三十六話〜光のお願い〜
4月23日(月)放課後
僕は帰りのHRが終わると足早に野球部の更衣室へ向かった。
今日から新入生が入部して来るからだ。
足取りがいつもより軽い。
「どんな新入生が入って来るんだろう」
更衣室のドアを開ける。
中にはまだ誰も居なかった。
「僕が一番乗りか」
素早くユニフォームに着替えてグラウンドに向かう。
途中で光ちゃんに出会った。
光ちゃんも陸上部のユニフォームを着ている。
「カケちゃん、今から部活? 」
「うん。新入生の人達が入って来るから楽しみでね」
「今日からだよね。陸上部にも入ってくれる人居ないかなー? 」
「光ちゃんの部活紹介が上手だったからきっと入部する人は居るよ」
「えへへ……。そうかなぁ? 」
照れ臭そうな表情の光ちゃん。
その表情が余りにも可愛過ぎて思わず失神しそうになる。
だが此処で失神してしまっては光ちゃんに迷惑を掛けてしまうので何とか踏み留まった。
「う……うん! きっと入部者が現れるよ」
「そう行って貰えると嬉しいよ。有難う……ってどうしたの? カケちゃん、顔が真っ赤だよ? 」
恥ずかしくて下を向いていた僕の顔を光ちゃんが覗き込んだ。
「それは……光ちゃんが可愛過ぎるから……」
「ふふ……えいっ! 」
光ちゃんが抱き着いて来る。
「ちょっ……光ちゃん? 」
「カケちゃん……お願い……。ぎゅ〜ってして……? 」
甘えて来る光ちゃん。
「光ちゃん……」
周りを見てみると誰も居なかった。
僕は光ちゃんを優しく抱き締める。
何故か別れた時と同じ様な感覚がした。
「えへへ……。嬉しい……」
光ちゃんは満足すると僕から離れた。
「カケちゃん、有難う」
とても嬉しそうな表情の光ちゃん。
「喜んで貰えて嬉しいよ」
短い時間だったけど幸せなひとときだった。
「カケちゃん、そろそろグラウンドに行こっ」
「そうだね。行こうか」
光ちゃんと一緒にグラウンドへ向かった。




