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少年は悪魔と歩き出した


「ここからどうするの?」

「とりあえず、街を目指しましょう。あなた達は私たち(悪魔)と違って食糧を食べなければ生きていけないのでしょう?」

「そう……だね」


 その通りだ。

 僕らは食べなければ生きていけない。

 

「それから海を渡る必要があるわね」

「なるほど」


 つまり道のりは長く遠い、とそう言いたいわけだ。


「でもそれはあなたにとっての話。この私がいちいち船で海を渡って、そちらに行くと思う?」


 それはどうだろう。僕は数日しか一緒にいないし、そこまで彼女の人なりを理解していると言いがたい。でも、アスモデウスなら、そうだな。


「そういうの、似合わないと思う」

「でっしょー? 私たち悪魔は、転移門……ゲートって呼ばれてるものを使うの!」

「それって……」


 僕をここに送り出した魔法と似たようなものだろうか?


「僕を燃料に……!?」

「違うわよ! それじゃ私のクラウソラス返ってこないじゃない! ゲートってのは、この大陸の各所にあって、地脈から魔力を吸い上げてその力を維持してるの……使う度に生贄が必要なんじゃ、面倒じゃない」

「確かにそうだね……それで、そのゲート? ってのはどこにあるの?」

「だから街を目指すんじゃない」


 街にあると、言外にそう言っているらしい。


「ほら、行きましょう」

「うん」


 結局、僕は流されているのと同じだろうか。いいや、そんなことはない。僕は僕の意思で決めたんだ。僕の進む先は、これであっているんだ。

 

 アスモデウスが先導して歩き出す。

 進む先は、岩石のような、樹木のような、よくわからないものの生えた森。先の見えない濃霧の中を、僕とアスモデウスは歩き出した。





 僕は走っていた。

 正確に言えば、僕の中にアスモデウスを抱えて走っていた。


「ど、どうして……」


 ぜぇはぁと息を切らしながら、奇妙な森の中を走り抜ける。

 あちこちの段差を飛び越え、正に縦横無尽としか言いようのない程めちゃくちゃに走り回る。

 それでも僕は足を止めることを許されない。


「どうして、だよ……!」


 悪態をつけど休ませてはくれない。

 背後から聞こえるのは動物の駆ける音。

 それも、巨大な大型動物。四足の足で山を駆け、その巨体は木々等ものともしない。

 例えその直進を邪魔されようと、へし折りながらでも対象に迫る……


「な、んで……こんなことになってんだよっ!!」


 人はそれを、ブルと呼ぶ。

 そんな可愛らしい名前が似合うものでないことくらい、僕にも分かる。

 これはそんな生易しいものじゃない。


「あー……こっちって魔力が濃厚でさぁ……あっちの動物とかが迷い込むと、巨大化しちゃうのよねぇ」

「出て来るなよ!」

「あら、折角教えたげたのに」


 必死に走る僕の肩口から、にょきっとアスモデウスの頭が生えて言葉を発する。

 気持ち悪し走り難いから、即座に引っ込める。


 ――とにかく、僕は逃げていた。

 

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