四十二話〜長野の過去〜
「さて、部活も終わったし帰ろうかな」
制服に着替え終わった僕は更衣室を出て歩く。
「先輩! 練習お疲れ様です! 」
声が聞こえた方向を向くと、長野がこっちへ歩いて来ていた。
「長野、お疲れ様」
僕に何か用事が有るのだろうか。
「先輩、少しお話したい事が有るのですが聞いて頂けませんか? 」
真剣な表情の長野。
「良いけど、どうしたの? 大事な話? 」
「はい。先輩に知って頂きたい事なので」
長野は少し悲しそうな表情を浮かべた。
「そっか……。じゃあ学校の直ぐ近くに有る公園に先に行っててくれないかな? 」
「了解です」
長野はそう言うと歩いて行った。
「さてと、ジュースでも買うか」
僕は財布から260円を取り出した。
「コーラでも飲もう」
ピッ……ガシャン!
自販機からコーラが出て来る。
「長野の分も買うか」
僕はお釣りの130円を自販機に入れた。
260円取り出したのはそれが理由だ。
「長野が好きな飲み物って何だろう……? 」
聞いておけば良かった……。
「僕と同じコーラで良いか」
再度ボタンを押してコーラを取り出す。
二人分のコーラを持って、僕は長野の待つ公園へ向かった。
「先輩! こっちです! 」
ベンチに座っている長野が僕を呼ぶ。
「長野、これ受け取ってよ」
コーラを長野に手渡す。
「俺なんかの為に有難う御座います」
頭を下げる長野。
「そう畏まらなくて良いよ。それで話したい事って何? 」
「俺の過去の話なのですが……」
長野はそう言うと自らの過去を話し始めた。
「俺、10歳の頃に両親が離婚しまして……。原因が親父の俺に対する過度な期待だったんです……」
「過度な期待? 」
「ええ……。親父は俺を絶対に野球選手にするって言ってたんです。毎日野球漬けで友達と遊んだりした事が無かったんですよ」
「そうだったんだ……。自由が無かったんだね」
「はい……。親父のお陰で実力はどんどん伸びたのですが、試合で投げて負ければ暴力を振るわれました……」
「それは酷いね……。まるで道具みたいな扱いだ」
「そんな俺の姿を見るに見かねた母さんが、親父に離婚を宣言したんです」
「長野のお母さんは優しい人なんだね」
「はい。母さんはいつも俺を庇ってくれました。感謝してもしきれません」
長野は笑顔を浮かべた。
長野になら僕の過去を話しても良いかな……。
「実は僕も親が居なくてね。僕の場合は母親だけど」
「え? そうだったんですか? 」
驚いた表情の長野。
「うん。父さんに内緒で浮気しててね……。ある日突然何も言わずに僕と妹と父さんを置いて浮気相手の所へ行ったんだ」
今思い出しても憎い。
「成る程です……。バレないとでも思ったんでしょうかね? 」
「多分ね……。ずっと帰って来ないから直ぐバレたけど」
「汚いやり方ですね……」
「本当にね……。もし出会ったら一発殴ってやろうと思ってるよ」
「ハハッ……。俺も先輩と同じ気持ちです。話を聞いて頂いてどうも有難う御座いました」
「どう致しまして」
長野の話が終わると、僕達はコーラを飲んで別れた。




