五十話〜理由〜
5月31日(木)放課後
「さて、行くか」
僕は覚悟を決めて屋上へ続く階段を登る。
途中で天海さんに出会った。
「星野君、頑張ってね」
彼女はウインクをしながらそう言った。
恐らく光ちゃんから話を聞いているのだろう。
「天海さん、有難う」
僕は天海さんにお礼を言い、足早に屋上の扉へ向かう。
ガチャ……
扉を開けて屋上に入る。
そこには約束通り、光ちゃんが立っていた。
「光ちゃん……」
「カケちゃん……。良かった……来てくれたんだね」
光ちゃんは嬉し悲しい表情をしながらそう言った。
「うん、あの理由を教えてくれるって思ってね」
「気付いてた? 」
そっと微笑む彼女。
「何となくだけどね」
「そっか……」
光ちゃんはそう言うと、覚悟を決めた表情をしながら話し始めた。
「あのね……。本当はカケちゃんと別れたくなかったんだ……」
「そうだったんだ……。他に好きな人が出来たの? 」
「違うよ……。今でもずっとカケちゃんの事が大好き……」
「え? 」
僕は思わず耳を疑った。
じゃあ何故僕と別れたのか。
高一の時からずっと付き合って来て、何か光ちゃんに対して良くない事をしてしまったのだろうか。
「僕が光ちゃんに愛想を尽かされる様な事を知らず知らずの内にしてたの? 」
「そんな事無いよ……! 」
光ちゃんは首を横に振ってそう言うと涙を流した。
「光ちゃん……」
僕は思わず光ちゃんを抱き寄せた。
「カケちゃんと付き合ってた頃はとても幸せだったんだよ……」
「僕もだよ……」
「うぅ……。幸せ過ぎてとても怖くて……その幸せがある日突然無くなっちゃうんじゃないかって思って……不安になって別れようって言ったけど……実際にそうしたらもっともっと辛くて……! 」
「光ちゃん……」
僕は光ちゃんの頭を優しく撫でる。
「ふぇ……? 」
驚いた声を上げる光ちゃん。
「ごめんね……。光ちゃんの気持ちを理解して無かった。僕だけが勝手に幸せだって思って舞い上がって……」
僕は最低な男だ。
自分の幸せだけを優先していた。
光ちゃんに一言言ってあげるべきだったんだ。
「カケちゃんは悪くないよ……。私が悪いの……カケちゃんを裏切る様な事をして……! 」
光ちゃんはそう言うと、左手にカッターナイフを持った。
瞳のハイライトが完全に消えている。
「光ちゃん……! 」
「私は悪い人間なんだから消えなきゃ……! 」
カチカチとカッターナイフの刃が上がって来る音がする……。
僕が光ちゃんを助けないと……。
僕は冷静になって、光ちゃんの手からカッターナイフを取り上げた。
「カケちゃん……。どうして止めるの? 」
光ちゃんを更に強く抱き締める。
そして言ってあげるべきだった一言を彼女に言う。
「僕は光ちゃんの前から居なくなったりしないよ。これからもずっと一緒に居よう」
「ほんと……? 」
震える彼女の声。
「うん」
僕はそう言って光ちゃんの目を見る。
元通りの綺麗な青い目だった。
「カケちゃん……有難う……。こんな私だけど改めて宜しくね」
光ちゃんはそう言うと僕の唇にキスをした。
21時
夜ご飯を食べ終わった後、僕は遥と父さんに今日の事を話した。
「光ちゃんと復縁出来たよ」
「本当? やったねお兄ちゃん! 」
「そうか! 翔、良かったな。」
笑顔で祝福してくれる二人。
「二人とも有難う。もう光ちゃんを一人にさせないよ」
僕はそう言うと自室に入る。
「先輩に伝えておくか」
Seinを起動して先輩にメッセージを送った。
翔: 先輩のアドバイスのお陰で光ちゃんと復縁出来ました。有難う御座います
送って5分後に返信が有った。
麗奈: ……良かった……。……蒼井さんを大切にしてあげて……
翔: はい! 勿論です。お休みなさい
僕はそう返信するとソシャゲで時間を潰した。
一章終了です
卒業するまでのストーリーを書いて行きます
長くなりますが頑張ります




