四十四話〜違う道も有る〜
5月7日(月)放課後
部活に行こうとして教室から廊下に出ると、そこには長野が居た。
「先輩、一緒に部活に行きましょう」
「別に良いけど……。どうしたの? 僕の教室まで来るって言う事は何か悩みが有るの? 」
長野が此処に来るのは今日が初めてだ。
「流石先輩ですね。俺の考えてる事が分かっちゃいますか……」
驚いた表情をする長野。
「うん。何となくだけどそんな感じがしたんだ」
「凄いですね……」
僕と長野は部室に着くまで無言だった。
やがてユニフォームに着替えると長野が口を開いた。
「先輩……。やっぱり皆さんは何故俺がこの高校に来たのか気になりますかね? 」
「うん。長野の実力ならもっと良い高校へ行けた筈なのにって思うよ」
「ですよね……。その理由を皆さんに説明したいのですが……」
「了解だよ。練習が始まる前に監督に言っておくね」
「有難う御座います」
「どう致しまして」
僕と長野はグラウンドでみんなが来るのを待った。
それから10分程で全員集まった。
「監督、少し宜しいでしょうか? 」
僕は監督を呼んで、みんなから少し離れた場所で会話をした。
「星野、どうした? 」
「長野がみんなに話しておきたい事が有るみたいなんです」
「そうか、分かった」
僕と監督は元の場所に戻った。
「練習前だが長野から話が有るらしい」
監督がそう言うと長野が重い口を開いた。
「皆さんは何故俺が此処の高校を選んだか、不思議に思われたと思います」
「俺が居た朝乃宮中学校は、野球の強豪校だと言う事は全国的に有名です」
「確かに強い高校に行けばプロになれる確率も上がります」
みんな黙って長野の話を聞いている。
「ですが中には過酷な練習をさせる高校も有り、最悪怪我で選手生命が絶たれる事も有ります」
「俺はそれを恐れていたのですが、母が『別に無理をして野球の強い所に行く必要は無い。実力が有るんだから他の高校でも大丈夫』と言ってくれたので此処の高校に決めたんです」
「成る程な……」
監督が腕を組みながらそう言った。
「三年間一生懸命頑張りますので、皆さん改めて宜しくお願いします! 」
理由を話し終わった長野が深々と頭を下げる。
パチパチパチパチ……
拍手が沸き起こった。
長野は照れ臭そうな表情をしている。
「よし、話も終わった事だしお前達練習だ! 」
監督の一言で練習が始まった……。




