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天狗姫はお祭りに行ってみたい

大変ご迷惑をおかけいたします。

第28部修正投稿しました。

これからも宜しくお願いします。


「では、買い出し行ってきますねー」


 黒いバン車の運転席から、木村の甲高い声が飛んできた。大きなスーツケースと幾つかの機材をリビングの隣の部屋に運び終えると、彼女はそのままお昼ご飯を買い出しに出ていった。


 女性比率の多い今の拓真家なのだが、彼女達はどうやらお昼を作る気は無いらしい。

 出来る事ならすぐにでも咲良にメイクアップと着付けをしたいとの事で、される側の咲良本人も含め雑用等の面倒事に時間と手間を取られたくないと小林は言う。


 それならばと、拓真がお昼の準備をすると名乗り出たが、私達が居るのにそんなことさせられませんと、女性陣に却下されたのである。


 なので、来る途中に町中で発見した『○っとモッ○』というお弁当屋さんにしようと木村が言い出したため、それにしようと意見が一致したのだ。

 遅く起床した拓真達は、そのお弁当を朝食兼昼食にするらしい。



 咲良は未だ洗面所で髪をとかしたりしていて、今リビングに居るのは拓真と小林の二人だけ。

 拓真は、先程小林が口走っていた咲良のメイクアップと着付けについて、少々疑問に思っていた。


「あの重たそうな荷物って、着物ですか?」

「ああ、あれはですね、浴衣です。今年の新作を幾つか持って来ました。どれも可愛いのばかりですから、後で拓真様もご覧ください」

「ふうん、浴衣ね……新作って、え? なんで?」

「なんでって、それは決まっているでしょう。咲良ちゃんに着せるためにですよ」


 自慢げにそう言い放つ小林は、不敵な笑みを浮かべていた。

 

「彼女、顔立ちが良くて可愛いし、それにスタイルだって抜群でしょ。下手をすれば、そこらのモデルより全然アリかなと思います。ですから私、それを活用しない手は無いと、昨日の遅くまでにいろんな準備を整えていたのです。木村さんを連れて来たのもそのためですよ。…………ああ、咲良ちゃんが綺麗に変身する姿、とっても楽しみ」


 小林は一人で盛り上がり、うっとりしながら天井を見つめていた。そんな小林を拓真はジト目で睨んでいる。なぜか嫌な予感しかしないのだ。


「咲良ちゃん。あんなに胸が大きかったら、水着でもよかったわね。今度そうしようかしら……って、あれ? 拓真様、いかがなされました?」


 あらぬ妄想が膨らんでいる様子の小林。咲良が彼女の着せ替え人形と化し、色々と悪用されはしないかと不安がよぎる。水着姿は見てみたいが。


「そうそう、拓真様。拓真様のご希望のメイド服も調達してきましたから、ご安心ください。と、言いますか、十分お楽しみ頂けるとおもいますよ、うふふ」


 希望などしていないぞと、拓真は反発しようとした。だが、小林が続けざまに「それともう一つ」と付け加えてきたので、その後に続く発言を聞くため大人しくする事に。何故なら……


「拓真様の依頼した物もご用意してきました」


 そう切り出された小林の言葉で、拓真の脳裏にある物が浮かび上がる。それは咲良には内緒で、拓真が密かに依頼してあった物だった。


「ありがとう小林さん」

「いいえ、私もそれ(・・)は必要だと思っていますので。どうされます? 今お渡しになりますか?」

「んー、いいや、後で渡すよ」

「そうですか、では先に拓真様に預けておきます。あとはお好きな時に渡して下さい」


 そう言うと小林は、小さな紙袋をテーブル上に差し出し、それ(・・)を拓真に預けた。

 受け取った拓真は、一応紙袋の中を確認するが、入っていたそれ(・・)を取り出すことなく紙袋のままテレビの横に置いた。


「いつもありがとう。助かります」

「とんでもありません」


 咲良に渡すタイミングは何時でも良いとは思うのだが、出来ればふたりきりの時にしようと拓真は考えている。

 小林や木村の居る時だと、何かしら弄られてからかわれるに違いないからだ。まあ、小林がうっかり喋りださない事を祈るばかりだが。


「それよりも拓真様。咲良ちゃんをほたる祭りに誘いました?」

「いいえ、多分人が多い場所は嫌がるんじゃないかと思って誘ってないですけど」

「あら……」


 直接咲良本人に訊いていないので確かではないのだが、学校での態度から推測すればお祭りに行くことを嫌がるのは間違いないだろう。

 しかも、お祭りの開催地は学校と同じこの町内だ。どう考えてもクラスメイトや同級生との遭遇は避けられない。



 間もなくして咲良がリビングに入って来た。寝起き姿を整えた彼女の服装は、あの見慣れたジャージ姿だった。


 早めの昼食を済ませたら着せ替えタイムが始まるとの事なので、服装はパジャマでも問題ないと言われていた。しかし、さすがにパジャマで居るのは気が引けたようで、ジャージ位ならと思い着替えたらしい。


「そうそう拓真様。先程ここに来る前、駅前を通ってきたのですけれど、凄かったですよ」

「ん? 何が凄かったんです?」

「駅前通りの歩道一面に屋台がずらりと。流石に町挙げての一大イベントですよね。あれには驚きました」


 屋台と聞いた咲良の表情が、ぱあっと明るくなった。


「屋台ですか、いいなあ」

「あら咲良ちゃん。お祭り、行きたいでしょ?」

「え? ええ、まあ……」

「ほらぁー、拓真様! 咲良ちゃんお祭り行きたいって。せっかくだから連れていって――――」

「あ、あの小林さん!」


 拓真を責めるように小林が仕向けるが、咲良がそれを静止した。

 と同時に、外から自動車の停まる音が聞こえてきた。買い物に出ていった木村が帰って来たようだ。


「わたしはお祭りには行きません。拓真君と一緒に居ると迷惑かけてしまいます。それに……」


 咲良は申し訳なさそうに小林へ断りを入れる。そして、拓真の思った通りの理由を口にした。


「大勢人が居る所って苦手ですし、学校の皆とは仲良く無いですし……」

「あらそう、残念ね」

「だから言ったろ」

「でもね咲良ちゃん、安心して。その為に今日の私達が居るんだから」

「「?」」

「輝く咲良ちゃんを見てみたい。そんな拓真様の欲求に応えるための強力な助っ人! 我らが木村さんの登場です!」


 そう言いながら小林がリビングの入り口、引き戸に両手をかざすと、丁度いいタイミングでガラリと開いた。


「ただいまー。お待たせしましたー。いやーお腹空きましたねー…………あれ? 皆さんどうしました?」

 

 どうやら小林と同様に、木村もまた何かの凄腕の達人らしいのだ。



お読み頂きありがとうございます。

誤字報告お願いいたします。


よかったら評価・ブクマお願い致します。

すらすらと筆が進むかもしれません。多分(-_-)zzz

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