既に冷気に冒されて狂っていた、というオチでしたら失礼いたしました。(あり得ますよね)
登場人物をもう少し人間っぽく(単に物語を動かす道具ではなく)描けるようになれば、印象が変わってくるのではないかと思いました。
今後のご活躍に期待します。
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【10-3-18.斬り続けた先の、その果てへ】
あらすじ感想の時は字面で判断していたので気が付かなかったんですけど、「けんせい」が二種類出てくるんですね、この作品。「剣聖」が人間の方で、ロリババアの方は「剣精」。あらすじの「力を貸さないニート剣聖」は「剣精」の誤字ってことのようですね。今更ですし、既に指摘あると思いますが、これであらすじの違和感の原因が分かりました。
(所々ハルクがハルトになっています。後でよくお確かめください)と、それはさておき。
ロリババア・ミツハが「剣精」であることは、第1話でしっかり伝えても良かったのではないかと思うのです。「あんたの力」が不足しているという言葉は出てきますけど、もう少し、言葉が欲しいです。
ラグが頑張ろうとしていても、ミツハとそりが合わないため力を貸して貰える状況にない、と、ひとことふたこと挟み込むだけでも印象が変わったのではないかと思います。
「剣聖」との最後の別れ、ミツハの悲しそうな様子からは、何かしらの拘りがあってラグに力を貸さないのが容易に推察できますし、少し加えることで印象もハッキリしてくるのではないでしょうか。
もうひとつ。
コレもわざとなんだとは思うんですけど、やはり二つ同じ読み方で違う意味の漢字を使うのはリスキーかな、と。勿論文脈からも字面からも容易に読み取れるんですけど、「音」が同じなので、音声として認識したときにどっちがどっちか分からなくなってしまいます。とても面白そうな設定だけに、そこがちょっと勿体ないなぁと思った次第です。
まだあらすじにある「幼馴染の婚約者セイラ」が台詞の中にしか登場していませんので、彼女との絡みも気になりますね。
今後の展開も期待できそうです。
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【10-3-19.終末審判/魔王再臨】
重厚な語り、淡々としていながらもその恐怖と懺悔がじわりじわりと伝わってきました。
『魔王』の旧友が伝える物語。第1話はこの作品のプロローグにあたるのではないかと思います。
『魔王』の過去と、そう呼ばれるまでの出来事が、彼の人となりを交えて紹介されてゆきます。
説得力を生み出すのは、それぞれのエピソードが常に旧友目線で、『魔王』の感情はあくまでも表情や行動から推察されることだけを記しているところだと思いました。わざとこの旧友に語らせることで、彼の人としての本質が見えにくくなりますが、同時に『魔王』と呼ばれるに至る理由が第三者目線で伝わり、飲み込みやすくなります。
この構成、上手いですね。
手練れだと思うんですよ……。
これ、連載するとしたら第2話から目線と人称が変わりますよね?
2話からは三人称で、『魔王』の余生やAndroidとの暮らしが一転、戦闘モードになってゆく様子が描かれていくんじゃないかな、と思います。
面白いんですけど、コレで完結しても良さそうな感じになっているので、続きあるのかちょっと不安です。
続き、ありますように……!
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【10-3-20.誰か! 私にネタをください!!】
あらすじは事前情報のタイプ、かな。
あのあらすじでこの展開を予想できた人は天才だと思います、というくらいちょっと予想外でした。
あらすじの使い方に関しては、あまりとやかく言うのはアレなんですけど、なんとなく、タイトルと中身は合致しているけど、あらすじが足を引っ張ってしまった感じが否めなくて、何だか勿体ない気がしました。
特にこの「書き出し祭り」とうガチ勢の巣窟の中では、ちょっと異色というか。でももしかしたら、それを見越して、このあらすじを入れてきたのかも知れないし、そこは作戦だったら非常に申し訳ない指摘にはなりますが、やっぱり、何だか勿体ないですよね。
技術説明に特化したあらすじ欄ですが、これを本文中にも上手いこと差し込んで、それを含めて作品を仕立ててくれていたら、また評価が違ったと思います。そのくらい、このあらすじの登場は企画にとって重要な位置を占めているような気がします。
AR-AIの技術は興味深いですね。「AR機器を装着した本人だけが見える」とあらすじにはあるのですが、どのような装置でしょう。「AR-AI管理デバイス(通称アーゲイト)」のビジュアルデザインなどあれば、より鮮明に画像が浮かぶのですが。「彼女の襟元に視線を移す――この人、アーゲイト着けてない」とありましたが、ピンバッチ型? この辺は結構大事なので、詳細情報欲しかったですね。
設定はとても面白そうだったのですが、やはり情報の出し方、見せ方が勿体ないなぁと思いました。
ただ、登場人物はとても生き生きしていて、そこに関しては魅力的な書き方が分かってらっしゃるように思いましたので、どんどん得意な部分を伸ばしていただければなと思います。




