戦後の対策
真田昌幸が、地元の民達を連れてやって来た。
たしか、
三日くらい前に召喚したばかりだと思っていたが、
もう、
領地に溶け込んでいる。
飼い殺しにするために、
放置しておいたのだが。
困ったねえ。
やっぱり、
有能な奴っていうのは、
仕事を与えられなくても、
自分で見つけて、
こなしていくものらしい。
確実に言えることは、
私は、
真田の親父の上に立てる器ではない
ということだ。
たまたま、
異世界に転移して、
たまたま、
魔王になれて、
たまたま、
英雄を呼び出せただけ
なんだよね。
嫌だねえ。
真田の親父が連れて来た領民達は、
酒造メーカーだった。
私の城は、
以前は、こういう地形だった。
北側
山の裾野
崖 崖 川
住宅地 城 川
西
側 川 川 川
川
北側にある大きな山の裾野を、
西側にある大河が削った跡地、
そこに私の城は建てられた。
城のすぐ北には、
削られた裾野の残骸である崖が有って、
そこから涌き水が豊富に出るのだが、
その綺麗な水を使って、
酒作りが行われているらしい。
もちろん、
知っていたが、
酒には興味がない。
その酒造メーカーの陳情内容は、
酒を全て買上げて、城で管理して欲しい
というものだった。
四日後に敵が出陣するので、
略奪される危険性を考えると、
安くても、
お金に替えた方が。
まあー、無理もない話だった。
建前としては、
お酒を持って逃げるのは大変だが、
お金なら。
でも、本音は。
戦争になれば、いつ死ぬか解らない。
そういう極限状態で目覚めるのは、
自分の遺伝子を残そうとする本能。
エルフの風俗嬢達が、
簡単に、
酒代くらい回収してくれるだろう。
少子化対策として始めた売春宿だったが、
思わぬ方向で役立っている。
酒を買上げることを承諾すると、
真田の親父から、提案が有った。
真田の親父の話に依ると、
城の周りに出来上がった堀、
これほど見事な防御は、見たことが無いそうだ。
元々は、
水を安定供給するために、
貯水池を城の周りに造ろうとしたのだが。
そして、
水害対策のために、
堤防も造った。
水害対策としては、
堤防と堤防の間を広げる
つまり、
川幅を拡張して、
水が溢れないようにする。
日本でも、
江戸時代には、
こうなっていたらしい。
それを、
悪の明治政府が、
狭くしたのだそうだ。
本当に、
薩長は日本人の敵
だよね。
話はズレたが、
拡げて出来た河原に、
一応、
落とし穴を掘っておいた。
北側
城
堀 堤防 堀
川 堀 堀 堀
落とし穴 川
西
側 堤防 堤防 川
こんな感じになっている。
ネトウヨ君が、
落とし穴にひっかかるなんて、
さすがに無いとは、思うが。
この鉄壁の守りを作り上げたのは、
私が開発した
つるはしゴブリンだ。
つるはしゴブリンの素材自体は、
平凡な物しかないので、
安いが、
つるはしは、高い。
つるはしゴブリンは、
数千体いるのだが、
つるはしが、
全然足りなくて。
そのため、
八交代制
という、
八分の七が休憩時間の
世にも稀な労働システムが行われていたのだが、
そのおかげで、
作業効率は抜群に良く、
短期で出来上がってしまった。
でも、
つるはしがボロボロで。
そこで、
真田の親父の提案内容だが、
つるはしの生産量を上げるために、
ドワーフを籠絡に行かせてくれ
というものだった。
どう考えても、
戦争に間に合わないけど?
共産主義魔王
滅亡まで、あと四日。




