四十五話〜光の黒い感情〜
光視点です
5月7日(月)18時20分
「今日も部活疲れたな〜」
教室で、制服に着替え終わった私はそう独り言を言う。
陸上部の練習はキツいけど、良いタイムが出ればとても嬉しい。
一秒でも縮まればやる気に繋がるから。
顧問の黒咲先生も褒めてくれるから、更に頑張ろうって思える。
「明が心配してるかも知れないから早く帰ろうっと」
明は私の妹の名前だ。
甘えん坊で我儘だけど、誰にでも優しくてとても明るい。
まだ中学一年生だけど良く出来た子だ。
私は鞄を持って廊下に出る。
「あっ! 光! 」
後ろから声が聞こえたので、私は振り向いた。
そこには夏音が居た。
「夏音、部活お疲れ様」
「有難う。光、一緒に帰ろう? 」
断る理由は無い。
「うん、良いよ」
私と夏音は楽しく話をしながら、下駄箱まで歩いて行った。
その時だ。
「蒼井先輩っ! 」
急に呼び止められ、私は足を止めた。
後ろから走る音が聞こえる。
私が振り返ると、一人の男子生徒が居た。
初めて見る顔だった。
赤色の学年章を付けているので一年生の男子だ。
「光、この子と知り合い? 」
夏音が不思議そうな顔をしながら聞いて来る。
「いや、全然知らない男の子」
私がそう言うと彼が口を開いた。
「急に呼び止めてしまってすみません! 少しお時間を頂けませんでしょうか? 」
「すぐ終わる内容? 」
早く夏音と一緒に帰りたいのに……。
少しイラッとした。
「あ……はい……」
顔を赤らめながら話し始めた。
「蒼井先輩! 部活紹介の時に初めて貴女を見た時に一目惚れしてしまいました! こんな僕で良ければどうかお付き合いして下さい! 」
男子の突然の私への告白に夏音は呆然としている。
「へぇ……。理由はそれだけなの? 」
私は冷たい口調でそう言った。
「は……はい……。駄目ですか? 」
怯えた口調の彼。
私の中に有る黒い感情が段々と湧き出て来る……。
「あのね……君に良い事を教えてあげるよ……。一目惚れで始まった交際って中々長続きしないんだよ……? 」
私は自分でも分かる程、不気味な笑みを浮かべていた。
「で……ですが……。必ずしもそうとは限らないじゃないですか……」
今にも泣き出しそうな表情だ。
「最初のうちは良いよ……。お互いに本当に大好きだって気付けるからね……」
私がそう言うと、夏音が恐る恐る口を開いた。
「ご……ごめん光……。私先に帰るね……」
「分かった……。夏音……バイバイ……」
私は正気の無い目をしながら夏音に手を振った。
夏音は小さな悲鳴を上げながら走って行った。
「付き合う月日が長くなると信じられなくなるんですか……? 」
男の子の震える声。
「……うん」
私がそう返事をすると、彼は諦めの表情をした。
とても悲しそうな顔だった。
「蒼井先輩……。大事なお時間を割いて頂き有難う御座いました……」
深くお辞儀をする男の子。
とても礼儀正しい子だから直ぐに彼女が出来るだろうなと思った。
「どう致しまして。恋愛する事を恐れないでね? 」
「は……はい! 頑張ります! 」
彼がそう言って去って行った後、私も帰宅した。
男子生徒はモブキャラです




