五十七話〜お爺さんの金言〜
7月6日(金)
部活の練習が終わったので、部室で急いで制服に着替え校門を出る。
どうして急いでいるのかと言うと、明日が光ちゃんの誕生日だからだ。
プレゼントを買う為のお金は財布に入っている。
「カケちゃん! 」
僕の事をそう呼ぶのは光ちゃんしか居ない。
後ろを振り向くと彼女が居た。
「光ちゃん……。練習お疲れ様」
「有難う。カケちゃんもお疲れ様! 一緒に帰ろっ! 」
参ったな。今からあの雑貨屋へ行こうと思っていたんだけど……。
「あ、あのさ……」
「どうしたの? 」
不思議そうな顔で僕を見る光ちゃん。
「明日、光ちゃんの誕生日だからプレゼントを買いに行こうと思ってたんだけど……」
僕がそう言った途端、彼女の顔がぱっと明るくなる。
「私も付いて行って良い? 」
「良いけど……。何を買うかは見ないでね」
折角の誕生日プレゼントが台無しになってしまう。
「了解だよ。見ちゃったら楽しみが無くなっちゃうからね」
「有難う。じゃあ行こうか」
僕と光ちゃんは雑貨屋へ向かった。
向かう途中で光ちゃんが黒咲先生の話をした。
内容は『大会が始まるまでに自己ベストを出さないと怖い話を聞かせるわよ……』と言う物だった。
怖い話が嫌いな光ちゃんには地獄だ。
テレビの番組欄に心霊と表記されていれば、ブルブルと震えて涙を流してしまう程である。
黒咲先生は怖い話が好きで、インターネットや動画等をよく観ているらしい。
雑貨屋へは10分程で着いた。
光ちゃんと一緒に中に入る。
前と同じくお爺さんが居た。
「おや、いらっしゃい」
僕と光ちゃんを見て笑顔でそう言った。
「お爺さん、お久し振りです」
「丁度一ヶ月振りじゃのう」
「はい。あの時は有難う御座いました」
僕はお辞儀をする。
「ほっほ、礼には及ばんよ」
「知り合いのお爺さん? 」
「うん。遥の誕生日プレゼントを買いに行った時に初めて話してね」
「成る程ね」
頷く光ちゃん。
「隣の可愛い娘は君の彼女かの? 」
「か……可愛いって……」
お爺さんからそう言われて赤面する彼女。
顔を掌で隠している。
光ちゃんはこの世で一番可愛い。
「はい」
僕は笑顔で答えた。
「大切な人を愛する事は良い事じゃ。この先つらく悲しい事が沢山有るじゃろう。じゃが、君達二人なら乗り越えられると儂は思っておるよ」
微笑むお爺さん。
お爺さんの有難いお言葉を忘れずに、光ちゃんと一緒に生きて行こうと心に決めた。
「有難う御座います! 」
僕と光ちゃんは同時にお礼を言った。
何故か恥ずかしくてお互いに笑ってしまう。
そんな僕達をお爺さんは嬉しそうに見ていた。
次回はプレゼント購入回です




