四十一話〜長野の実力〜
4月30日 (月)夕方 16時15分
「長野、お前の実力がどれ程の物なのかを知りたい。少し投げてみてくれ」
スピードガンを持った監督が長野に話し掛けた。
「了解です」
長野はそう言うと、グローブとボールを持ってマウンドに向かった。
僕はワクワクしていた。
強豪校である朝乃宮中から来た長野が投げる姿を見れるからだ。
「行きますよ」
長野がキャッチャーの緑川に投げる事を伝えた。
「ああ、来い」
キャッチャーミットを構える緑川。
ワインドアップの投球姿勢から、スリークォーターでボールを投げた。
シュッ……ズバァァァン!
「し……信じられん……。140キロだと……!? 」
監督のスピードガンを持つ手が震えていた。
「す……凄い……」
そう言って僕の隣で驚く白山さん。
「だね、高一で140キロは速い。しかもサウスポーだし……」
僕達だけでなく、長野以外の全員が驚きを隠せないでいた。
「まぁ……俺の実力はこんな物ですね」
嫌味の無い爽やかな笑顔で長野はそう言った。
暫くの間静寂がグラウンドを包んだ。
「な……長野……。す……すげーなお前! 」
緑川がそう言って長野に駆け寄る。
他のチームメイト達も一斉に駆け出していた。
「流石だな! 」
「とんでもねー奴だな! 」
「お前、ひょっとしたら一年でエースになれるかもな! 」
みんな長野を褒め称える言葉を掛けている。
「いえ……。俺は大した事無いですよ」
謙遜する長野。
僕は長野を謙虚で良い奴だと感じた。
此処の野球部はお世辞にも強いとは言えない。
その為、長野がまるで救世主に見えて来る。
「これは楽しみな逸材が入って来たな」
監督が頬を緩めながらそう言った。




