悪魔と街
「はっ……はっ……はッ」
暗がりの路地を、少女が一人、走っている。
息は乱れ、足取りは乱れ、それでも止まることは出来ない。
止まれば彼女は死んでしまう。
それが事実だと知っているから止まることは出来ない。
路地に転がるゴミを蹴飛ばして、家のない爺の足を飛び越え、角を曲がる。
それでも少しも離れている気配はない。
ちらちらと背後を確認しつつ、走る。
その背後から、光弾が音を立てて飛来する。
少女の背中に真っ直ぐに吸い込まれる。
「――――っひ、ぐッ!?」
炸裂し、爆発する。
光弾は少女の背中を焼き、地面へと落とした。
「ったくよぉ……手間取らせやがって」
路地の暗闇の中から男が一人、にじみ出て来るように現れた。
黒いコートはまるで漆黒の闇と同じだ。
目深に被ったフードは恐らく自身の正体を知られない為。
手に持つ杖は、男の身長程もある長杖だ。
ごつごつと節くれだった木の枝を加工したものだ。世界樹の枝だ。
先端にはめ込まれた魔石は巨大で、禍々しく赤く染まっている。
男は少女の身体を見下ろした。
ボロボロの貫頭衣を身に纏った、汚らしい少女。
垢まみれで伸び放題の髪の毛は痛々しさを連想させる。
「逃げられる訳、ねぇだろ?」
「…………ッ」
痛みに震える少女は何も言い返すことは出来ない。
「悪魔が、こんな所で生きてていいなんて、あってはならないからな」
男の杖に魔力が集中する。
確実に、目の前の少女を殺害する為に。
一片残らず少女を消滅させる為に。
ただ、それだけの為に。
「じゃあな」
撃ち出されたのは、先程の光弾をさらに大きくした光。
少女を包み込み、その身体を消し飛ばす。
最後まで、少女は何も言うことはなかった。
「……ふう」
男は踵を返す。
暗闇に溶けるように消えていく。
後には何も残らない。
ここは城塞都市ウトガルド。
悪魔の存在を許さない、魔に属する都市。
◇
「…………随分と変わったわね」
アスモデウスが城壁を見上げながら呟いた。
「ここが言ってた目的地?」
「そう、昔から城塞都市って言われてたけど、こんなにガチガチだったかしら?」
不思議そうに、首を捻る。
狭い世界しか知らない僕にとって、そこは確かに珍しかったが、そこまでだろうか? と思った。
外敵の侵入を防ぐ為の城壁は高く、まるで天に届くかのよう。
誰かが入ってくることを、徹底的に拒んでいるように思える。
それはここまでの道のりを考えると不思議ではないのではないか、と思う。
「ま、いいわ。行きましょう」
アスモデウスが歩き出すのに従って、僕も歩き出す。
まずは街の入り口を探すことから始めなければならないのだ。
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