三十九話〜嫉妬の愛情〜
「光ちゃん……? どうしたの? 」
僕は後ろを振り向かずに口を開く。
怖くて後ろを向けないのだ。
「カケちゃんと一緒に帰りたいな〜って思ってね……? ず〜っと待ってたんだよ……? その娘は誰なのかなぁ? 」
「あ……新しく入部したマネージャーの白山さん……」
声が震える。
「は……初めまして……白山紗雪と申します……。宜しくお願い致します……」
元気一杯の白山さんも、光ちゃんの発するオーラに気圧されている。
「へぇ……結構可愛い娘だね……。ねぇカケちゃん……浮気するなんて私とっても悲しいな〜……? 」
「う……浮気って……白山さんと話すのは駄目なの? 」
背中を嫌な汗が伝う。
「うん……。だって私からカケちゃんを奪っちゃいそうなんだもん……」
ニヤリと笑う光ちゃん。
「うぅぅ……。グスッ……」
白山さんが涙を流していた。
「星野先輩……すみません……。私一人で……帰りますね……」
彼女はそう言うと、自転車置き場の方へ走って行った。
「白山さん……」
呆然と立ち尽くしていると、光ちゃんに背後から抱き付かれた。
「うふふ……。泣いちゃったって事はやっぱり図星だったんだね……」
「ひ……光ちゃん……」
僕は光ちゃんの顔を見た。
教室で遥に嫉妬した時と同じく、虚ろな目をしている……。
「えへへ……嬉しい……。やっと私の顔を見てくれたね……」
「あ……あぁ……」
声が出ない。
「ねぇカケちゃん……。私……遥ちゃんは実の妹だから話したりするのは仕方無いって思ってるけど、他の女の子とお話ししてるのを見ると心がズキズキって痛くなるなぁ……? 」
「で……でも白山さんを無視するなんて出来ないよ……」
僕は辛うじて光ちゃんにそう伝える。
「ふふ……。マネージャーさんだもんね……。寒川先輩もそうだった……」
光ちゃんは僕の頬を人差し指で優しく撫でながらそう言った。
「う……うん……」
「うふふ……」
「光ちゃん……? 」
「良い……? 」
妖艶な表情でそう聞いて来る。
「何が……? って……んっ……」
光ちゃんがキスをした。
「んぅ……カケちゃん……。私、カケちゃんが望む事なら何でもしてあげるよ……? 」
「光ちゃん……」
「今此処でエッチな事しろって言われたら喜んでしてあげる……」
甘い声で囁く光ちゃん。
「ちょ……ちょっと……」
「私達、付き合って長かったのに抱き付いたりキス止まりでそう言う事して無かったよね……? 」
駄目だ。聞こえてない。
「光ちゃん……! 何が有っても絶対に嫌いにならないから落ち着いて……」
僕は光ちゃんを強く抱き締めた。
「本当……? 」
「うん、約束するよ」
僕は笑顔でそう言った。
「有難う……」
元に戻ってくれて良かった。
その後、暫くして光ちゃんと一緒に帰った。




