五十五話〜離れ離れになっても〜
紗雪視点です
新キャラが出て来ます
家の近くに有る無料開放されているグラウンドで、ソフトボールの練習を久し振りにした私は辺りが暗くなって来たので家に帰ろうかなと思った。
「ほのかちゃん、私の練習に付き合ってくれて有難う! 」
白薔薇中学でバッテリーを組んでいた、幼馴染の黒木ほのかちゃんにお礼を言う。
「どう致しまして。紗雪、キミは相変わらず良いボールを投げるじゃないか」
ほのかちゃんのこの口調は昔からだ。
お互いに家も近く、初めて会った時は男の子かと思った。
「そう言って貰えて嬉しいよ。またソフトボールを頑張ってみようかなって思ってるんだ」
練習を一緒にする前に、ソフトボールを辞めた事をほのかちゃんに伝えておいた。
「紗雪、キミはどうしてソフトボールを辞めたんだい? ボクは今でもソフトボールを続けていると思っていたよ……」
悲しそうな表情をするほのかちゃん。
「私の通ってる高校はソフトボール部が無くてね……」
「でも今日みたいに此処へ来れば練習はいつでも出来るじゃないか」
「受験勉強が大変で練習をしたくても出来なかったんだ……」
私がそう言うと、ほのかちゃんはばつが悪そうな顔をした。
「そ……そうか……。紗雪、済まなかったな……」
何故ほのかちゃんが謝ったのかと言うと、一緒の高校に行くと約束をして私が落ちてしまったからだ。
ほのかちゃんの通っている天ノ上高校は全国でも偏差値が高い高校として有名だ。
頑張って受験勉強をしたんだけど受からなかった。
あの時の彼女の悲しみに満ちた表情が忘れられない。
「ううん、ほのかちゃんは何も悪くないから謝らなくて良いよ」
私はほのかちゃんをフォローする。
「……」
彼女は下を向いて黙ってしまった。
「どうしたの……? 」
私が声を掛けると、急に抱きつかれた。
ギュッ……
「え? 」
突然の出来事に驚いてしまう。
「高校でもキミと一緒にバッテリーを組みたかった! 初めて紗雪を見た時、一緒にスポーツをやりたいと思ったんだ! 」
小二の頃に始めたソフトボール。
ほのかちゃんと一緒にチームに入ったな……。元から仲は良かったけど練習を通じて更に仲良くなれた。
今では大親友だ。
「そうだったんだ……」
「天ノ上の先輩方と監督は一年のボクをとても褒めてくれるけど、何か違うんだよ……」
彼女は泣いていた。
「私で良ければ話を聞くよ……? 」
私はそう言って優しくほのかちゃんを抱き寄せる。
「うぅ……天ノ上はスポーツの強い高校だけど……で、もっ! ……練習してて何か楽しくないんだよ……」
「そんな事言っちゃダメだよ……。高校で虐められてる訳じゃないんでしょ? 」
「うん……。紗雪以外の人とバッテリーを組むなんて有り得ないと思ってるんだ……」
そう言ってくれるのは嬉しい。
でもその考えはほのかちゃんの為にはならない。
リードが完璧で肩も強く、守備も良い。
そんなほのかちゃんの才能を潰してはいけない。
「私も頑張るからほのかちゃんも頑張って欲しいな……」
「紗雪……? 」
「毎日は来れないけど、此処に練習しに来るから……」
「だから……。お互いの都合の良い時に一緒に練習しよ? 」
私の言葉に安心したのか、涙を拭うほのかちゃん。
彼女の背中から手を離す。
「ああ……分かった……。キミからソフトボールに対する情熱が消えてなくて嬉しいよ。大学では一緒にバッテリーを組もう! 」
「うん! 有難う、ほのかちゃん。夢が有るなら決して諦めちゃ駄目だって言ってくれた先輩が居てね」
勿論、星野先輩の事だ。
「そうなのか。良い先輩を持てて良かったな」
にっこりと微笑むほのかちゃん。
「その先輩には本当に感謝してるんだ。そうそう、これをほのかちゃんにプレゼントするね」
私は付けていた白いリストバンドを外してほのかちゃんに手渡した。
「え? ボクにくれるのかい? 」
驚く彼女。
「うん、そのリストバンドを私だと思って高校生活を頑張って」
「紗雪……有難う。大事にするよ」
ほのかちゃんはまた泣きそうになっている。
「も〜、泣かないの! そろそろ帰ろ? 」
「ふふっ、了解だ。もう夜だからな」
私達は野球道具を持って一緒に帰った。




