二十八話〜人生最期のティータイム?〜
先輩が家の鍵を開ける。
「翔……上がって良いよ……」
「お邪魔します」
僕は靴を脱いで先輩の家へ入る。
「にゃー」
トラ猫がお出迎えをしてくれた。
「先輩がSeinのTop画像に設定してた猫ですね」
「……うん……。名前は虎丸……」
「良い名前ですね」
虎丸は僕の周りを歩き回っている。
「……有難う……。翔は来るの初めてだから警戒してる……」
「虎丸にとっては自分の縄張りですからね」
「……その通り……」
僕の匂いをくんくんと嗅ぐ。
「遥が初めて遊びに来た時は、どんな反応だったんですか? 」
「……匂いを嗅がず直ぐ遥に甘えた……」
「そうなんですね。遥は優しいから悪い人じゃないって分かったんですかね? 」
「……そうかも知れない……」
遥は動物も大好きだ。
小学生と中学生の頃、給食で余った食パンを帰り道で雀にあげていた程だ。
よく『お腹がペコペコで可哀想だから』って言ってたっけな……。
「にゃーん」
虎丸が僕のズボンに頬擦りをした。
「……おめでとう……。気に入られたみたい……」
「それは良かったです」
ゴロゴロと喉を鳴らしている。
「虎丸、宜しくね」
虎丸の首元を優しく撫でる。
「……そろそろ例の件の話を聞きたいから……こっちへ来て……」
先輩がリビングのドアを開ける。
恐怖のお仕置きタイムが始まるのだろう。
僕は怯えながら先輩の後に付いて行く。
「……ソファに座って……」
「はい……」
恐る恐る座る。
「……少し待ってて……」
先輩はそう言うとキッチンに向かった。
ケーキを冷蔵庫に入れるのだろう。
「……でもその前に……チョコレートケーキとザッハトルテ……どっちが良い? 」
「僕が選んでも良いんですか? 」
「……うん……。……流石に二つとも私が食べようとは思って無いから……」
流石は先輩だ。
こんな僕の事を気に掛けてくれる。
「じゃあ僕はチョコレートケーキでお願いします」
450円のザッハトルテは、先輩に食べて欲しい。
僕には400円のチョコレートケーキで良いのだ。
「……分かった……。コーヒーはアイスが良い……? 」
「はい」
暫く待つと先輩がティーセットと皿に乗ったケーキを持って来てくれた。
「……はい……どうぞ……。砂糖と牛乳も有るから……」
「有難う御座います。頂きます」
「……召し上がれ……」
僕はチョコレートケーキをスプーンで掬って食べた。
甘過ぎない絶妙なバランスの取れた味だった。
「このチョコレートケーキはとても美味しいですね」
「……うん……。此処のお店のケーキはただ甘いだけじゃないから……食材の味を上手く生かしているの……」
先輩もザッハトルテを食べている。
「こんな美味しいケーキ食べたの初めてです」
「……そう……。喜んでくれて嬉しい……」
僕は先輩の微笑みを見ながらコーヒーを飲む。
「凄く豆の香りが鼻から抜けますね。苦過ぎないですし」
「……最高級のコーヒー豆だから……」
「成る程です」
「ご馳走様でした」
僕と先輩が食事を済ませたのはほぼ同時だった。
「先輩、ティーセットとお皿洗いますよ」
僕は先輩の分も持ってキッチンへ向かう。
「……うん……有難う……」
「お安い御用です」
僕は洗い終えると再びソファに座る。
「……ふふ……。さて……尋問開始……」
先輩がニッコリと笑ってそう呟いた……。




