第一会場6~10
【10-1-6.召喚士ルイは友を喚ぶ】
いじめられっ子主人公のルイの描写がとても痛々しい……。
可哀想だけれど、その状況を招いたのが彼自身というのもあって、そこまでしなければ自分の求めるものを手に入れられないのかと愚かしくも感じました。やっぱり、寂しいとそういうことをしちゃうのかなぁ。短絡的で追い詰められているルイの状況がとても詳しく書かれていて、しっかりとキャラ付けされていると感じました。
そして、その描写が後半の急展開をしっかりと色づけているのだと思います。
フェルの登場シーンから先、それまでどんよりしていた雰囲気が一気に変わります。
強いメイドさん、素敵……。
登場にナイフを使ったのも、今までの展開をぶった切るだとか、ジェイとの関係性をぶった切るだとか、いろいろな意味が混じっていそうです。
インパクトが凄いです。
突然、薄暗かった画面に色が差したような鮮やかな登場シーン。
丁寧な口調ながら、「小太りの、醜い小僧」「余分な脂肪」とか、ちょこちょことんでもない言い回しをするフェルは、メイドなのに上から目線でかっこ良くて美しい……!
良いですよね……。本当に、良い……。
シチュエーションが、好きですね。年上のお姉さんに守って貰う少年。素敵。
でも、なんだかんだ言ってあらすじ通りならば、ルイは凄い力を後々発揮していって、それこそ本当の意味でフェルがひざまずくようになるんでしょうね。
今後の展開がとても楽しみな作品だと思いました。
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【10-1-7.悲愛偏哀、あいしあい。】
あらすじ読んだときは、無機質な何かとの恋愛かな? とか思ったんですけど、「偏愛」の方にめっちゃ比重寄ってましたね……。
そうか、そっちの方か。
正直、やべぇと思いました。
あとで冒頭を読み直すとハッキリはするんですけど、最初に便箋が出てきたときに、なんか変な感じがしたんです。便箋、入れとくかな。持ち歩くもんかな。とても抽象的な遺書だけれど、これは特定の誰かに読まれる前提で書いている(まぁ遺書だから当然なんですが)。
圭一の思い出が淡々と綴られていく中で、読者は思うわけです。
「こいつ、終わってるな」と。
散々結美子の不幸を願い、偏った愛情を注ぎ続けている様子は、本当に鬼畜というか、まぁ、クズですよね。最低ですよね。実際、こんな人がいたら絶対に近づきたくないし、存在すらして欲しくないと思うくらいの最低最悪な人間だと思います。
これが、作者の意図なんですね。
やられました。
完全に、やられたと思いました。
空白のあと訪れるオチに、うわぁって思いましたよね。
とても好みでした。
偏りすぎてて最高です。
けど、コレはこのままで成立しているような気がしてなりませんでした。
要するに、それなりに長い小説の書き出しとしてではなく、短編として成立しているような。
勿論、続きがあれば読んでみたいと思いますが、このまま終わっても成立する。綺麗な終わり方なんですね。
いずれにしても、高い文章力でぐいぐい読ませてくれる、力のある方が書かれたのだというのは想像できます。
内容が内容ですし、読む人を選びそうですが、とても面白かったです。
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【10-1-8.天才どもを、喰い殺せ】
美術部員のお話ですね。
あらすじのときも気になるところがあったのですが、本文でもやっぱり気になることがあった元美術部員です。ごめんなさい。どうしても、気になったところを書かせてください。
他の人が気にならないことを指摘していることをまず最初に書いておきますね。
終始気になってしまって仕方なかったんですけど、この広田さんの絵って、何で描かれていますか?
画材によって描き方や完成時間、表現方法などが随分変わってきます。
絵の具は不透明水彩でしょうか。透明水彩? アクリル? 油彩でしたか?
何に描いていますか? スケッチブック? 画用紙? カンバス? 大きさはどのくらい?
絵を題材にしている割に、色の描写以外のことが描かれていなくて、もしかしてこの方は絵をあまり描かない方なのかなと。
絵を描く人間にとって「何の媒体に描いているか」「どの画材を使っているか」というのは、何よりもまず最初に気になるところです。それこそ、スポーツをしている人がどんな道具を使ってどんな練習をしているかとか、楽器を演奏する人が何の楽器を使ってどのように演奏しているかとか、そういうのが気になるのと同じくらい当然のこととして、気になるはずです。
だからこそ、倭が何故画材に言及しないのか、引っかかりました。
また、「壁に飾られた、先のコンテストで一位と二位を勝ち取った二枚の絵」の描写もなく、なんというか、やはり単なる物語のガジェットとしての絵であって、それ以上でもそれ以下でもないのではないかと思わざるを得ない気がしたのです。
作品を完成させるには、ものによりますが、数ヶ月単位で時間がかかりますし、自分でピリオドを打つまで何度でも描き足しや修正が出来るので、納得できるまで延々と修正作業をする方もいらっしゃいます。
また、自分より上手い年下はごまんといるのも分かっているはずなので、「君は、書き始めたばかりであれだけの才能を持っていながら」と、果たして思うのかどうか。この辺は、倭の性格的なものなのであまり言及するべきではないのでしょうが、気になりました。
と、すみません。あちこち引っかかってしまって。
多分ね、美術よりは、囲碁とか将棋とか、そういう対戦系の文化部だったら、妬みとか弟子とか、違和感なかったんだと思うんです。
仮にこれが吹奏楽ならどうでしょう。楽器やったことがないと言いながら、直ぐに吹ける、または弾ける。あの音を出すのに自分は苦労したのに、天才なのか。コンテストにはいつも……。そう、多分、筋書きにはこっちの方がしっくり来てしまう。
だいたい、もしコンテスト……なんてことになったとしても、美術部だと提出より3ヶ月以上前から準備しなくちゃならないので、その場で勝負〜ライバルが〜みたいなのはないですからね……。出品してから発表出るまでもめっちゃ時間かかるので、発表出る頃には次の作品出来上がってるレベルに時間かかります。結果を知るのは紙面や顧問の先生からの通知です。展示会はさらにその後、授賞式もその時行われることが多いです。
その辺は小説と一緒ですよね。
俳句じゃないんですから、一同に会して作品を次々にぶつけ合う、とはいかないのです。
筋書きはとても面白そうだっただけに、どうしてこの題材なんだろうと、そこが引っかかった次第です。
恐らく多くの読者の方はそんなことまで気にしないと思いますが、やはり、題材にするからにはそこを突き詰めてから書き始めることが大切ではないかと。
あくまで、元美術部員のつぶやきとして捉えていただければ幸いです。
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【10-1-9.妹に殺されるのは俺だけでいい】
あらすじは、事前情報でしたね。
もしあらすじを読まずにすっ飛ばしていたら、恐らく突然の出来事にハテナマークが飛び交うことが推測されます。世界観の説明、状況説明をあらすじ部分でしておいて、というのは、web小説には結構見られる手法かと思います。(私はやったことないけど)
このやり方は賛否両論あって、あらすじを読まない人には全く意味をなさないんですよね。あらすじとは、「物語や物事の大体の筋(出典:明鏡国語辞典)」だそうですから、本来の使い方ではありませんが、使い方は自由ですので、あくまでそういうものです、という提示にとどめさせていただきます。
さて、こちらですが、SFですね。
突然の流血シーンからの始まりは、とても目をひくと思いました。
死体を冒頭に転がしておけ、とはよく言ったもので、絵面的にもインパクトが強いんですよね。
呆然とする冬也、様子がおかしくなったやちる、突入する警察。この畳みかけも良いと思いました。
けれど、出来るならというか、わがままを言うなら、あらすじの情報を本文で教えて欲しかった。あらすじ部分の細かな設定がもし本文中に入っていたなら、さらなる緊張感と、彼らの行動の理由づけがより強固になったのではないかと思うのです。
物語の展開はとても面白く、だからこのタイトルに帰ってくるのかと膝を打つような展開までしっかり用意してあるのに、肝心要の設定や背景がすっぽり抜けているので、どうも拍子抜けしてしまうんですね。
最初に書きましたように、勿論あらすじの使い方は人それぞれで全然構わないんですが、設定をあらすじに詰め込んでいることを前提にされてしまうのも、読者としては大変味気ないように思ったのです。
不死の力を使って、どうやって妹の暴走を止めていくのか。色々と気になるところです。
読ませる力と、緊迫感の作り方がとても光る作品でした。
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【10-1-10.サクラ、歌ってくれよ】
あらすじからの本文、で、混乱が生じました。
時系列は、どうなっているのでしょうか。
あらすじの中の「『神隠し体質』によって『消失と帰還』を繰り返す少女、サクラ。人とは違う時の流れに身を置く彼女を孤独から救うため、主人公の青年ハルは音楽活動に誘う」よりは前の話、でしょうか。
「自分、神隠しに遭ってたんす」とハルに投げかけるサクラ。
この時点では、ハルはサクラの体質を知らない。
けれどこのシーンより前に、「一緒に女の子がいたんだよ。ギャルっぽい感じの可愛いJK」とカップルが呟く台詞がある。
サクラとハルはいつ音楽活動をしていたのか。
ハルはいつサクラの体質を知ったのか。
この辺が、あらすじと整合性取れていなくて、混乱しました。
あらすじはあらすじ、本文は本文、と考えると気にならないのかも知れませんが、両方読んだ場合の混乱点をまとめます。
①あらすじ冒頭の「」は、恐らくこの物語の山場のものだろうと仮定。あらすじの最後の「日本最大の音楽フェス」での言葉ではないかとザックリ予想する。
②「人とは違う時の流れに身を置く彼女を孤独から救うため、主人公の青年ハルは音楽活動に誘う」とあるため、『神隠し体質』をサクラが告白するより前には、音楽活動は行っていなかったと推察できる。
③「人気あったんだ?」「一緒に女の子がいたんだよ」
「いつまであいつの話をしてんだ。もう三年も前だぞ?」
ここで、サクラとの関係がずっと前から続いていたことが明かされる。
「人目を引くルックスのあいつが俺の隣に座り込んでハミングなんてしてた」
つまり、一緒に音楽活動をしていた。
④「おひさしぶりっす」とサクラが現れる。「体質って言うんすかね」と告白。
ここでハルが初めてサクラの体質を知る。
⑤てっきり②と理解していたため、③と④の順番に混乱する。
大抵文章は、時系列順に書くことが多いですよね。あっちにこっちに情報が飛び飛びしますと、どの情報の並べ方が正しいのか分からなくなって、読者が混乱していきます。それは、本文であってもあらすじであっても同じです。
で、結局二人はいつ音楽活動をしていたのでしょう。この話は、あらすじよりも前なのか、後なのか。
重箱の隅で申し訳ないんですけど、気になって先に進めません。
題材はとてもいいし、面白そうだなと思ったんです。それだけに、すみません、ものすごく混乱しまして、勿体ないなぁと。
面白そうなんですよ。だからこそ、やっぱり気になりました。
読み間違え? いや、何度も読んで感じたことです。参考にしていただければ幸いです。




