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六十三話〜長野の相談〜

新年明けましておめでとう御座います。

今年も宜しくお願い致します。

この度の令和6年能登半島地震で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

被害を受けられた皆様の安全と一日でも早く平穏な生活に戻られます事を心よりお祈り申し上げます。

 



 私は公園のベンチに座っている長野君を見つけて声を掛けた。


 「長野君、遅れてごめん! 」


 私は手を合わせて彼に謝った。


 「謝らなくて良いよ。俺が白山を呼んだんだから気にするな」


 そう言って微笑む長野君。


 「本当? そう言って貰えると助かるよ」


 「ああ、どう致しまして」


 彼はそう言うと私に野菜ジュースを手渡した。


 「約束の品だ」


 「有難う」


 私は自転車をベンチの近くに停めて長野君の隣に座る。


 「私に話したい事って何? 」


 私がそう聞くと、彼は照れながら話し始めた。


 「あ……あのさ……。ジュースを飲みながらで良いから聞いてくれ……」


 「うん……」


 私はプルタブを開けてジュースを飲む。


 やっぱり翔先輩が仰っていた様に私は告白されるのだろうか?


 胸がドキドキする……。


 長野君は照れ臭そうに私の顔を見ている。


 私は彼の発言を待つ。


 数十秒の沈黙の後、長野君が口を開いた。


 「頼む! 俺に変化球を教えてくれ! 」


 「えっ!?」


 彼の思いもよらない発言に驚いた私は、飲んでいたジュースを喉に詰まらせた。


 「白山! 大丈夫か? 」


 長野君が心配して私を見る。


 「有難う……。大丈夫だよ」


 私は直ぐに笑顔を見せる。


 ホッとした表情の長野君。


 「変化球を教えて欲しいだなんてどうしたの? 」


 私がそう言うと、長野君が理由を話し始めた。


 「今日の練習中に、緑川先輩から高速スライダーとチェンジアップだけじゃ試合に勝つのは厳しいかも知れないって言われてな……」


 落ち込んだ表情の長野君。


 私はその時、たまたま翔先輩の近くに居たから二人に気付かなかった。


 「そうなんだ……」


 「ああ。白山はピッチャーだから何か教えてくれないかと思ったんだ」


 私の得意な変化球はカーブだ。


 「成る程ね……」


 「勿論変化球は直ぐに投げられる物じゃないって事は分かっている……」


 真剣な表情の彼。


 「長野君……」


 私は長野君の顔をじっと見つめた。


 変化球の球種や投げ方はネットで調べれば直ぐに分かる。


 でも私に聞くと言う事は何か理由が有るのだろう。


 どうしても気になった私は聞いてみる事にした。


 「私なんかで良ければ教えてあげられるけど……」


 「本当か!?」


 目を輝かせる彼。


 「うん……。でもどうして私なの? 変化球の球種とかは自分で決めた方が良いかも知れないよ? 」


 私がそう言うと、長野君は急に私の両手を掴んだ。


 「きゃっ! 」


 咄嗟の事だったので驚いて声が出てしまった。


 「あ……。ごめん……」


 申し訳無さそうに謝る彼。


 「大丈夫だよ。少し驚いただけだから」


 私の返事を聞いて安心し、話を続ける。


 「良かった……。確かに白山の言う通りかも知れない。でも俺には君の力が必要なんだ! 」


 照れた顔を私に見られるのが恥ずかしいのか、少し顔を背けながらそう言った。


 誰かに必要とされるのはこれで二度目だ。


 ほのかちゃんと長野君。


 私は長野君の手を取る。


 「白山……? 」


 びっくりした表情をしている。


 「有難う。長野君にそう言って貰えてとっても嬉しいよ」


 「そうか……。それは良かった」


 ニコッと微笑む彼。


 恐らく私の力が必要であって、私の事が好きと言う訳では無いのだろう。


 それでも良い。長野君とはただの仲の良い異性の友達でも構わない。


 正直な所、まだ翔先輩の事を引きずっている。


 だから……。恋愛はまだ前に進めない。


 「分かったよ。じゃあ早速明日から教えるね」


 私は長野君にそう言った。


 「白山、有難う」


 「ふふっ、どう致しまして! 」


 その後、私達は途中まで一緒に帰った。

最後まで読んで下さって有難う御座いました

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