暴食
どういう風だとしても終わらせよう。
そしていつか書きたくなったら、きっと改訂版を書くだろう。
悪魔は悪である。
それは人を堕落させ、人を貶める。人を呪うがその本質は、決して、人を嫌っている訳ではない。むしろ、人間のことを愛していると言っても過言ではない。
だからこそ、喰える。
好きだから、愛しているからこそ、喰える。
喰うためには愛さねばならない。けれどその逆も然り。
その矛盾を孕んでいるからこそ。
「これが……」
僕は眼下に広がる光景を目に映す。
魔物たちの暮らす都市。
平和な都市。吐き気がする。反吐が出る。虫酸が走る。けれど、同時に好感を覚える。
壁で囲んで、傷付けず、世界を守る為に存在している。
気に食わない。
そんなのはいらない。僕を拒絶するな。僕を見捨てないで。
僕は、僕は。
——腹が減った。
「喰らい尽くして、暴食の悪魔」
闇が僕の身体から噴出した。
夜が降りたみたいに、都市を覆う。所々に血の滴る、真っ暗な暗幕。それは口だ。何もかもを飲み込んで、何もかもを砕く牙。城門を砕き、城壁を枝葉のようにへし折り、ついには閉じ始める。
都市を飲み込んだ。
がちり、と閉じた。
「あれ?」
僕は、何をしていたのだろうか?
何もない地面に、横たわっている。
いいや、地面じゃない。見上げると、よく見知った顔が、こちらを見下ろしている。
頭の後ろの、柔らかな感触は、おそらく膝枕だろう。
「あぁ、アスモデウス」
「起きた?」
「うん……でもまだ眠いや……」
「いいの、あなたは夢を見ていたの」
「夢……」
「そう、ゆっくりと、おやすみ」
「ははっ……なんだかお母さんみたいだね」
笑うと、アスモデウスは顔を反らした。
赤くなった頬がよく見える。
「ほら、目を閉じて」
「うん」
「ゆっくり呼吸して」
そうして僕は堕ちていく。
深い眠りに、僕は堕ちていく。
気にかかったのは。
「ゆっくりおやすみなさい。私の愛おしいベルゼバブ」
彼女は僕を見て、何か、別のものを見ている気がしてならなかった。




