悪魔喰らいの少年
S級ダンジョン。
【漆黒と深淵の魔窟】
人間には到達出来ないとされた魔境、グラズ=ヘイム大陸の中央部に存在するダンジョン。
明かりもなく、出現するモンスターもハイレベルなものが多く、突破したものはいないとされる。
そんな中に、一人の少年の姿があった。
暗闇に包まれたダンジョンの中。
僕の手に持った松明の明かりだけがぼんやりと先を照らしている。
何時、何処からモンスターが襲ってくるのかわからない状態。
けれど僕は少しも緊張していなかった。
「行け、アスモデウス」
「やれやれ、人使いの荒いご主人様ね」
「グズグズするな、僕が行けと言ったら行くんだ」
「もう、せっかちな男の子は嫌われちゃうぞ!」
「うるさい、早くやれ」
「はいはい、ほんとせっかち」
僕が指示すると、僕の背中からずるりと這い出るようにして美少女としか言いようのない存在が現れる。
白く輝くような頭髪に頭頂部から捻くれた角が伸び、丸い瞳が正面を捉え、その紫色の虹彩が揺れる。
肌は暗闇に映えるような真っ白で、人の形をした何かだとでも言っているようだ。
華奢な肉体を包むのは衣服ではなく、まるで革のベルトのようなもので縛り上げている。
一見して痴女である。
痴女はぶーぶーと文句を垂れながらも指示に従う。
「さーて、それじゃあ! 永久の闇に誓いましょう。我が名は滅びと破壊を意味する。我が名の下に命じましょう。滅びと破壊を。目の前に」
アスモデウスの頭上に、球状の漆黒が生まれる。それは松明の明かりでさえ届かない深淵の闇。どのような光であっても到達し得ない暗黒のエネルギー。
それが、目の前に向けて解き放たれた。
破壊と衝撃が爆発し、その激しさに思わず吹き飛ばされそうになる。
けれど、僕の身体には何一つとして被害はない。
レベルの上がる感覚を感じた。
「ほら、終わったわよ、ご主人様」
その破壊が収まったくらいで、僕は松明の明かりを向けながら歩き始める。
暗闇の中から、巨大な影がぬっと現れる。
そこにいたのは巨大なドラゴンだ。
ただし、その身体の半分を消し飛ばされ、崩れ落ちている。
「全く、文句さえ言わなかったらいいんだけどな」
「えー、ご主人様一人だったら、絶対に死んでるわよこれ」
「僕だけだったらな、今はお前がいる」
「きゃー! 何もう! ご主人様ったら、上手なんだから」
べしべしと僕の背中を叩きながら、アスモデウスは顔を赤く染める。
止めろ、それ一発で下手したら僕は死ぬ。
どうしてこんなことになってしまったのか、と考えれば僕の生い立ちから考える必要がある。
それは時間にしてつい最近、三日程度前のことである。
――その時、僕は迫害されていた。
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