病気
最後の加盟国の魔王が、
私の国に攻めて来るのが、
ほぼ、
確実となった。
彼の国は、
海に面しているので、
製塩業が主要産業の
南方国には、
魅力を感じないのだろう。
それに、
南方国が、
お目当てなら、
朝鮮砦の商人達は、
彼をすでに、
引き入れているはずだ。
これで、
南からは、
彼に攻められ、
北からは、
ガタニー軍に襲われる
挟み撃ちになってしまった。
ただ、
時間は、
かかりそう。
彼は、
巨大化の種と、
装甲の材料を買ったらしいので、
いつもの、
大型魔物が主戦力
のパターンのようだ。
本当に、
元日本人って、
戦車が大好き
だよね。
ネトウヨ君の時は、
旧ネトウヨ城を出発して、
私の城に辿り着くまで、
四日も、
かかった。
でも、
ネトウヨ軍の遠征以降、
ネトウヨ君のおかげで、
道路が整備されたから、
もっと、
早いかも?
ガタニー軍のほうは、
さらに、
遅いだろう。
なにしろ、
北に広がる
広大な樹海を、
通って来るのだから。
原生林の中で、
道に迷ってくれないかな?
でも、
もう、
すでに、
ガタニー軍の人間が、
私の城に、
到着している。
ガタニーには、
他国でも、
方角を識別する
技術力が、
有るようだ。
前世の日本でも、
例えば、
隣の市に、
引っ越しただけでも、
北だと思っていた方角が、
実は、
西だった
なんて事は、
良く有る。
ガタニー地方は、
南側に山脈が在り、
ここは、
北側に在るので、
錯覚を起こしても、
おかしくないのだが。
さて。
その、
ガタニー軍で、
すでに、
私の城に到着している人間、
昨日、
エステに、
客として現れた謎の女だが、
今、
目の前にいる。
私が、
招待して、
来て頂いた。
ガタニーとの同盟の話だが、
私には、
さっぱり解らん。
策略だとは思うけど。
もし、
策略では無くて、
軍事同盟が結べれば、
最後の加盟国に対する牽制
にもなるし、
彼の野望を打ち砕く事が、
出来るかも知れない。
ハッキリしている事は、
理解不能の時点で、
私には、
勝ち目が無い
ということだ。
無駄な抵抗は止めて、
さっさと降参してしまおう。
それが、
最も損害が少なくなる。
負ける戦いは、
出来レース以外、
存在しないのだ。
その辺のところを、
ストレートに、
謎の女に話すと。
「さすがは、
我が主が見込んだ御方」
お世辞はいいから、
用件を早く言ってよ。
「主の病を治せるのは、
貴方様しか、
いらっしゃら無いと」
病気?
「『癌』と申せば、
貴方様なら、
ご理解頂けると」
癌?
癌なのか?
癌患者が、
日本から転移して来たのか?
日本人が、
癌になる確率は、
二分の一くらいなので、
七十二名も、
日本人が転移して来れば、
その中に、
癌患者が居ても、
当たり前なのだが。
「こちらの国には、
最先端の医療技術が、
御有りになるそうで。
醜女でも、
美女に変える
魔法のような御話と」
確かに、
魔法で、
美容整形をやっているんだけど。
あれは、
体の表面なので、
見れば、
異世界人の勇者達でも、
解るから。
癌となると、
見えない内部だから。
そうか!
だから、
現代日本の知識を持つ私に、
指揮、監督をやれと?
前世で、
癌患者だったのなら、
癌には、
詳しいはずだ。
長年の闘病生活に、
全身全霊を傾けていたのだから。
ネットでも、
調べただろうし、
病院や薬局に行けば、
看護師や薬剤師から、
飽きるほど、
レクチャーを受けただろう。
何故か?
看護師や薬剤師は、
病気の解説をするのが大好きだし、
また、
医者の説明よりも、
丁寧だ。
まあ、
ガタニーの魔王が、
癌だと見立てているのなら、
たぶん、
当たっているだろう。
でも、
それって、
魔王のコアを壊せば、
治るんじゃ?
共産主義魔王
異世界の魔王数、残り六十八。




