その1〜遥の誕生日〜
6月6日(水)16時20分
「放課後になったし、遥の誕生日プレゼントを買いに行こうかな」
たまたま今日が部活の無い日で良かった。
僕は校門を出ると、雑貨屋が有る方向へ歩く。
途中、前方に見覚えの有る人物が居た。
自転車に乗っているシルバーでボブヘアーの少女。
白山さんだ。僕は彼女に話し掛けた。
「白山さん、学校お疲れ様」
「あっ、星野先輩。お疲れ様です! 」
彼女は笑顔でそう言った。
「先輩がこっちの方向へ歩くなんて珍しいですね。何か用事が有るんですか? 」
「今日は僕の妹の誕生日でね。プレゼントを買いに行くんだ」
「そうなんですね。妹さんは何処の高校なのですか? 」
「僕達と同じ高校だよ。二年生で遥って言うんだ。部活は吹奏楽部に入ってるよ」
「成る程……。私の先輩になるんですね」
嬉しそうな表情をする白山さん。
「うん。今度白山さんに紹介するよ」
「了解です! 楽しみにしてますね。ではまた明日! 」
白山さんはそう言うと僕に手を振り、自転車のスピードを上げて帰って行った。
「白山さん、またね! 」
僕も手を振り返した。
その後暫く歩いて行くと、雑貨屋が目に入った。
「この店を覗いてみよう」
扉を開けて入る。
「おや、いらっしゃい」
70歳くらいのお爺さんが居た。
他に店員が居ないのでこの人が店主だろう。
眼鏡を掛けた優しそうなお爺さんだ。
僕は会釈をして店内を見て回る。
マグカップやヘアピン等が有った。
「普段身に着けられる物をプレゼントしたいな……」
僕がそう言うとお爺さんが歩いて来た。
「君は彼女にプレゼントするのかの? 」
「いえ、妹の誕生日なんです」
僕がそう言うと、お爺さんは指輪等が売られているコーナーへ案内してくれた。
「誕生日は特別な日じゃからな。色々有るからゆっくり選ぶとええ」
「有難う御座います」
僕がお礼を言うとレジへ戻って行った。
「これにしようっと」
散々悩んだ挙句、選んだプレゼントはネックレスにした。
大きな緑色のト音記号が添えられている。
宝石の様に綺麗だった。
「これ下さい」
レジへ持って行く。
「税込で2200円じゃ」
僕は財布からお金を取り出してレジへ置いた。
「丁度2200円じゃな」
「はい」
僕はネックレスを受け取る。
「家族はええのう」
お爺さんがそう呟いた。
「ですね。お爺さんも奥さんが居るのですか? 」
「いや……儂は5年前に妻を亡くしてのう……。妻との間に出来た子供は娘が一人だけじゃったが、とても幸せじゃったよ」
「そうだったんですか……。嫌な事を思い出させてしまってすみません」
「何、気にせんでええ。君には彼女はおるかの? 」
「はい。一度別れてしまいましたけどまた復縁出来ました」
「おお、それは良かったのう。彼女と家族と友達を大切にしてあげるんじゃぞ」
「はい! 有難う御座います」
僕はお爺さんに頭を下げて店を出て、足早に帰宅した。
17時10分
僕がリビングで遥が帰って来るのを待っていると、玄関のドアが開く音が聞こえた。
「ただいま〜」
遥の声だ。
僕は急いで玄関に向かう。
「お帰り。遥、誕生日おめでとう」
僕はネックレスの入った袋を渡す。
「お兄ちゃん有難う。開けてみても良い? 」
「うん」
袋を開ける遥。
「うわぁ……。凄く綺麗なネックレス」
とても喜んでくれた。
「遥は音楽が好きだからそれにしたんだよ」
「だから音符なんだね」
「そうだよ」
「えへへ、大切にするね! 」
遥はそう言うと自分の部屋に入って行った。
その後は父さんがケーキとプレゼントを買って帰って来て、一緒に遥の誕生日を祝った。
因みに父さんのプレゼントはカピバラのぬいぐるみだった。




