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部室感染  作者: MAGI
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第四話「正常である」

「今日は休みかぁ~~」

 翔は少し落胆していた。翌日なって来て見ると雅人が来ていない。昨日はあれ以上見れないと言う程元気だったのに・・・。

「お、ダンナは休みか?」

 智が茶化しに来た。当然、金魚の糞のように京次と彼女の吉川皆奈も付いて来た。

「まだダンナじゃなうぃ!!」

 翔は顔を紅潮させ、更に口に現れて語尾がまともに言えなかった。

「ほんとにわかりやすいね!」

 皆奈が軽く翔の鼻のてっぺんをツンと突いた。

「そりゃそうとよ、」

 智は声をかなり落とし、京次に喋りかけた。

「このところあいつ女っぽくなってないか?」

 智はさっと後ろを向き、更に小声で京次に問いかけた。

 右に倣えして京次も同一方向に向き、

「そりゃそだろ、雅人と付き合ってるからじゃねぇ?」

 京次が意見を述べた。

「確立はありだな。あいつ今まで膝より上までスカート上げてなかったし、髪をツインテールからポニーテールに大幅に変えてるぞ」

「何こそこそしてんだ!!」

 翔が二人の顔の間から顔面をサッと出し、両手を重く二人の肩に乗っからせた。

「え~、何か違うかなぁって」

 京次は上の空で逃げ口上を吐き、

「な、智」

「違うってなぁ~~、只単にこうにも変わるものかと」

 智も京次と同じように上の空で、京次以上にからかい口調に述べた。

「絶対あたしのことだろ!!!」

 翔は二人の顎をきつく持ち上げた。

「きょ、凶暴性は変わってねぇ!!」



 その頃雅人は病院の1階の病室で、ベッドに寝そべっていた。

 昨晩の記憶は鮮烈に覚えているものの、すぐに忘れようと躍起になっていた。

「(何で俺に来るんだよ・・・)」

 その時に、雅人はふと部室の片隅の女の事を思い出した。あの姿だけは忘れようもない。生気の無い肌に、黒々した、わざと見せ付けているような歯、血に染まったワンピース・・・。

 ただ、雅人は一つ見落としがあったのを思い出した。

 目を見ていない・・・

 雅人は思考を巡らせた。確か・・・、何かで・・・、何処かで・・・、

 !!

 思い出した。

 幽霊と遭遇した場合の対処だ。心霊スポットや自殺の名所でもし幽霊に遭遇した場合の事である。この時にしてはいけないこと。霊の目を見ること。もし視線がかすりでもすれば見た者は取り憑かれる。だが、雅人は部室で見た女とは視線を合わせていない。その女の姿形に余りにもの異様さに視線を捕られてしまっていて目を見るどころではなかった。ならこの対処は単なる迷信なのか・・・?だが、雅人はその迷信と行き着いた答えを捨てた。

「(間違いだ・・・、間違いだ・・・)」

 そうであって欲しかった。いくら迷信でも、あんなものと遭遇したりしたら縋りたくなる。

「外・・・、外・・・」

 雅人は重く感じる上体を起こし、ベッドから立ち上がった。

「(光が見たい・・・)」

 だが、

「君!!起きたのかね!?」

 雅人は病室のドアに目をやった。二人いた。そこに、驚いた顔をした年配の医者がいた。隣に居る若い医師も驚愕の表情が見て取れる。

「起きたのは、今かね?」

 医者は軽く咳払いをして落ち着き、雅人に質疑した。

「えぇ・・・、まぁ・・・」

 雅人はうなだれた。

「大丈夫大丈夫、すぐによくなるから」

 そう言われた雅人は、顔を上げた。すると、雅人の目に嫌なものが飛び込んできた。志麻川総合病院 精神科 南専太郎と印字された名札を男がぶら下げている。

「精神科医・・・?」

 雅人は顔をしかめた。

「あぁ、君の症状を聞いて来たのだが・・・」

「俺は異常じゃない」

 雅人は声を潜めた。だが、同時に必死に正常であると言う事を訴えゆる声色は忘れなかったが・・・、

「いやいや、ちょっとストレスの面を見るだけだよ。心配な・・・」

「ふざけるな!!!」

 ベッドから飛び起き、雅人はサッと窓を潜り抜けた。

「あ!待つんだ!!君!!」

 若い医者が後に続いて窓を潜り抜け、

「連れ戻してきます!」

 そう言うと、若い医者は外の木囲いの傍を颯爽と駆け抜けた。

 京次はウキウキ気分で夜の街道を歩いていた。皆奈も一緒だったからだ。皆奈も同じ心境らしく、全く笑顔を絶やさず、京次だけを見ていた。ゲームセンターへ行ったり、本屋へ行って雑誌を読んでおかしな箇所を互いに指摘したり、ファーストフード店へ行ったりと、カップルらしい過ごし方をしていた。

「京君、あれ・・・、ハンちゃん?」

 ファーストフード店を出た直後、皆奈は電柱にもたれている少年を見た。

「ん?・・・あ、ハンちゃん!!」

 二人は電柱の少年に駆け寄った。白いフードをすっぽり被っていて、黒いウィンドブレーカーに黒いジャージを履いていた。ただ雅人と判断出来たのは、いつも見慣れていた口元だった。フードの中に口元がちらちら覗かせている。

「今日休んだんじゃ?」

 京次はとりあえず自販機で買ったスポーツ飲料を渡そうとしたが、

「僕が説明しよう」

 左手より、買い物袋を下げた青年が現れた。

「やっぱりメガネがないとキツいな」

 青年はポケットからメガネケースを取り出し、かけた。

「どこか休みながら話せるところへ行こう。彼はかなり弱っている」

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