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てんしさま

 広場に着くと、そこは大勢の魔物で犇めき合っていた。


「ほら、あそこ」


 魔物たちの間から顔を出し、広場の中心に目を向けた。

 

「天使様だ」


 アルティが呟くように言った。

 視線の先で、背中から真っ白な花を広げた男が、これまた真っ白な装束に身を包み、両手を広げていた。

 

「ーー魔王なき今、この清浄なる世界を守るのは我々である! 故に! 魔王とその直属、悪魔の存在など言語道断! あってはならない。皆で力を合わせ、悪魔の排斥を行い、魔王の存在を抹消するのだ! 我々は、手を取り合い、平和を求めるのだ!」


 わっ、と魔物たちが声を上げる。

 なんだかおかしな話だ。魔王ってのは、ずっと前に読んだ本には魔物たちの親玉だって書かれてたのに。

 それなのに、魔物たちは魔王を嫌ってる。

 本当に、おかしなの。


「悪魔を探すのだ! 悪魔を探し出し、根絶し、悪の根を摘むのだ。悪魔はどこにでもいる。例えば……そこに」


 大仰に広げた手を下ろし、僕たちのいる方へ向けて指を伸ばした。

 魔物たちの注目がこちらに集まる。

 

「上手く化けたようだが私の目は……天の使いである私の目は誤魔化せない。そこにいる少年少女は悪魔である。殺すのだ! 存在を許すな! 平和を乱すな!」

『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!』


 咆哮。

 街全体を揺るがす程のそれが、耳を劈く。

 僕たちを見ている魔物たち。その瞳に映るのは殺意。殺してやると、平和を乱すな、と。

 そう――アルティの話が正しいのならば、街に住む魔物はここにいる。

 全ての魔物が、この広場に集まっている。

 それはつまり。


『殺せッ! 殺せッ! 殺せッ!』

 

 合唱するように響く。

 魔物たちが牙を剥き、爪を光らせ、炎を吐き、地面を踏み鳴らす。

 僕はアルティを庇うように引き寄せる。


「……逃げよう」

「う……で、でも、こんなっ!」


 四方八方から攻撃が飛んでくる。

 僕は背を向けて走り出す。飛び込んでくる攻撃を躱しながら、走る。









「はっ……はっ……はっ……!」


 路地裏に身を隠し、一息吐く。街中が僕らを狙っている。

 ……けどそれは、街中から悪意を向けられっていた僕には慣れたものだ。

 けれど、それでも。

 こちらを不安そうに見上げるアルティに、僕は笑顔を向けた。


「大丈夫」


 そんなことない、とわかっているのに。

 

「……アスモデウス……どうすればいいんだよ」


 僕の中に眠る彼女に問い掛ける。

 答えは返ってこない。

 

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